succession

事業承継

親族内承継について

2019.08.07

事業承継の方法の中で、経営者の子供や娘婿などの親族を後継者とする親族内承継は、最もイメージしやすい承継の形だといえるでしょう。
社内外の関係者からも心情的に受け入れられやすく、早期に誰を後継者とするかが決まっていれば、準備期間を長く確保することができるというメリットもあります。今回は、親族内承継についてご説明いたします。

1 後継者教育

親族の中で、誰が後継者となるかというのはしばしば揉める問題です。兄弟間等で争いが起きないためには、兄弟それぞれに後継者となる意向があるか前もって確認しておき、もし意向がありながらも後継者としない親族がいる場合には、理解を得られるよう、十分に説明しておくことが重要です。

後継者を決めると、後継者教育を進めることになります。自社で勤務させる場合には、現場において経験と知識を習得し、他の従業員と信頼関係を築くことが期待できます。
さらに、自社で責任のある立場に置くことで責任感を持たせたり、現経営者が直接指導することでノウハウや経営理念を引き継ぐことも考えられます。

また、同業他社や取引先で勤務をすることで自社を客観的に見る視点を養うことも重要ですし、中小企業大学校や商工会議所で後継者対象のプログラムが開催されているため、それを受講するのも1つの方法です。

2 株式の集中

事業承継を行う際には、株式を後継者に異動させることになります。その方法については次項で詳しくご説明しますが、後継者に株式を異動させる前提として、現経営者に株式を集中させることが不可欠となります。

もし株式が複数の株主に分散している場合には、後継者が株式を承継しても安定した経営を行うことが難しくなるからです。株主総会は、過半数の議決権を有していれば普通決議を行うことができるため、過半数を保有していれば十分と考えられる方もおられるかもしれません。
しかし、特殊決議を行うためには4分の3の議決権が必要となりますし、少数株主であっても株主提案権や各種の閲覧請求権を有することになります。

そのため、中小企業であれば全ての株式を取得しておくことが重要です。代々続く企業であれば、相続等により株式が分散していることも予想されます。株式が分散している場合には、以下のような方法を用いて株式を現経営者に集中させましょう。

① 合意による取得

株主と、保有株式を譲渡する合意を締結して株式を買い取る方法です。現経営者と株主が友好的な関係であれば、スムーズに進めることができます。
この場合、買取資金が必要となるため、資金が足りるかどうかも検討する必要があります。
中小企業は譲渡制限株式を採用していることが多いですが、その場合は譲渡承認手続を行います。

② 会社による売渡請求権の行使

定款に記載があれば、譲渡制限株式を保有する株主に相続が発生した際に、会社への株式の売渡しを請求することができます。

③ 議決権制限株式

議決権制限株式を発行し、その株式を有する株主の議決権行使を制限する方法もあります。この場合は、議決権制限株式が分散していても、当該株式を保有する株主は議決権を有しないため、現経営者に経営権が集中させることが可能となります。

ただし、発行済み株式のうち,議決権制限株式以外の株式の全てを、現経営者が保有していることが必要となります。新たに発行するだけではなく、発行済み株式を議決権制限株式に変更することも可能ですが、その際は定款変更の手続が必要です。

④ 特別支配株主の株式等売渡請求権の利用

現経営者が株式の90%以上を保有していて、残りの株式も取得したいと考えるときに有用な方法です。会社の議決権の90%を所有する特別支配株主は、公正な価額を提示して、株主全員に対して所有する株式の全部を特別支配株主に売り渡すよう請求できます。
この制度を用いると、現経営者の一方的な意思表示で株式を買い取ることができます。

⑤ 単元株制度

株式が分散したままでも、経営権を現経営者に集中させる方法として、単元株制度があります。これは、一定の数の株式を1単元とし、1単元の株式について1個の議決権を認める制度です。
例えば、1,000株を1単元とすれば、500株を有する株主は議決権を行使できなくなります。

⑥ その他

他にも、株式併合を行い、1株未満の端数を会社が買い取る方法や、第三者割当てによる新株発行を行って現経営者の保有比率を上げる方法などがあります。
株式の集中は様々な方法が選択可能ですので、専門家に相談しましょう。

3 承継方法

後継者に株式を異動させるには、以下のような方法があります。

① 売買

現経営者から後継者に、株式を売却する方法です。企業が株式譲渡制限会社であれば、譲渡承認手続も必要となります。
注意点として、親族内承継では譲渡価格を時価よりも低く設定する傾向がありますが、著しく低い価格にしてしまうと、時価との差額が贈与とみなされてしまいます。贈与税課税の可能性もありますので、税務の面でも専門家に相談しておきましょう。

② 生前贈与

現経営者から後継者に、株式の贈与を行う方法です。
贈与税の申告が必要となるため、贈与のタイミングや贈与額等については専門家に相談し、中長期的な計画を立てておくことが重要です。

③ 遺言

もし現経営者の生前に後継者へ株式を取得させることができない事情がある場合には、遺言によって承継を行います。
事業承継では確実な財産取得が不可欠であるため、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言を作成し、遺言執行者も定めておきましょう。株式の相続手続をスムーズに行うためには、遺言執行者として専門家を就けておくことがお勧めです。
なお、遺言による株式取得の場合には、相続税の申告が必要となります。

④ 株式信託

信託を用いて事業承継を行う方法もあります。例えば、現経営者が委託者となり、自社の株式に信託を設定し、後継者を受益者とすることができます。
信託を設定する際に、現経営者に議決権行使の指図権等、実質的な会社の経営権を設定しておけば、現経営者が経営権を有したまま後継者に自社株式を承継することも可能です。
信託終了のタイミングは、信託設定から数年を経過したとき、現経営者が死亡したとき等、事業承継のスケジュールによって自由に設計することができます。

4 まとめ

今回は親族内承継についてご説明しました。会社を子供に引き継ぐというのはよくあることですが、様々な準備が必要となってきます。
贈与税や相続税等の税金対策も重要となり、数年間をかけて準備を進めていかなければなりません。
事業承継をお考えの方は、早期に専門家に相談することをお勧めします。

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