相続のトラブル・紛争

【推定相続人の廃除】制度をご存知ですか?

2021.04.16
【推定相続人の廃除】制度をご存知ですか?

あなたがこれまで築き上げてきた財産は、あなたの大切な人やお世話になった人に譲りたいですよね?

しかしながら、血縁関係があってもお子さんから虐待や脅迫等を受けていた場合、財産を譲りたくないケースもあることでしょう。

あなたの財産をあなたの意思通りに残すためにも、知っておいて貰いたい【推定相続人の廃除制度】についてご説明致します。

1.推定相続人の廃除って何?

相続開始後に相続人となるべき人のことを推定相続人といいます。
この推定相続人から、被相続人が虐待や重大な侮辱を受けたとき、またはその他の著しい非行が推定相続人にあったときに、完全に相続権を奪う制度として推定相続人の廃除制度があります。(民法第892条)

(民法第892条:推定相続人の廃除)
遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

2.手続き方法

廃除の手続きには、2種類の手続き方法があります。

(1)被相続人が生前に自分で家庭裁判所に相続人廃除の申立てを行う
 被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に調停又は審判の申し立てを行い、調停が成立又は廃除の審判を受ける必要があります。
(2)遺言書による廃除
遺言によって推定相続人を廃除した場合、被相続人は実際に手続きをすることが出来ないため、遺言書に特定の相続人を廃除する旨を記し、死後に遺言執行者が被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に廃除の請求を行うことになります。遺言書での相続人の廃除の手続きには遺言執行者が必要となりますので、遺言書に遺言執行者が書かれていないからといって、他の相続人が相続人廃除の手続きをすることはできません(民法893条参照)。この場合は、相続人又は受遺者など利害関係人から、家庭裁判所に対して遺言執行者の選任を申し立てる必要があります(民法1010条)。

 

(民法第893条:遺言による推定相続人の廃除 )
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言効力を生じた後、遅滞なくその推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。
この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

3.廃除が認められるには…?

推定相続人の廃除が認められるのは、以下の一定の原因がある場合です。

⑴ 被相続人に対する虐待
⑵ 被相続人に対する重大な侮辱
⑶ 推定相続人の著しい非行

廃除された推定相続人は、相続人が最低限得られる相続分である【遺留分】を請求する権利も失います。したがって、遺留分の認められていない兄弟姉妹は、廃除の対象者とはなりません。兄弟姉妹に遺産を相続させたくない場合には、遺言書に相続分をゼロと指定する等してその旨を記載しておけば足ります。

4.廃除を取り消すことはできるの?

廃除は、一定の推定相続人に相続させたくないという被相続人の意思を尊重した制度のため、被相続人はいつでもこの請求を取り消すことができます。(民法894条)一度廃除の手続きをした後でも、子や配偶者が改心した場合、家庭裁判所に請求してその審判を受けることで廃除が取り消されます。

(民法第894条:推定相続人の廃除の取消し)
1 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。

また、遺言で一度廃除の意思表示をした後に、廃除の取り消しを行いたい場合、後に作成した遺言で、前の遺言の廃除の意思表示を撤回する事を記載しておけば十分です。前に作成した遺言に基づき廃除審判の請求をし、これが認められた後に、後日作成した遺言に基づいてその取消しを請求するという必要はありません。

したがって、遺言による廃除の取消しに基づいて遺言執行者が家庭裁判所に廃除の取消しの請求をしなければならないのは、あくまで生前に被相続人からなされた廃除請求が、家庭裁判所により認められていた場合のみになります。

そして、廃除の取消しの審判においては、単に取消しの請求が被相続人の真意によるものか否かを家庭裁判所において審理、判断する趣旨であり、廃除事由の存否が審理の対象となるわけではありません。

したがって、たとえ廃除事由が存在したとしても、被相続人が真意に基づいて廃除の取消しをしたのであれば、推定相続人は相続権を回復することになります。また、被相続人が、廃除の取消しという方法以外にも、廃除された推定相続人に対して任意に贈与なり遺贈をすることによって事実上利益を与えることもできます。

5.まとめ

推定相続人の廃除についてご説明しましたが、ご理解いただけましたでしょうか。
相続について正しい知識をつけておくことで、相続発生前に生前に対策できることの幅が広がりますよね。
分からないことがあれば、ぜひ一度専門家に相談してみてくださいね。