信託について

民事信託とは?

2021.02.04

財産管理や承継の手段として「民事信託(家族信託)」という言葉を耳にされたことがあるかと思います。
なんとなく良い制度だというのは分かるものの、他の制度とどう違うのか?一体何が出来るのか等分からない方も多いかと思います。

今回、まずそもそも民事信託とは何なのか?なぜ民事信託が注目されているのか解説したいと思います。

1.民事信託の歴史

まず、 民事信託の起源は、中世ヨーロッパの十字軍の時代に、十字軍の兵士が出征に行く際、信頼する家族や友人に不動産の所有権を移転して管理を任せ、その収益を妻子に渡してもらい、無事生還した場合にはこの不動産を返還してもらうという形で始まり、文字通り、信じて託すことになるため、信頼関係が非常に重要でした。

なお、信託の最も重要な点は、不動産の所有権が本人から移転することにあり、委託された人は自分自身の名義で自由に不動産の管理、場合によっては処分できることにあります。

日本では信託を用いた金融商品の開発が先行しており、家族内での信託というのは盛んではありませんでしたが、少子高齢化等の社会・経済情勢の変化にともない、福祉や扶養などのための社会的ニーズを受けて、信託法が平成18年に改正され、従来まで信託業法の免許を受けた信託銀行や信託会社しか認められていなかった信託を一般でも活用できるようになったことから、近年民事信託が盛んに利用されるようになってきました。

2.民事信託とは

そもそも、「信託」とは、財産を持っている人が、自分が信頼できる人に財産を託して、自分が決めた目的に沿って、自分が利益を与えたいと思う人のために、財産の管理、処分等をしてもらう仕組みのことを言います。

信託において、登場人物は委託者・受託者・受益者の3者からなり、財産を預ける人が委託者、預かる人が受託者、「預けられた財産から利益を得る人」が受益者となります。そして、預けられる財産が信託財産と呼ばれます。

信託により、元々委託者が有していた不動産等の財産の管理・運用・処分権限は受託者が有することになり、不動産の賃料収入などの信託財産の財産的価値は受益権として受益者が保有することになります。

信託と似た制度でイメージしやすいのが生命保険となります。契約者(信託でいう委託者)が保険料を保険会社(信託でいう受託者)に支払いますと、お金の名義は保険会社に移り、保険会社は受け取った保険料を元手に資産運用をして、死亡等の保険契約上の支払事由が発生したときは、保険契約で定められた受取人(信託でいう受益者)に保険金が支払われることになるのと似ています。

「民事信託」と似た用語として「商事信託」というものがありますが、違いとしては、「商事信託」は主に資産管理や運用のために信託銀行や信託会社が営利目的(利益を得る、お金儲けが目的の場合です)で行う信託を指し、「民事信託」は信頼できる家族や親族に資産管理や運用を任せ、非営利目的で行う信託のことを指します。営利目的の場合には商事信託となりますので、信託銀行や信託会社にしか任せることはできません。

なお、「民事信託」と同じ文脈で「家族信託」という用語が使われることもあります。
こちら、「民事信託」の正確な定義はなく、非営利目的での信託を「民事信託」といい、この民事信託の中でも、信頼できる家族間で行う信託のことを「家族信託」と呼ぶ場合と、「家族信託」は「民事信託」の別称であり区別しない場合がありますが、どちらが間違いということはなく、どちらの立場を取るかで内容が変わるわけではありませんので、本稿では後者の家族信託と民事信託は同一と捉える立場で記載しております。

3.民事信託が注目される理由

医療技術等の進歩により平均寿命が延びて長寿化する中で、認知症を巡る問題が大きくなってきており、加齢により判断能力の衰えや事故や病気などによる身体能力の低下などによって、財産管理を自ら行うことが困難又は不可能になったときに、本人に代わって財産を管理し、本人のために運用処分する仕組みがより一層求められるようになってきています。

また、本人の財産管理を行っている高齢者の配偶者や障碍者の親が亡くなった後の残された者のための財産の承継・管理方法や、自分が亡き後の資産承継について二次相続以降にも効力を及ぼしたい等というニーズに対して、既存の委任や後見、遺言等の制度だけでは、それぞれ制約や使い勝手の悪い部分があり、希望する生活支援や財産管理、承継が実現できないことがあります。

そこで、本人やその家族の希望に応じて生前の財産管理から相続後の資産承継までオーダーメイドに設計できる方法として、民事信託が注目されています。

4.まとめ

以上のとおり、今回は民事信託の歴史、民事信託とは何か、
民事信託が注目される理由について解説しました。
次回は、より具体的に民事信託を他の制度と比較していきたいと思います。