相続税

相続税申告に必要な書類(預貯金、現金)

2021.05.23
相続税申告に必要な書類(預貯金、現金)

皆さんは、税金の申告をご自身でされたことはありますか。事業をされている個人事業の方は、所得税の確定申告をご自身でされたこともあると思います。しかし、「相続税」の申告をしたことのある方はそれほどいらっしゃらないのではないでしょうか。

相続税は、簡単にご説明しますと、
①どなたかが亡くなられた場合で、②一定の基準額(基礎控除額といいます。)を超えた遺産が存在する場合にのみ申告する必要が出てきます。

相続税は、①どなたかが亡くなった場合にのみ課税される点で、皆さんの周りでもそれほど頻繁に問題になることはないかもしれません。それに加えて、②基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」という計算式で計算されますので、それなりの遺産額でなければ相続税の納税は不要ということになります。

残された遺産の種類や数にもよりますが、率直に申し上げて、相続税申告はかなり複雑です。何が複雑かをすぐにご説明するのは難しいのですが、例えば、どこまでの財産を相続税の課税対象となる「遺産」と考えるのか、遺産の中に不動産や株式がある場合、いったい「いくら」のものとして評価するのか、又は葬儀費用の扱いはどうなるのかなど、検討しなければならないことが多いうえに、1つ1つについて、専門的知識を要求されることも多いです。

そのため、相続税申告については、一般的には専門家にご相談される方が多いのではないかと思います。

ただし、今回は敢えてご自身で申告を行うことを念頭に、相続税申告の必要書類のうち、「相続税申告の際に取得する必要のある書類」について、一部ご紹介したいと思います。すべての必要書類をご紹介するのは分量的に難しいのですが、今回の記事をきっかけに、相続税申告について少しでも興味を持って頂ければと思います。

1.預貯金に関する書類

(1)書類一覧
書類名 取得できる人  取得できる場所  取得費用 注意事項
残高証明書 相続人や遺言執行者 口座のある金融機関の窓口 手数料は金融機関により異なる。 相続開始日現在の残高を依頼する。
亡くなった方名義の通帳 自宅に保管してある場合。 相続開始日前後の記帳がされているもの。
または取引履歴 相続人 口座のある金融機関の窓口 手数料は金融機関により異なる。 通帳がない場合に依頼する。
亡くなった方の家族名義の通帳 各家庭に保管がある場合。 通帳にあるお金の出どころが家族出身の収入の場合は不要。
定期預金証書 自宅に保管がある場合。家族名義のものも確認する。 通帳式と証書式があり、証書式の場合に必要である。
利息計算書 相続人や遺言執行者 口座のある金融機関の窓口 手数料は金融機関により異なる 定期預金があれば必要。普通預金は不要。

 

(2)書類を集める上でのポイント

①取引していた金融機関がわからない場合
通帳やキャッシュカード、証書等が自宅にないか確認してみてください。

②ネット銀行
亡くなった方のパソコンやスマートフォンを調べ、インターネット上のお気に入りにネット銀行のホームページが登録されていないか確認してください。IDやパスワードが不明でログインできない場合も、電話や郵送などで口座保有の有無を問い合わせてみてください。

③残高証明書
相続開始日(亡くなった日)現在の残高証明書を発行してもらう必要があります。外貨預金の場合、円に換算する必要があるため、対顧客直物電信買相場(TTB)に記載してもらいましょう。取引店以外で手続することもできますが、一般的には証明書の発行には日数がかかります。

④亡くなった方名義の通帳
税務調査では税務署が一番細かく調べる点なので、過去6年分程度は必ず入手してください。

⑤取引履歴
過去の通帳が見つからない場合に、通帳と同じ情報が記載されている取引履歴の発行を金融機関に依頼してください。発行には日数や費用がかかりますが、亡くなった方の相続人であれば単独で発行を依頼することができます。

⑥定期預金・定期貯金
定期預金・定期貯金は、亡くなった日に解約したと仮定した場合の利息も相続税の対象になるので、利息計算書を発行しなければなりません。残高証明書に既経過利息を記載してもらう形でも構いません。ただし、普通預金や通常貯金の場合は不要です。

⑦相続人が複数いても単独(1人だけ)で行える手続き
・口座の有無の調査
・残高証明書・取引履歴・利息計算書の発行依頼
は、相続人のうちの1人が単独でできます。なお、相続人全員の署名や印鑑なども必要ありません。

⑧亡くなった方の家族名義の通帳
家族名義の通帳にあるお金が、亡くなった方の収入によるもので、かつ、家族へ生前に贈与されたものでない場合、そのお金は亡くなった方の相続財産として相続税の対象になります。それを確認するために、家族名義の通帳が必要になることがあります。

相続税の申告上、預貯金や株式などの金融資産は、もともとのお金の出どころ(原資)は誰かという観点から、実質的な所有者を判断します。「誰の名義になっているか」ということは重視されません。そのため、亡くなった方の家族名義の金融資産についても、その資産が家族自身が外で働いて稼いだお金、実家から相続したお金、亡くなった方から生前に贈与されたお金などではない場合、実質的な所有者が亡くなった方である「名義預金・名義株」ではないか、検討しなければなりません。

2.現金に関する書類

(1)書類一覧
書類名 取得できる人  取得できる場所  取得費用 注意事項
亡くなった方名義の通帳 自宅に保管してある場合。 相続開始日前後の記帳がされているもの。
または取引履歴 相続人 口座のある金融機関の窓口 手数料は金融機関により異なる。 通帳がない場合に依頼する。
手許現金の金額を記したメモ 相続開始日に自宅や財布、金庫等にあったと思われる金額を、保管場所ごとの一覧表にする。  通帳からの出金記録と照らし合わせる。
医療費の領収書 病院等 無料。ただし、再発行には手数料がかかることがある。 支払日を確認する。
葬式費用の領収書または金額を書いたメモ  領収書のもらえないお布施や心づけはメモでよい。
貸金庫内の保管物のリスト  相続人等が金庫内の写真を撮り、リストを作る。 現金その他の相続財産が保管されていないかも確認する。

貸金庫内の保管物のリスト 相続人等が金庫内の写真を撮り、リストを作る。 現金その他の相続財産が保管されていないかも確認する。

(2)書類を集める上でのポイント

①現金について(資産を通帳等で保管している場合)
一般的な家庭では、自宅に多額の現金を保管することは少ないと思います。相続開始日に、自宅や財布にあったと思われる金額を概算で相続税申告に含めれば、それで問題はありません。
ただし、例えば、容体が悪化してから亡くなるまでの間に、亡くなった方ではなくその家族が、通帳から多額の現金を引き出しているケースは少なくないと思います。引き出した現金を亡くなった方の生活費や医療費として、生前に使い切った場合には問題はありません。しかし、死後に必要となる葬式費用や家族の生活費として引き出していた場合、そのお金は相続開始日の時点では現金として手元にあったはずなので、現金残高に含まなければいけません。

②現金ついて(多額の現金を保管している家庭の場合)
通帳から引き出したお金は、その後、①使う、②別の財産を買う、③現金のまま取っておく、のいずれかになると思います。税務署は、亡くなった方の通帳の生前の出勤記録をチェックし、通帳から出たお金がどのように使われたかを確認します。②や③の場合、別の財産や現金として相続税申告に含めてください。①の場合は、引き出したお金の使い道を税務署に説明できるよう、わかる範囲でまとめておいたほうがよいでしょう。亡くなった方の通帳の生前の入出金記録を、過去6年分必ず入手してください。

③貸金庫
貸金庫には、遺言や不動産の権利証などの遺産を探すための手がかりや、現金や金の地金、宝飾品等、遺産そのものが保管されている場合があります。貸金庫の利用料が口座引き落としの場合が多いので、通帳の引き落とし記録を確認して、契約や利用の有無を調べてみてください。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。相続税申告の必要書類のうち、家屋に関する書類や事業用財産に関する書類に限定しても、このように多くの書類が必要になります。今回をきっかけに、相続税申告の必要書類や手続の流れについて、調べてみるのもいいかもしれません。
なお、上記以外の書類や手続きについては、機会がありましたら別の記事で取り扱います。