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物件の瑕疵~目に見えない瑕疵があった場合

2019.05.30

Q.私は現在、妻と小学生の子供2人の4人家族ですが、家族全員で住むためにマンションを購入することにしました。ところが契約後に、前の所有者の家族が、室内で自殺をしていたことが分かりました。このような部屋に家族で入居することは躊躇われるため、契約を解除して支払い済みの代金を返還してもらいたいのですが、このような請求は可能なのでしょうか?

A.マンションを購入する際に問題になるのは、前回(マンション設備・建築の適法性に関する売主の説明義務)でご説明したような、「マンション本体の構造に関わるような瑕疵」だけではありません。
最初に挙げたいわゆる
例①:自殺物件
であったり、
例②:暴力団員のマンションへの出入りの疑い
などのように、その物件に居住することを躊躇ってしまう目に見えない事情が潜んでいるケースもあります。

契約前の段階でこれらの事情が分かっていれば、契約締結を回避することもできますが、代金を支払った後にこれらの事情が判明し、「やはりこのマンションの購入は止めたい」と考えた場合に、どのような根拠に基づいて契約解除を請求することが出来るのかを考えていきます。

1 自殺物件のケース

(1)問題の所在

「自殺物件であった」という事実自体は、売買契約の目的であるマンションの物理的な欠陥ではなく、物理的には居住が可能です。そのため、このような場合でも売買の目的物の欠陥(瑕疵)と評価できるのでしょうか。売買の目的物の欠陥(瑕疵)と評価できれば、買主は売主に対し、瑕疵担保責任(民法570条)に基づき、契約を解除することができます。そこで、「自殺物件であった」というような心理的な嫌悪感を、「物件の瑕疵」といえるかどうかが問題となります。

(2)「自殺物件であった」ことは「物件の瑕疵」に該当するのか

民法570条が前提としている「瑕疵」とは、
・客観的に目的物が通常有すべき性質・性能を有していない物理的欠陥
だけではなく、
・目的物の通常の用法に従って利用することが心理的に妨げられる主観的な欠陥
も含むものと理解されています。

瑕疵担保責任の根拠は、売買の目的物に支払われる対価が、目的物の交換価値・利用価値と等価性を保ち、当事者間の衡平を図ることにあります。そのため、目的物が一部損傷しているといった「物理的欠陥」が無かったとしても、一般にその目的物を買うことを控えるような事情が存在していた場合には、交換価値の下落と評価でき、瑕疵担保責任が認められケースがあります。

よって、売買対象の不動産において、自殺や殺人の発生などの嫌悪される事情が存在した場合、買主が当該事情を知れば、その不動産の購入を敬遠するケースが一般的に予想されるため、「瑕疵」に該当すると考えられます。

しかしながら、買主によっては自殺物件であることをあまり気にしない場合もあります。つまり、同じ自殺物件について、一方では契約解除を望む人もいれば、他方でそのまま購入をする人もおり、個々人の主観によって結論が大きく左右されてしまいます。このように、買主の主観によって売買契約の成否が左右されると、円滑な不動産取引が阻害されてしまうため、瑕疵担保責任の有無を判断するにあたっては、一定の制約が必要になります。

そこで、裁判例では、自殺があった等の心理的欠陥が「瑕疵に該当する」とするためには、買主本人のみだけではなく、一般の人にとっても住み心地の良さを欠くと感じることに合理性があると判断される程度であることが要求されています。

(3)裁判例

横浜地判平成元・9・7では、例①と同様に、小学生の子2人を含む家族4人が居住するために購入したマンションに「自殺物件であった」という瑕疵があった場合について以下のように判示し、瑕疵担保責任による契約の解除を認めました。
「単に買主において・・・(自殺があったという)建物の居住を好まないだけでは足らず、それが通常一般人において、買主の立場に置かれた場合、(自殺があったという)事由があれば、住み心地の良さを欠き、居住の用に適さないと感ずることに合理性があると判断される程度に至ったものであることを必要とする」

「原告らは、小学生の子供2名との4人家族で永続的な居住の用に供するために本件建物を購入したものであって、・・・本件建物に・・・(購入の)6年前に縊首自殺があり、しかも、その後も(自殺をした者の)家族が居住しているものであり、本件建物を、他の・・・(こういった事情の)無い建物と同様に買い受けるということは通常考えられないことであり、右居住目的から見て、通常人において右自殺の事情を知ったうえで買受けたのであればともかく、子供も含めた家族で永続的な居住の用に供することは甚だ妥当性を欠くことは明らか」である。

2 暴力団員の出入りがあるケース

(1)問題の所在

もしも自分が居住する予定で購入を検討している物件に、実は暴力団員の出入りがあったと判明した場合、何かしらのトラブルに巻き込まれないか心配になり、購入の取り止めを希望される方もいると思います。
そこで、「暴力団員の出入りがあること」も、「自殺物件であること」と同じく目に見えない欠陥(いわゆる「心理的欠陥」)として、瑕疵担保責任(民法570条)に基づき売買契約を解除できるか否かが問題になります。

(2)裁判例

それでは、実際の判例を見て見ましょう。

【事案】
原告が居住目的でマンションを購入したところ、同じマンション内に暴力団幹部が所有者となっている部屋があり、組合員の出入りが判明したため、売主に対し責任追及を行った。
【判旨】
「居住環境として通常人にとって平穏な生活を乱すべき環境が、売買契約において・・・一時的ではない属性として備わっている場合には・・・瑕疵にあたる」。また、暴力団幹部が、マンションの管理室に私物を置いて物置として使用する等、マンションの共用部分を私物化する等の迷惑行為を継続していたこと、マンションの敷地内及び前面道路において、大人数で長期間にわたり飲食し騒ぐ等でマンションの区分所有者らに迷惑をかけている状態は、通常人にとって明らかに住み心地の良さを欠く状態に至っており、また、係る状態は一時的な状態とは言えないとして瑕疵があると判断しました。

そして、瑕疵担保責任に基づき、瑕疵を前提とした本件不動産の価値と実際の売買代金との差額について損害賠償をすべきとしましたが、居住の目的に用いられない程度の瑕疵であるとは言えないとして、契約の解除は否定しています。

3 まとめ

今回は「自殺物件であること」「暴力団員の出入りがあること」を例にご説明しましたが、他にも、「墓地の隣であったこと」「産廃処理場の隣であったこと」等、様々な心理的瑕疵が想定されます。

いずれにせよ、前回のような物理的欠陥ではないために、買主側が主張する欠陥が実際に「瑕疵」として認められるか否かは個別案件によって左右されやすいものなので、何を根拠にどういった主張をすれば認められるのか等、弁護士などの専門家に一度相談してみると良いでしょう。