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信託について

【家族信託】信託監督人ってどんな人?

2021.05.25

「家族の、家族による、家族のための円満円滑な財産管理・資産承継」を行う方法として、「家族信託」を行うことが考えられます。

家族信託とは、信託法を利用した財産管理・資産承継を行うもので、財産を託す相手を家族や親族にしたものをいいます。

信託契約では、基本的には「委託者(現在財産を持っていて財産の管理や処理を任せる主体のことです。)」、「受託者(委託者が信じて財産を託す相手であり、実際に財産の管理処分を行う者のことです。)」、「受益者(受託者に管理を託した財産から経済的利益を受ける者のことです)」が登場しますが、必要に応じて「信託監督人」と「受益者代理人」という登場人物を追加することができます。

今回は、まず「信託監督人」について説明したいと思います。

1.「信託監督人」ってどんな人?

「信託監督人」とは、受益者に代わり、受託者が信託の目的に従って適正に業務を遂行しているかを監視・監督する者をいいます。

「家族信託」は、高齢の親の財産管理・生活支援のために利用されることが多いのですが、それ以外にも未成年者や知的障がい者などを受益者として本人を支える仕組みとして利用することも少なくありません。
高齢の親が認知症になる場合だけでなく、「家族信託」の開始時点で、受益者自身が受託者の財産管理業務をしっかりとチェックできないことも想定されます。

また、家庭裁判所から定期的にチェックを受ける成年後見人でさえ、横領等の不祥事が絶えないのが現実です。
もちろん、家族内で受託者の業務をチェックの方法をしっかりと話し合い、定期的な家族会議を開き、受託者になっていない家族にも受託者が自身の財産管理状況を報告することができるのが理想であり、信託監督人を置く必要はないでしょう。

しかし、家族構成やその関係性から家族による情報共有や定期的なチェックができないようであるならば、「信託監督人」の設置を検討してもよいでしょう。

2.誰を信託監督人にするのか

未成年者及び当該信託の受託者以外は、「信託監督人」になることができます(信託法137条、同124条)。
そのため、家族の中から信託監督人を選ぶことも可能です。たとえば、長男を受託者、長女を信託監督人とすることができます。

しかし、兄弟姉妹間で相続紛争が生じることが多いことを考えると、兄弟姉妹間で感情に左右されず客観的かつ冷静に、受託者の業務をチェックできるかは問題です。

また、信託監督人を置いたがために、兄弟姉妹間で確執が生まれることも考えられます。
信託監督人には、受託者を解任する権限を持たせることが可能であり、兄弟姉妹間の争いで、信託監督人が受託者を解任してしまえば、「家族の、家族による、家族のための円満円滑な財産管理・資産承継」という家族信託をする目的が根底から崩れてしまいます。

そこで、家族以外の第三者を選任することが望ましいといえるでしょう。
信託監督人は、受託者と違い、財産を預からないため、信託業法の適用対象外ですので、誰でも(未成年者や当該信託の受託者は除きますが)就任できます。

家族信託の設計・信託契約書の作成に携わった司法書士や弁護士などの法律専門職が「信託監督人」に就任することが多いです。
監督というと、受託者と対立するように思えますが、「信託監督人」の役割は、受託者の身近な相談役として財産管理や不動産、法律、税務に関してアドバイスをし、受益者や受益者を含めた家族のための最適な選択をできるように寄り添うことにあります。
そうすると、家族信託の設計等に関わった司法書士や弁護士等を「信託監督人」として選ぶのは理に適っているといえます。

3.信託監督人の義務と権限

「信託監督人」は、受託者を監督する際に善管注意義務(信託法133条1項)と誠実公平義務(同2項)が課されます。
一方、「信託監督人」の権限については特に決まっておらず、自由に決めることができます(信託法132条1項但書)。
日常業務として、後見監督人にならい、3か月から半年に一度のペースで受託者からその管理する信託口座等の通帳等の開示をしてもらい、大口の支出や使途不明金がないかや毎月の賃料収入が入金・管理されているか、受託者が支払った請求書や領収書が適正か、等を確認します。

または、受益者に対して定期的又は不定期に生活費などが渡されているか、受益者に不満や不都合なことが起きてないか、を確認します。

信託不動産の売却・購入や建物の解体・建替え等の重要な財産の処分には、「信託監督人」の事前の承諾を要する定めを置くことも多いです。

「信託監督人」の同意を得ずに行った売買などの法律行為は無効にすることはできませんが、受益者や家族の望まない財産の処分を抑止する効果は期待できます。

また、「信託監督人」の事前の同意を要する規定は、不動産登記簿の信託目録に信託監督人の氏名と住所とともに記載されます。
そのため、売却を仲介する不動産業者や売買に伴う所有権移転登記を担う司法書士が事前に認識して勝手な売買を防ぐことができます。仮に信託監督人の承諾がないことに気づかなかったとしても、不動産の登記を行う際に、法務局に添付する書類として信託監督人の印鑑証明書と実印を押印した承諾書が必要になるため、いずれにせよ信託監督人の承諾なく登記はできません。

4.まとめ

以上、「信託監督人」について説明しましたが、「家族信託」の設計の際の一助になればと思います。
「家族信託」による財産管理や財産承継に興味を持たれた方は、当事務所でご相談してみてください。

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