交通事故

保険会社から治療費を打ち切られてしまった際の対応について

2019.07.24

まだ通院が必要だと思っているのに、保険会社から治療費の支払いを打ち切られた場合、どの様に対応したら良いのでしょうか?通院することを止めてしまうのか、自分でお金を支払って通院するしかないのでしょうか。
今回は、保険会社から治療費の支払いを打ち切られたときの対応についてご説明致します。

1 基本的な治療費の負担と期間について

人身事故に遭い、被害者が病院で診療をしてもらった場合、病院へ対する治療費の支払義務は患者である被害者にあります。
しかし、加害者側が任意保険に加入している場合、任意保険会社は被害者が通院している病院へ直接治療費を支払うという運用が一般的です。このように、任意保険会社が病院へ直接治療費を支払う場合は、基本的に被害者が窓口で治療費を支払うことはありません。

しかし、任意保険会社によっては、まず被害者側が治療費を立て替え、後日任意保険会社に立替金を請求するように、提案されることがあります。そのような場合、後々治療費について加害者側と争いになると『治療費が支払われない』というリスクもあります。
任意保険会社から立替払いの提案がなされた場合には、早い段階で任意保険会社が直接病院に支払うよう交渉をすることが、後々のリスクを回避することに繋がります。

また、加害者が任意保険に加入していない場合には、被害者の加入する健康保険を利用し、一時治療費を立て替えた後に加害者の加入している自賠責保険に請求することになります(被害者請求と言われる手続きです。)。ただし、当面の費用が必要な場合には、損害賠償額の一部を仮渡金(*1)として請求することができます。なお、自賠責保険では傷害の場合120万円が上限であることに注意が必要です。


*1 仮渡金…
通常の立替金請求方式だと、自賠責から保険金が支払われるまでには、「被害者が治療を終え、必要書類を揃えて自賠責に請求を行い、自賠責による審査を経たうえでの支払い」となるため、一定の日数を要します。しかし、支払いがなされるまでの期間、経済的に困窮してしまう方もいるため、その様な方を救済するために仮渡金の制度が設けられています。

2 保険会社からの打ちきりを延期してもらえないのでしょうか?

一般的に、症状固定時期までの治療費については、必要かつ相当なものとして、交通事故と相当因果関係のある損害となります。
しかし、例外的に「必要性がない」、又は「相当性がない」治療費については、交通事故と相当因果関係の認められない損害として、支払義務が生じません。

そして、症状固定後の治療費は原則として損害賠償の対象とはなりません。
症状固定とは、傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果を期待し得ない状態で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達した時をいいます。
要は、治療しても、治療しなくても症状が変わらなくなった状態のことをいいます。

特にむち打ちなど軽傷であることが比較的多い症状の場合、任意保険会社は事故後6か月を目途に被害者側に治療の打ち切りを促してきます。
しかしながら、治療の打ち切りの提案があったとしても、引き続きの治療が必要な状態であれば治療は継続すべきであり、その治療費も加害者側から支払われるべきものです。

もし、治療費を打ち切られてしまうと、被害者が治療費を負担しなければならない危険がありますので、保険会社から打ち切りを提案された場合には、担当の医師に治療継続の必要性を書いてもらった診断書を作成してもらうなどして、粘り強く治療の継続を訴えるべきです。
弁護士が入って治療継続の必要性を具体的に説明すれば、保険会社が継続に応じてくれる場合もあります。

3 打ち切りをされてしまった場合、何も手段はないのでしょうか?

被害者が治療の継続を希望しても保険会社が治療費の支払いを打ち切る決定をした場合はどの様に対応したら良いのでしょうか?
最初に行うべきことは自賠責保険へ仮渡金を請求することです。しかし、自賠責保険が支払ってくれる金額には上限がありますし、必ずしも支払いに応じてくれるわけではありません。
その場合、考えられる手続きは①裁判所に損害賠償金の仮払いを求める仮処分を申し立てる、②自己負担で治療を継続して後日支出分を損害賠償請求する、③症状固定診断を経て後遺症認定申請を行う、の3通りです。

まず、①の仮払い仮処分とは、交通事故の問題が最終的に解決するまでの間、一定額の治療費や生活補償費を加害者側から被害者側に支払ってもらう裁判所の命令です。
仮とはいえ加害者に実際の支払いを命じるものになるため、相当の基準をクリアする必要があります。
具体的には、「訴訟で被害者側に勝訴の見込みがあること」、「被害者とその家族の生活が困窮し、生存を維持するうえで仮処分が不可欠であること」が認められなければならず、これらは被害者側で証明しなければなりません。

また、仮払い仮処分で請求できるのは、基本的に治療費と最低生活補償費であり、休業損害・慰謝料等の仮払いは難しいです。このように、①の実現は容易ではなく、得られる利益も限定的です。
しかし、裁判所の仮払い仮処分命令が出ると強制執行をすることも可能となり、加害者の家財道具(家や車)、事業をやっていれば機械や商品などの動産を差押え、競売にかけ現金にすることができます。

次に、②③の手続きですが、②は「後日加害者あるいは保険会社が支払いを拒否するリスクも抱えて治療を継続する」というものです。③は治療の継続を諦めることを意味します。

いずれの手続きを選択すべきであるかは、事故で負った傷害の程度、打ち切り時点での回復状況、担当医師の意見、被害者の生活状況等一切の事情を考慮して判断することになり、極めて専門的な知識、経験が求められます。

4 まとめ

今回は、保険会社から治療費を打ち切られてしまった際の対応についてご説明しました。
急に打ち切りを言い渡されると、これからどうしていけばいいのだろうと不安になられる方も多くいらっしゃると思います。

事故に対する保険会社の対応に不安や不満をお持ちの方は、弁護士等の専門家に一度ご相談されてみることをお勧めします。