相続のトラブル・紛争

相続人が行方不明な場合どうしたらいいの?

2021.02.27
相続人が行方不明な場合どうしたらいいの?

家族の誰かが亡くなった際には、相続手続が発生しますよね。
生前、自筆や公正証書による遺言を遺してくれている場合は、それに記載されている相続人が財産を受け取る形になりますが、遺言がないことも多くあります。
そのときには、相続人全員が集まって遺産の分け方について協議をする「遺産分割協議」というものが必要になってきます。
しかしながら、いざ遺産分割協議をしようと思い相続人全員に連絡を取ったところ、1名だけ連絡がつかず、どこに住んでいるのかもわからない状態になるかもしれません。
その場合、その人だけ除いて協議をすればいいのでしょうか?
いいえ、相続人全員で協議をしないことにはその話し合いは有効にはなりません。
ではどうしたらいいのでしょうか?

1.不在者とは

まず、家出やさまざまな事情により、もともと住んでいた住所や居所を去った人のことを民法では「不在者」と定義しています。
この不在者とは、「生死ははっきりしているがどこにいるかがわからない状態」と「生死もはっきりしていない状態」のどちらも指します。
生死もはっきりしていないときには「失踪宣告」といって当該人を死亡したものとみなすという制度がありますが、今回は前者の「生死ははっきりしているがどこにいるかがわからない状態」について、考えていきたいと思います。

2.不在者財産管理人

前述の通り、相続人の中に「生きているだろうけど、どこにいるのか分からない状態」の人がいた場合、相続人が全員揃わないので遺産分割協議が進められないですよね。
そういったときには不在者財産管理人という制度を活用することができます。
元来「不在者財産管理人」とは、不在者の権利を保護するためのもので、不在者が戻ってくるまでの間、暫定的に財産を管理する人のことをいいます。
しかしながら、不在者がいて遺産分割協議が行えないとなると、他の相続人は不利益を被ることになりますので、現在は、遺産分割を行うために不在者財産管理人を選任する事案が多くなっています。
例えば、母親が亡くなり遺産分割をしようとしたところ、兄弟一人の行方も連絡先もわからず、遺産分割協議が進められないといった場合です。
このような場合には、他の相続人がその行方不明者の不在者財産管理人を選任するよう家庭裁判所に申立て、不在者財産管理人が本人の代わりに遺産分割協議書に押印して、相続した財産を管理することになります。

3.不在者財産管理人の職務

不在者財産管理人に選任された者は、不在者の代わりとなって不在者の権利や財産を保護する役目を担うことになります。
つまり、遺産分割協議に参加し、不在者に不利益にならないように協議を行い、遺産分割協議書に署名押印をします。
これで不在者財産管理人を選任した当初の目的は果たせた形になりますが、選任された人はここでは終わりません。
その後は受け取った財産を管理することになります。
具体的には、受け取った財産のみならず、もともと不在者が保有していた財産を調査し、財産目録を作成したうえで、定期的に家庭裁判所へ報告を行います。
では、この職務はいつまで続くのでしょうか?

不在者財産管理人の職務を終了出来るのは以下の場合のみです。

① 不在者が現れたとき
② 失踪宣告がなされたとき
③ 死亡したことが確認されたとき
④ 管理していた財産がなくなったとき

つまりは、この4種類に該当しないときは、半永久的に職務を続けなければならないということになります。
職務を続けている中で、上記4種類に該当した場合には、適切な手続きを経て、不在者財産管理人の業務は終了となります。

4.権限外行為

なお、前述の通り、本来は不在者の権利や財産を保護することが目的とされていますので、財産の現状を維持するために必要な行為をする権限は持ち合わせています。
しかしながら、遺産分割をしたり、不在者の財産を処分したりする行為は、不在者財産管理人に与えられている権限を越えることになりますので、そのような行為が必要なときには、家庭裁判所に「権限外行為の許可」をもらいましょう。

5.手続き方法

では、不在者財産管理人を選任するためにはどうしたらいいのでしょうか?
不在者が元々住んでいた住所地又は居所地にある家庭裁判所に手続きを申し立てることになり、申し立てることが出来る人は利害関係人か検察官のみとされています。
利害関係人とは、不在者の配偶者や同じ被相続人に対する相続人、債権者などを指します。
まず、申し立てに必要な不在者の戸籍謄本や不在を証明する資料、そして財産管理人になってほしい人の住民票などを収集します。
それらをもとに申立書を作成し、前述の通り管轄の家庭裁判所へ申立を行います。

その後は、本当に不在者を見つけたり連絡が取れたりしないのかなど、書面や審問を行いながら慎重に判断していきます(家庭裁判所から全国のハローワークへ雇用保険の照会が掛けられ、そこで勤務先が判明して本人の居場所が特定されるケースが結構多いです。
そのため、「行方不明者を見つけたいものの、調査に限界があるので、調査のために不在者財産管理人の選任申立てを行い、家庭裁判所の力を借りて行方不明者の調査を行う、という使い方をされることも多いです。」。1~2か月間の時間をかけて審理を行い、最終的にすべてを総合的にふまえて、裁判官が選任の可否を判断します。
選任された場合でも選任されなかった場合でも、結果内容が記された審判書が送付されますので、選任されたらここから不在者財産管理人としての職務がスタートする形となります。

6.まとめ

これまで述べてきた通り、家庭裁判所に申し立てを行い、国から認められて不在者の財産を管理することになります。
かなりの長期間に及んでの職務になる可能性もありますし、専門知識が必要な業務になりますので、例えば弁護士等に依頼することも可能となっています。
もし身近に依頼できるような人がいない場合には、弁護士事務所に相談に行くなどしましょう。