相続税

相続に関する法律と税金③~贈与した財産についてはどう評価するの?~

2021.03.14
相続に関する法律と税金③~贈与した財産についてはどう評価するの?~

相続に関する問題で、弁護士が扱う「民法」と、税理士が扱う「相続税法」という異なる法律を使用することによる弁護士と税理士での判断の違いについて、これまで何度かご説明させていただいておりますが、今回は、贈与に関する法律と税金のお話をさせていただきます。

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1 はじめに

相続法の改正や、終活という言葉が流行するようになってきたことにより、相続に関する様々なサイト等で、相続税と贈与に関する情報を記載したサイトを非常に多く見かけます。

しかし、相続税の対策のために、生前の贈与を活用することのみしか記載されておらず、贈与が遺産分割等にどのような影響を及ぼすかについてまで言及されているサイトはほとんぼありません。

当事務所は弁護士のみならず、税理士も在籍しているためこうした贈与についても税理士の観点のみならず弁護士の観点からも関連付けて情報を発信できるため、本日は、贈与した財産についての評価についてご説明させていただきます。

2.遺産分割では特別受益が問題に

遺産分割の原則ですが、遺産分割の対象となるのは、原則として死亡時の財産が対象になります。
預貯金であれば死亡時の残高を基準に遺産分割を行うことになります。

しかし、相続人のうち1人だけ、生前に被相続人から多額の援助を受けておきながら、亡くなった際、他の相続人と同じだけ相続することができることになると、他の相続人が納得していない場合、非常ん不公平な遺産分割となってしまいます。

そこで、民法903条1項では、「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」と規定しており、特別受益について記載しています。

特別受益が認められる場合には、被相続人の死亡時点での相続財産に、その特別受益の額(贈与の額)を加算(「持ち戻し」といいます。)した金額を、相続人間で分割し、贈与を受けた人は、分割した金額から特別受益の額を差し引くというという取扱いになります。

どういった場合に贈与が特別受益に該当するかについては、別の機会にご説明させていただきますが、注意しなけれらばならないポイントとしては、特別受益に関しては、いつなされたかという時間的な要件は存在せず、原則として何十年以上前であっても特別受益に該当する贈与等であれば、適用になります。
この特別受益が問題になる際には、親族間での贈与であるため、贈与の事実が証拠などによって認定することが難しい点にあります。

では、特別受益を認められたくない相続人は、贈与の事実がばれないように手渡し等で、贈与をすればいいのかというと、後ほど説明しますが、そういうことを行っている場合には、今度は相続税の観点から思わぬリスクにされされることになりかねません。

3.贈与と税金の問題点

まず、親族間などであっても、原則として110万円を越える贈与があった場合には、贈与税の申告及び納税の義務がありますが、贈与税の申告を行わず、贈与税を支払わずにいた場合、その期間が6年(若しくは7年)経過した場合には、贈与税は時効により消滅すると規定されています(相続税法36条1項、4項等)。

すなわち、贈与から7年経過した場合には贈与税を支払う義務はなくなるのです。
もっとも、7年以上経過した贈与であっても、家族間の贈与の場合には、契約書などを作成しないケースがほとんどであり、かつ、多額の金額のやり取りを行うことへの負い目からか、口座から引き出して、上記のとおり手渡しで渡すことが少なくないため、そもそも贈与の事実を税務署へ証明することが困難となるケースが少なくありません。

相続税についての税務調査で入った税務署の職員は、贈与に関する資料などがない場合、贈与そのものの事実を否定し、引き出された預金の金額について、相続財産に該当すると判断します。

相続税の申告をする際、仮に、7年以上前の贈与なので、一切考慮せずに、相続税の申告を行った場合、7年以上前の贈与については、相続財産の申告漏れという判断がなされてしまう可能性があります。

このように、贈与について、特別受益等を警戒して、はきちんと形に残る方法で行わない場合には、後の相続税申告の際に、余計なトラブルを引き起すリスクが生じため、おすすめすることはできません。

また、簡単な相続税の節税方法として、暦年贈与、すなわち、毎年、贈与税が発生しない範囲で贈与を行い、相続財産を減らすという節税方法がサイトなどで多く紹介されていますが、この暦年贈与についても、贈与がされたことがきちんと分かる形で行わなければ、税務調査で否認される危険性を有しているので注意が必要です。

4.まとめ

上記のとおり、贈与と相続に関する問題は、弁護士の分野、税理士の分野のいずれにおいても非常に重要かつ複雑な問題が存在します。
生前贈与はきちんとした形で行えば、節税の効果があることは間違いありませんが、相続税、贈与税の問題や、特別受益の問題を解決するためには、法律のみならず、税金の知識を有する専門家に相談する必要性があります。

上記のとおり、当事務所は、弁護士のみならず、税理士も在籍しているため、生前贈与についても適切にお手伝いさせていただくことができるため、相続についてお悩みの方は是非お気軽にご相談ください。