inheritance basis

相続の基礎知識

民法改正で相続はどう変わったの?⑤◆遺留分の算定方法および効力の見直し◆

2021.04.21

数回にわたって、民法改正による相続に関する法律・制度の変更についてご説明してきました。

前回は、自筆証書遺言の方式の緩和と自筆証書保管制度の創設についてでしたが、

前回の記事はこちら:民法改正で相続はどう変わったの?押さえておくべきポイント④ ◆自筆証書遺言の方式の緩和と自筆証書遺言保管制度の創設◆

今回は、その続きとして、遺留分に関する法律の変更について、具体的に説明をしていきます。
※この改正民法は、基本的に法律の施行日より後に発生した相続、つまり施行日より後に被相続人がお亡くなりになったケースでのみ適用されます。施行日より前に被相続人がお亡くなりになられたケースでは、あくまで改正前の民法が適用されることになりますので、ご注意ください。

1.前回のおさらい

改正民法のポイント
①配偶者居住権、配偶者短期居住権の新設
②特別受益の持戻し免除の意思表示の推定
③預貯金の仮払い制度の創設
④自筆証書遺言の方式の緩和、自筆証書保管制度の創設
⑤遺留分の算定方法の見直し、遺留分減殺請求の効力の見直し
⑥権利取得の対抗要件の見直し
⑦特別寄与料の新設

今回は、「遺留分の算定方法と効力の見直し」について具体的に説明していきます。

2.遺留分と遺留分減殺請求

皆さんは、遺留分という権利をご存じでしょうか?
遺留分とは、法定相続人が最低限請求することができる相続分のことで、民法で定められた一定の範囲の相続人に認められています。
もう少し具体的に説明をしますと、遺留分として自己の相続分の半分(直系尊属(父母、祖父母など)の場合は三分の一)が確保されており、具体的に遺留分が認められるのは、被相続人の配偶者及び直系卑属(子供、孫など)と直系尊属で、被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。
前述した遺留分が認められる相続人については、「遺留分減殺請求」を行うことで、最低限の相続分を請求することができるのです。

例えば、父親が亡くなり、相続人が配偶者と子ども2人だったとします。
法定相続分通りに遺産を分けるとなると、配偶者が二分の一、子どもたちはそれぞれ四分の一ずつということになります。
父親が仮に「遺産はすべて長男に相続させる」という遺言書を残していた場合、配偶者ともう一人の子どもは遺産を受け取れなくなってしまうことになるのですが、これは配偶者ともう一人の子の遺留分を侵害していることになりますので、各自それぞれが長男に対して自分の遺留分を請求することは可能です。この場合の遺留分は、配偶者は自己の相続分(二分の一)の半分である四分の一、子どもは自己の相続分(四分の一)の半分である八分の一となります。

ここで補足をすると、遺留分は何もせずとも当然に認められるものではありませんので、全部長男に相続させることに異存がない場合は、「遺留分が侵害されているから最低限の相続分を下さい」という請求をしなくても構いません。あくまで、行使するかどうかは権利者が自由に決めていいものになります。
請求をする場合は、相続の開始があったことを知った日から1年以内に行う必要があります。

また、遺留分が認められる相続人であっても、以下に該当する場合は遺留分の請求ができません。

  • 相続放棄
  • 相続欠格
  • 相続廃除

3.民法改正で遺留分の制度はどう変わった?

・遺留分額の算定に含める特別受益は、相続開始前10年間にしたものに限る
遺留分を請求する場合、遺留分の額を計算する必要があります。
従来の民法では、被相続人が生前に行っていた贈与など、相続人が受けた特別受益については、何十年も前のものであっても遺留分の対象として、遺留分算定の基礎となる遺産総額に持ち戻すことになっていました。

ですが、制限がないという点で、過去の贈与をどこまで遺留分の算定に含めるかというところで揉め事になるケースが多くありました。
そこで、今回の改正では、遺留分の算定に含める特別受益は相続開始前10年間に行ったものまでとするという制度に変更され、際限なく遡って算定額に含めるということはなくなりました。

・遺留分「減殺請求」から遺留分「侵害額請求」へ変更になり、金銭の支払い請求に
遺留分減殺請求をすることは、目的物の返還請求であったため、遺留分の権利を行使された場合に問題になることがありました。
例えば、遺産が不動産のみだった場合で、遺留分の減殺請求を起こされた場合、「不動産の一部を返還してください」という請求となるため、不動産は受遺者と遺留分の権利者の共有となってしまいます。その場合、売却がしにくくなってしまうなど、後に不都合が起こる可能性が大きくなります。

また、被相続人が会社を経営していた場合、事業で必要な不動産や株式を、次期社長に相続をさせたいというときに、同じく遺留分減殺請求を起こされた場合、その不動産や株式が他の相続人と共有状態になるので、事業承継に支障がでてしまう可能性も出てきます。

こういった状況を鑑み、改正後の相続法では、遺留分の権利者が行使できることを、目的物の返還請求から金銭の支払請求に変更し、呼び方も「減殺請求」から「侵害額請求」へ変更されました。
これにより、遺留分を請求された場合でも、目的物が共有化されてしまうというところは解消されることになりました。

まとめ

遺留分は、一定の範囲内の相続人には当然に認められる権利となります。
特定の相続人もしくは相続人でない第三者に財産を承継させたいという方もいらっしゃるかと思いますが、その場合でも、どうしても遺留分は切っても切り離せない存在です。

ご自身が亡くなられた後に、相続人同士でトラブルに発展しやすいところでもありますので、遺留分に配慮した相続の仕方を考えることが大切です。
ご自身の財産の残し方について気になる点がある方は、早めに専門家にご相談されることをお勧めします。

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