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寄与分での紛争

民法改正で相続はどう変わったの?⑦ ◆特別寄与料制度について◆

2021.05.11

数回にわたって、相続に関する法律や制度が民法改正でどう変わったのかをご説明してきましたが、いよいよ今回が最後の回となります。

前回は、相続登記における対抗要件の変更についてのお話でしたが、
前回の記事はこちら:民法改正で相続はどう変わったの?⑥◆相続登記◆

今回は、改正民法において新設された「特別寄与料」の制度について、具体的にお話をしておきます。
※この改正民法は、基本的に法律の施行日より後に発生した相続、つまり施行日より後に被相続人がお亡くなりになったケースでのみ適用されます。施行日より前に被相続人がお亡くなりになられたケースでは、あくまで改正前の民法が適用されることになりますので、ご注意ください。

1.前回のおさらい【改正民法のポイント】

①配偶者居住権、配偶者短期居住権の新設
②特別受益の持戻し免除の意思表示の推定
③預貯金の仮払い制度の創設
④自筆証書遺言の方式の緩和、自筆証書保管制度の創設
⑤遺留分の算定方法の見直し、遺留分減殺請求の効力の見直し
⑥権利取得の対抗要件の見直し
⑦特別寄与料の新設

今回は、「特別寄与料」について具体的に説明していきます。

2.これまでの民法では「寄与分」という制度しかありませんでした

特別寄与料のご説明の前に、従前の制度である寄与分についてまずはご説明をします。
「寄与分」という制度は、相続人の中に、被相続人の財産の維持や増加について、特別に貢献した相続人がいた場合、その貢献に応じて、法定相続分に加えて財産を取得させる制度です。

寄与分として認められる内容については、大きく分けて以下の3つがあり、被相続人に対し以下の点に関して特別の寄与であることが認められた場合、その相続人は寄与分として他の相続人よりも多く財産を受け取ることができます。

①労務の提供(被相続人の家業従事など)
②財産上の給付(金銭的な支援など)
③療養看護(介護、看護など)

3.相続人でない人が行った寄与は寄与分の対象外だった

これまでの法制度では、寄与分が認められるための要件として、「相続人自らの寄与があること」とされていました。
しかし、実際のケースですと、相続人以外の人が特別な寄与を行っているという場合も少なくありません。

例えば、病気で寝たきりの父親を、その長男の配偶者が長年にわたって無償で介護をしており、その後その父親が亡くなったとします。
相続人は、長男の他に長女もいますが、長女は父親の面倒はほとんど一切見ず、長男の配偶者に全て任せっきりの状態でした。

上記のような例で、仮に、配偶者による介護が特別な寄与だと認められるだけのものだった場合でも、従来の法律では、長男の配偶者は法定相続人ではないため、寄与分の要件を満たしておらず、寄与分の主張はできません。

配偶者の寄与分が夫である長男の相続分には考慮されないのか?というところについても、実際に介護をしていたのは長男ではないため、相続人自らの寄与というところに当たらず、長男が代わりに寄与分を請求するということもできません。

長男の配偶者からしたら、自分が長い間ずっと介護をしてきていたのに、その貢献は考慮されず、一切面倒を見なかった長女に夫と同じ割合で相続財産が入るというのはあまり納得できるものではないですよね。

このように、相続人でない親族が被相続人に対して行った貢献についても考慮するための制度として、今回新たに規定が新設されました。

4.相続人以外の親族による貢献も反映されるような制度に!

今回の法改正で、新たに創設されたのが、「特別寄与料」という規程です。
これは、被相続人の相続人でない親族が、被相続人に対して無償で介護や労務の提供などを行い、被相続人の財産の増加または維持があった場合、その親族が相続人に対して、特別寄与料として金銭の支払いを請求できるというものです。

この制度の新設により、相続人以外の親族が行った貢献部分についても認めてもらえるようになりました。
前述の例で、寄与分が認められなかった長男の配偶者も、改正後の法律であれば、配偶者が無償で行っていた介護が特別の寄与として認められた場合、配偶者独自の権利として特別寄与料を相続人である長男・長女に対して請求することができるのです。(長男は自分の夫にあたるので、実際に請求するかどうかは別問題ですが。)

5.親族であっても特別な寄与だと認められない場合もあるので注意しましょう

これまで貢献をしてきた相続人以外の親族にとって、今回の特別寄与料の制度の創設は自分たちの貢献が反映されるようになったため、親族だから絶対に特別寄与料が請求できるのか?というと、そういうわけではありません。

まず、親族として貢献をしたから特別寄与料を請求したいと思っても、その貢献によって、被相続人の財産の維持や増加に対して「特別の寄与」をしたという証明ができない場合は、請求は認められません。

単に、被相続人の入院の付き添いを一時的に行っただけだったり、家業を片手間に手伝っただけだったりと、被相続人との身分関係に基づいて、通常期待されるような程度のものであれば、特別の寄与とはいえません。(ヘルパーさんを一切雇わずに完全に無償で24時間介護をしていたなど、通常期待される程度を大きく超えている場合は、特別の寄与として認められる可能性が高いです。)

また、被相続人の配偶者が事実婚であった場合は、特別寄与者の要件を満たさないため、内縁の妻は、特別寄与料を請求することはできません。
配偶者の場合は法律婚のみを親族と定めているため、事実婚の方は、法的には親族とはならず、被相続人に対して多大な貢献をしていたとしても、残念ですが特別寄与料の請求はできません。

6.まとめ

特別寄与料の請求の要件である「特別の寄与」であるということを証明することは中々難しく、ご自身では特別の寄与だと思われる場合でも、裁判所の判断では認められないという可能性も十分ありえます。

また、特別寄与料は、相続人との協議で決定するため、当事者同士での話し合いでまとまらないケースも想定されますので、早い段階で専門家にご相談されることをお勧めします。

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