相続税

事業者の相続財産の減らし方

2021.04.06
事業者の相続財産の減らし方

中小企業オーナーは、一般の人が残す財産の他に自分が経営している会社の同族株というやっかいな相続財産をお持ちです。
今回は、中小企業オーナーにかかってくる相続税の節税を考えてみたいと思います。
自社株(同族株)は、会社の規模により、自社の純資産だけでなく、国税庁が発表する類似業種比準価額を併用して評価する場合もありますが、自社の純資産を減少させておくことは、非常に大事です。

1.「会社をつくり、配偶者や子供に給与を支払う」ことの効果とは

相続対策として効果が高いのが、会社(法人)を設立する事です。
個人よりも会社の方が、節税対策としてできることが大幅に広がるからです。
会社を作れば、その会社の株式(自社株式)も相続財産になりますが、オーナー会社の株式は一般的に相続税法の評価が高くなりがちです。

そのため、相続人は多額の相続税に苦しむこともあります。そこで会社を持っている人は、相続税対策として自社株式の評価を引き下げる必要があります。
たとえば、親が地主であれば不動産賃貸業などの事業を営む会社を設立し、その会社から、配偶者や子に給与を支払うという方法があります。

給与を支払うことでその分だけ会社の資産が小さくなれば、会社の評価(株価)が下がります。株価が下がれば、自社株式を相続した場合の相続税を抑えられます。
配偶者や子に会社から給与を出すことは、将来の相続税の負担を抑えつつ、資産を移転させていることになるのです。
一方、会社から給与を貰った配偶者や子は所得が増えることになり、所得税の負担が増しますが、そもそも給与には「給与所得控除」がありますし、相続税よりも所得税の方が最高税率は低いのです。

つまり、相続財産として現金預金をもらうよりも、会社経由で給与を貰った方が、結果として手元に残るお金も多くなるという事です。
他にも、社長に退職金を支払う、会社の経費で生命保険に加入する(個人事業主はできません)、配当金を出すなど、会社を活用した相続税対策のバリエーションはたくさんあります。
気を付けなければならないのは、相続税・贈与税だけで見るのではなく、所得税や法人税とのバランスを見ながら、トータルで最もお得な方法を選ぶことです。

2.「会社から退職金を支給する」ことの効果とは

自社株式を相続した場合にかかる相続税の対策では、株価を引き下げることが基本となります。
たとえば、現預金を減らせば株価は下がります。
現預金を減らすために社長である自分に対して多額の退職金を支払うという方法があります。
社長の退職金額の目安は、「最終報酬月額×在任年数×功績倍率(創業者なら3~3.5倍)」という式で計算します。
多額の退職金を受け取ることで、今度はオーナー社長自身の所得税が心配になるかもしれませんが、それほど気にする必要はありません。
所得のなかでも特に退職金は優遇されているのが退職所得だからです。
なぜなら、退職金から退職所得控除を差し引いたものに、さらに2分の1を掛けて所得額を計算します。
よって、だいぶん所得税は押さえられます。

もし、多額の退職金を受け取った社長が亡くなったらどうなるでしょうか。
現預金は100%課税されるので、その分だけ相続税の支払いは増加しますが、自社株式を相続するよりはメリットの方が大きいと思います。
現預金であれば複数の人に分割することも簡単にできますし、納税資金になるからです。
ただし、会社から退職金を支払うということは、会社のお金を一気に吐き出すということです。
余裕のない会社が無理やり退職金を支払えば、財務力が弱ってしまい、経営が不安定になるという点には気を付けなければなりません。

3.「会社から死亡退職金を支払う」効果とは

会社の役員や従業員が在職中に亡くなったとき、個人に支払われるはずだった退職金を遺族に支払うケースがあります。そのような退職金を死亡退職金と呼ばれます。
この死亡退職金を在任中に亡くなった社長の遺族(相続人)に支払えば、会社の現預金が減りますから、相続人が相続する自社株式の株価も下がります。
つまり、相続税の節税効果が得られるという事です。
ただし原則として、死亡退職金を支給するには、会社に退職金規程が整備されていなければなりません。

しかし、その相続税の節税効果は、その退職金全額が課税の対象となるのではなく、「500万円×法定相続人の数」が非課税枠となります。
つまり、法定相続人が3人いる場合には、1,500万円までの死亡退職金は非課税となります。この非課税枠は相続税の基礎控除になどに上乗せができるので、使い勝手がいい制度といえるでしょう。

4.おわりに

役員退職金は、とても不確定な概念をもっており悩ましい一面があります。いつも問題になるのは、「最終報酬月額」と「功績倍率」です。
「最終月額報酬」は亡くなる直前に多く出そうとして昇給しても課税庁に否認される可能性は高いです。
また、「功績倍率」はきちんとした規定があるわけではなく、課税庁は最終的には同業他社を参考に判断するかもしれません。
よって、役員退職金の金額の決定は自社の状況を踏まえた専門家の意見を聞いて判断されることをお勧めします。