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相続のトラブル・紛争

遺産分割審判ってどんな手続?

2017.09.10

遺産分割審判ってどんな手続?

<相談内容>
父が亡くなり,相続人は私と兄です。遺産分割について協議を重ね,まとめらなかったので家庭裁判所に調停を申し立てていましたが,お互い譲らず調停不成立となりました。そこで,審判手続に移行して判断してほしいと思いますが,どのような手続が必要でしょうか。

 家庭裁判所における遺産分割手続では、遺産分割協議がまとまらず,調停も不成立となってしまった場合,遺産分割審判手続に移行します。今回は,遺産分割審判の手続についてご説明していきます。

1 遺産分割審判とは

 遺産分割事件は,一般的な家事事件と異なり、調停前置主義(まずは審判を行う前に調停を行なわなくてはならないとする原則)が採られていません。ですので、調停申立てと審判申立てのいずれを先に行ってもよいとされています。しかし、遺産分割事件も話し合いに馴染む事件ですので、実際は先に審判申立てをしても家庭裁判所が職権で調停に付す運用が多いようです。そのため、通常は,調停手続を先行して行うことになります。そして,遺産分割調停で,合意が成立する見込みがないとして調停不成立となった場合,審判に移行します。これは当然に移行し,調停申立て時に審判の申立てがあったとみなされるので,改めて申立て等を行う必要はありません。

 当事者の話し合い・合意で解決する調停とは異なり,審判手続は家庭裁判所の判断が紛争解決内容となり,その判断が強制力を持ちます。この点は通常の裁判手続と同じです。
 当事者の主張は必ず書面で行い,場合によっては事実調査として当事者や参考人を審判廷で審問し,また,ときによっては家庭裁判所調査官が官公署や私人へ照会する等の事実関係調査を行うこともあります。そして,必要があれば遺産の評価について鑑定をしたり,証拠調べを行います。そのため,審判は時間と費用を多く要することがあります。

 審判手続が終了する場合としては,審判,審判の取下げ,調停の成立があります。調停の成立は,家事審判官が審判の中で調停案を提示し,当事者が合意すれば成立するもので,通常の裁判での和解と同じように,なるべく当事者間の合意で紛争を終了させるという配慮の下に行われています。審判には認容審判と却下審判があり,判決と同様の効力を有しています。したがって,認容審判であれば,分割条項(遺産をどのように分割すべきかの裁判所の判断)が示されているので,その内容に従った遺産分割が強制されることになります。
 なお,審判の内容に不服がある場合には,二週間以内に不服を申し立て,高等裁判所で争うことが可能です。

2 審判前の保全処分

Aさんの父が死亡し,相続人はAさんと妹です。遺産分割調停でも合意に至らなかったため,審判をしています。しかし,Aさんは妹が遺産の貴金属を勝手に処分するのではないかと心配です。Aさんが遺産の減少を止めるためには,何か手段があるでしょうか。
 遺産分割審判は,申立てから終局審判の確定までに長期間を要することが少なくないため,この間に遺産が処分されてしまい,審判の実効性がなくなるおそれがあります。これを防止する措置として,「審判前の保全処分」が定められています。
 審判の申立てがあった場合,あるいは調停不成立で審判に移行した場合,家庭裁判所は以下の処分を命じることができます。これらの保全処分には,執行力があるため,審判の具体的な内容に応じて、審判を待つことなく執行を行うことが可能です。

⑴ 遺産管理者の選任・遺産の管理に関する事項の指示

 家庭裁判所は,遺産の管理のため必要があるときに,遺産管理者を選任し,又は相続人に対して,遺産の管理に関する事項を指示することができます。
 これは相続人が遺産を管理できない場合,遺産の管理が不適切である場合に認められるものです。

⑵ 仮差押え・仮処分その他の必要な保全処分

 仮差押えとして,家庭裁判所は,例えば相続人の一人が別の相続人に対し代償金の支払いを命じられることが見込まれる場合などに,相続財産の仮差押えの保全処分を命じることが可能です。
 仮処分には,①処分禁止の仮処分と②仮分割の仮処分の二種類があります。
 処分禁止の仮処分は,遺産である不動産が被相続人名義である場合,共有名義の相続登記が行われている場合に,申立人がその遺産を取得する可能性があり,他の相続人が遺産を処分する危険性があるときに行われます。
 仮分割の仮処分は,申立人がある遺産を取得する可能性が高く,生活の窮迫などにより早急にその遺産を取得する必要がある場合に,預貯金や株式について認められるものです。

3 まとめ

 今回は,遺産分割審判手続についてご説明してきました。審判は,調停が不成立となっている以上,当事者の対立が激しいケースですので,弁護士を代理人とし,説得的な主張を行うことが重要です。審判前の保全処分申立てについても,求める保全処分と保全処分を求める事由を明らかにしなければならないので,弁護士に任せるとスムーズです。
 また,審判には多くの費用と時間を費やすことになります。当事者間に紛争が残らないよう,調停や審判に至る前に協議での合意が成立すれば,費用と時間をかけずに遺産分割を終えることができます。ただし,どうしても当事者のみの話し合いは感情的になってしまうため,弁護士に代理人として協議を進めてもらうことを強くお勧めします。そのため,相続が発生したら,できるだけ早めに弁護士に相談すると良いでしょう。

 

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