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家族信託

【家族信託】委託者と受益者ってどんな人

2021.05.18

「家族信託」とは、家族や親族を受託者と定めて契約する信託契約のことをいいます。
信託契約では、「委託者」「受託者」「受益者」の3人がメインキャストとして登場します。
「委託者」、「受託者」、「受益者」といった法律用語を並べても、それぞれの役割がどのようなものか想像できないと思います。

そこで、今回は、「委託者」「受益者」について説明させて頂きます。
というのは、「家族信託」契約を始めるには、委託者は必要不可欠なキャストですが、「家族信託」契約締結後にはあまり重要な役割はなく、説明することはほとんどありません。

一方、「委託者」は、家族信託契約で「受益者」を兼ねることが多いので、「委託者」と「受益者」のイメージを同時に掴んでいただければと思ったからです。

なお、「受託者」については、「【家族信託】受託者ってどんな人」で紹介しているのでそちらをご参考にいただけますと幸いです。

1.「委託者」ってどんな人?

「委託者」とは、「契約・遺言・自己信託という方法で信託をする者」と定義されています(信託法2条4号)。
つまり、「委託者」とは、信託を設定する者として信託目的・受益者・信託期間等を定め、自己の保有財産を受託者に移転し、信託目的に従い受益者のために受託者にその財産(これを「信託財産」といいます。)の管理・処分などをさせる者をいいます。

「委託者」は、信託契約を締結する際に、信託財産の管理・処分方法について、様々な定めを置くことができます。
しかしながら、「委託者」が重要な役目を果たすのはここまでで、家族信託契約締結後には「委託者」が登場する場面はほとんどありません。

信託法の条文上、「委託者」が登場する箇所は少なくありませんが、信託法は「信託行為に特段の定め」を置き、「委託者」の部分を「受益者」に置き換えることができます。そのため、「家族信託」の契約書の条文上、「委託者」が出てくることはほとんどありません。

2.「受益者」ってどんな人?

「受益者」とは、信託財産から経済的利益を受け取る権利(これを「受益権」といいます。)を有する者をいいます。
信託契約や遺言の中で「受益者」と指定された者は、原則として当然に受益権を取得します。「受益者」は、受益者となるための受諾をすることなく、受益権を取得することができるのです。

なお、信託行為により、受益者による受益権の取得の意思表示を条件にしたり、条件の成就や時期を決めて受益させるなどの特段の定めをしたりする場合は除きます。

そのため、「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾すること」が必要な「贈与」(民法549条)とは異なり、家族信託契約では、財産をもらう側が幼児や知的障がい者、認知症高齢者であっても、一方的に「受益者」に指定することで、財産を渡すことができます。

一方、財産を管理する受託者は、受益者として指定された受益者が受益権を取得したことを知らないときは、原則、その者に対して遅滞なく受益者となったことを通知しなければなりません(信託法88条2項)。もっとも、信託契約書や遺言で、通知する義務を免除することができるので、受益者に内緒で受益者のために財産を管理することも理論上可能です。

但し、委託者兼受益者以外の場合は、受益者となったタイミング・原因により「みなし相続」、「みなし贈与」として相続税や贈与税の課税対象となるため、受益者に税務申告義務・納税義務が発生することには注意が必要です。

また、受益者は特定の人であれば、委託者自身や委託者以外の個人、法人でもなることができます。
そして、「受益者」は、胎児や将来生まれるであろう現在存在していない子孫でも、複数でも構いません。

複数の受益者に受益権を与える方法は、同時にだけでなく、異時的・連続的に取得させること(これを「受益者連続型」といいます。)も可能です。
民法でも胎児は相続人になれますが(民法886条。ただし、胎児は出生しなければ、相続能力はありません。)、将来生まれる現在未存在の子孫に異時的・連続的に受益権を取得させることができるという点で、民法と「家族信託」は大きく異なります。

3.まとめ

さて、以上の説明で「委託者」や「受益者」がどのようなことができるのか、また民法とはどのように違うのかのイメージは掴めたでしょうか。
「家族信託」には、他に信託監督人、受益者代理人という人物が登場することがあります。

次回以降に、この二人についてご説明できればと考えています。
では、ご一読いただき、ありがとうございます。

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