不動産

区分所有者の権利と義務

2019.03.04

前回、区分所有建物について説明する中で、区分所有建物は「専有部分」と「共用部分」に分けられると解説しました。
当然ながら建物は複数の所有者が一緒に使用するものなので、それぞれの部分に応じたルールが定められています。

前回の記事を読むにはこちらから→
「マンションの『区分所有』って何のこと?」

1.専有部分の利用・処分

一般的に、物の所有者の権利については、「法令の制限内において、自由にその所有者の使用、収益及び処分をする権利を有する(民法206条)」とされています。
ところが区分所有法では、区分所有者の権利として以下のような独自の規定を設けています。

(1) 建物の使用等について

法6条1項「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し、区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」

これに違反した場合、一定の要件のもとで、違反行為の停止などの請求(同57条)や専有部分の使用禁止請求(同58条)区分所有権の競売請求(同59条)を受けることもあり得ます。区分所有建物でない建物の所有者が近隣住民に迷惑をかけても、特段の事情のない限り不法行為責任を負うにすぎないことと対比すると、区分所有権者の所有権は大幅に制限されているといえます。

法30条1項「建物又はその敷地若しくは付属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる」

もしマンション等に居住したことがあるならば、下記のような制限が賃貸借契約書に書いてあることを見たことがあるのではないでしょうか?

・室内でのペットの飼育の禁止   ・住居以外の目的での使用の禁止

これが、正に法30条1項にある、建物の使用に関して区分所有法に規定が無く、「規約で定めることができる」事項の典型例です。
専有部分の所有者は、その専有部分(部屋の使用等)を一軒家と同様に自由に使用して良い訳ではありません。規約で定められる事項の範囲として専有部分の使用等に関する事項も一定の範囲で含まれるものと解釈されています。
また、専有部分の使用について規約に違反した場合には、区分所有法6条1項違反となります。

(2) 処分に関する主な制限

民法の所有権と同様に、区分所有権も自由に売却等の処分をすることかできます。
ただし、共用部分との分離処分は認められていないため、専用部分のみを処分した場合、共用部分も専用部分の処分に従うものとされています(法15条1項)。なお、共用分のみを処分した場合、その処分は無効となります(同条2項)。

2.共用部分の使用・処分

(1)共用部分

共用部分は原則として区分所有者の共有に属しますが(法11条1項)、その持分割合は、規約に特段の定めがない限り、原則として各所有者の有する専有部分の床面積の割合に準じています(法14条)。
専有部分の面積については、建物の全部事項証明書(登記簿)を確認すると良いでしょう。

(2) 共用部分の管理・変更

共用部分の共有関係については、民法上の規定が排除され(法12条)、区分所有法独自のルールによって規律されます。
それぞれの条文について、区分所有法と民法を比較していきます。

区分所有法 民法
13条「各共有者は、共用部分をその用方に従って使用することができる。」 249条「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」
17条「共用部分の変更は、区分所有者及び議決権の・・・集会の決議で決する。」
18条「共用部分の管理に関する事項は、・・・集会の決議で決する。」
256条「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。」
30条1項「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」 206条「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」

①民法は「持分に応じた使用」しか認めていないことに対し、区分所有法では「各共有者」が「共用部分」を使用することができるという点が大きく異なっています。
②民法では共有物を「いつでも」分割請求することが認められていますが、区分所有法では、共用部分に関わる部分については「集団決議で」決定することが求められています。
③これは1.の(1)建物の使用等についての説明で触れた条文ですが、専有部分に限らず、共有部分の用法に制限が加えられている例も多く見られます。

(3) 費用の負担

法19条「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」

例えば、廊下の窓ガラスが割れて修理が必要となった場合の費用負担を考えてみましょう。
廊下は、一般的に共有部分に属します。よって、規約に定めのない限りは、その建物の区分所有者全員がその修理費用を負担しなければなりません。もし特定の区分所有者がこれを支出した時には、他の区分所有者は自分の負担割合に応じて、支出者に立替金の返還をする必要があります。

3.専用使用権

(1)専用使用権とは

法30条1項「建物又はその敷地若しくは付属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる」

さて、この条文は今回何度目かの登場となりますが、「専用使用権」を理解する上では、「規約で定めることができる」という部分に着目します。
ここでいう「規約」では、前述した1専有部分や2共用部分の使用でも触れたように、区分所有法に規定のない項目について定めることができます。

建物の中には、共用部分に属しながら特定の区分所有者しか使用しない(若しくは他の所有者は使用できない)部分が存在します。そういった部分について、特定の区分所有者、又は特定の第三者に対し、排他的に使用する権利を与えることを「専用使用権」というのです。
具体例を挙げて見ていきましょう。

①ベランダ・バルコニー
多くの場合、ベランダやバルコニーは共用部分に属します。しかしながら一方で、世帯ごとに区切られていることが一般的であり、区分所有者が勝手に他の世帯のベランダに立ち入ることを認めるわけにもいきません。よって、多くの規約では、ベランダやバルコニーについては、これに隣接する専有部分の区分所有者に対し専用使用権を認めているのです。

②駐車場
区分所有建物内やその敷地の中に駐車場を設けている場合、特定の区分所有者に専用使用権を認めている例も多いようです。

なお専用使用権については、その条件設定や条件の変更の可否をめぐって紛争化するケースも少なくありません。

4.管理費用の負担

区分所有者は、それぞれが建物の管理費や修繕積立金を負担していることがほとんどですが、これらの費用の支払い義務・金額については、区分所有者らによる集会、又は規約によって定められています(法18条1項、30条1項)。