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寄与分での紛争

寄与分ってなに?

2019.04.30

相続が発生して遺産分割協議を行う際、何らかの事情があって、2分の1ずつ等の法定相続分が「不公平」だと感じる方もいらっしゃるでしょう。

たとえば、「自分が被相続人である両親の会社経営を手伝ったことで会社の業績が伸びた。現在の両親の遺産がこれだけあるのは、自分が会社経営に尽力したことが理由なのに…」「自分は、長年にわたり被相続人の介護を行い、生活面を支えていた。」等の事情があり、「他の相続人よりも遺産を多くもらわないと公平な相続にならない。」といった考えをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

今回はそのような方に知っておいていただきたい「寄与分」という言葉の意味と、寄与分が認められる具体的な事例をご説明します。

1. 寄与分とは?

寄与分とは、被相続人の生前にその財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人と、他の相続人との公平を図るために定められた制度です。
具体的には民法で以下の通りに定められています。

上記に定められた行為のことを「寄与行為」といい、相続人の中で寄与行為を行った者がいる場合、相談財産の一定額が「寄与分」として相続財産から控除されます。

そして、寄与分が控除された相続財産を相続人間で協議し分割した上で、寄与行為を行った相続人は自らの相続分に加えて寄与分の財産も受け取ることができるのです。
なお、寄与分の制度は相続人のみが対象とされており、相続人以外の被相続人の知人や内縁の妻などは該当する行為を行ったとしても寄与分を受けることはできません。(これをカバーするため、民法改正では特別寄与料という相続人以外が寄与した場合の制度を創設予定です。)

また、寄与分は遺産分割協議や家庭裁判所での調停において定めるものであり、相続人が自ら寄与行為を行ったとして寄与分の主張をする必要があります。

よって、被相続人が遺言によって特定の相続人に対して「寄与分として遺産の8割を与える」「寄与分として土地を与える」等のように寄与分を定めることはできません。

寄与行為の主張をする相続人は、遺産分割協議や調停において他の相続人の合意を得ることができれば寄与分を受けることができますが、協議や調停でも決着がつかない場合、寄与分を求める審判の申立てをする必要があります。

2. 寄与分の成立要件

民法では、寄与分が成立する要件として以下の3点が定められています。

(1) 相続人による寄与行為が存在すること

寄与分が成立するには、まず該当行為が「寄与行為である」と認められる必要があります。寄与行為として認められるのは下記のいずれかの行為です。
・被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付
・被相続人の療養看護
寄与行為の事例については、次の項目で詳しくご説明します。

(2) 被相続人の財産の維持又は増加があったこと

寄与分は上記(1)の行為によって被相続人の財産が維持又は増加した場合に認められるため、客観的に見て寄与行為と財産の維持又は増加との間に因果関係があることが必要です。
つまり、寄与行為を行ったから財産が維持・増加されたという関係が必要です。
以上の通り、寄与分はあくまで財産上の効果をもたらしたことが要件とされるため、被相続人の精神的な面での支えや協力といったものは寄与分として認められません。

(3) 特別の寄与であること

寄与分が認められるためには、寄与行為が「特別の寄与」であると認められることが必要です。
「特別の寄与」とは、相続人と被相続人との身分関係において通常期待される程度を超えた貢献をすることがそれに当たると考えられています。

民法においては、夫婦間の協力扶助義務、直系血族及び兄弟姉妹の扶養義務、及び直系血族及び同居の親族の相互扶助義務というものが定められており、一般的な親族間での支え合いは当然の前提とされています。

そのため、相続人が被相続人に対して行った寄与行為がこの範囲内であると判断される場合は特別の寄与行為として認められません。

例えば、被相続人の妻が「5年間にわたり夫の面倒を見て介護をした」として寄与分を主張しても、それが夫婦間の当然の協力扶助範囲内であると判断され寄与行為として認められない場合もあるのです。

3. 寄与行為の事例

それでは、寄与行為の具体的事例について詳しくご説明します。
2の(1)でもご説明した通り、寄与行為として認められるのは「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、若しくは被相続人の療養看護」とされていますが、これらはそれぞれ以下の類型に分類されます。

(1) 家業従事型

家業従事型とは、「被相続人の事業に関する労務の提供」により相続財産の維持又は増加に貢献することをいいます。
原則として無償で労働力を提供していたことが必要とされ、被相続人から標準的な給与や報酬を受けていた場合は寄与行為として認められません。
また、労務の提供を一定期間継続して行ったという継続性が必要であると考えられています。

(2) 出資型

出資型とは、「被相続人の事業に関する財産上の給付」により相続財産の維持又は増加に貢献することをいいます。
被相続人が経営していた事業への資金援助や、事業に使用する土地建物等の不動産の援助等がこれに当たります。
なお、民法では「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付」と定められているため、事業に関する財産の給付が一般的とされますが、事業に関しない財産上の給付でも寄与分の対象になると考えられています。
例えば、被相続人が生活上必要な不動産を購入するにあたっての資産の援助等がこれに当たります。

(3) 療養看護型

療養看護型は、被相続人の療養看護を行い、被相続人が看護費用等の支出を免れ、相続財産の維持等に貢献したことをいいます。
被相続人との関係に照らし合わせて、通常期待される程度を越えた療養看護がなされることが必要です。
また、仕事の傍ら介護を行っていたという程度ではなく、介護に専念していたという専従性が必要であると考えられています。

4. まとめ

寄与分が認められるためには、民法で定められた厳格な要件を満たすこと、寄与行為を行った事実を立証すること、そして遺産分割協議や調停で相続人の合意を得る事が必要です。
寄与行為の要件は非常に複雑なため、相続人の中には自らが行った行為が寄与行為に該当するのかわからないといった方も多いのではないでしょうか。

遺産分割協議において、自分が寄与分を主張できるかどうかわからないという方や、寄与行為についてどのように立証するべきかお悩みの方は、相続の専門家や弁護士に相談した方が良いでしょう。

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