相続手続き

民法改正による自筆証書遺言の要件緩和

2021.06.13
民法改正による自筆証書遺言の要件緩和

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号。平成30年7月6日成立。)により、自筆証書遺言作成の要件を一部緩和する法律が平成31年1月13日に施行されました。

今回は、民法改正により緩和された自筆証書遺言作成の要件と、改正に至った経緯についてご説明します。

1.改正により緩和された内容

民法第968条1項は、自筆証書遺言を作成する場合、遺言者が遺言書の全文・日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならないものと定めています。

今回の改正によって新設された同条2項は、自筆証書遺言を作成し遺言に相続財産の目録(以下「財産目録」といいます。)を添付する場合、例外的に遺言事項と添付書類である財産目録とを分け、遺言事項については従前どおりに自書を求める代わりに、財産目録については自書しなくてもよいこととなりました。

これにより、財産目録についてはパソコンでの作成や遺言者以外の者による代筆が可能となり、また不動産の登記事項証明書、預貯金通帳の写し等を添付しそれを目録として使用する方法も可能となりました。

その上で、新法では、自書によらない財産目録の各頁に遺言者の署名・捺印をすること、特に自書によらない記載が両面に及ぶ場合についてはその両面に遺言者の署名・捺印をすることを要件としています。これは、自筆証書遺言作成の要件の緩和により、発生が懸念される偽造・現像を防止するためです。

自筆証書遺言に財産目録を添付する方法について、特別な決まりはありませんが、今回の改正は自筆証書遺言に財産目録を「添付」する場合に関するものであるため、自書による遺言事項が記載された用紙に、自書によらない財産目録を記載することはできません。遺言事項が記載された用紙とは別に、自書によらない財産目録を準備する必要があります。

また、新法968条3項は、自筆証書遺言の加除その他の変更は遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記してこれに署名・捺印しなければならないという従前の決まりを、自書によらない財産目録についても同様に行わなければその効力を生じないこととしています。

2.実際に自筆証書遺言の作成例

実際の自筆証書遺言の作成例は、下記の通りです。遺言書の全文・日付及び氏名を自書し、捺印する必要があります。

自書によらない財産目録を添付する場合、以下の通り目録部分はパソコンでの作成又は遺言者以外の者の代筆が可能です。各頁に必ず遺言者による署名・捺印が必要で、頁が複数にわたる場合は各頁に署名・捺印が必要とされています。

3.民法改正に至った経緯

これまで、自筆証書遺言については遺言者の自書と要式性が厳格に定められてきました。
公正証書遺言の場合は、公証人が遺言書の作成過程に介在し遺言者の意思を確認して作成しますが、自筆証書遺言の場合は遺言者が単独で自由に作成することができるため、遺言書の内容と遺言者の真意を明確にする必要があります。

遺言書は遺言者の死後に効力が生じるため、死後に本人に意思を確認することができないことから、民法では自筆証書遺言の要件を厳格に定めるとともに、相続開始時において自筆証書遺言の検認手続きが義務付けられています。

しかし、自筆証書遺言の要件があまりに厳格であることは、簡易に作成できることが利点の自筆証書遺言の欠点でもあります。高齢化社会の現代において、自筆証書遺言の要件があまりに厳格すぎることは、高齢者が人生の最終局面で自らの意思を遺言書に残そうとした際に、作成する行為を重荷に感じて敬遠してしまったり、せっかく作成した遺言書が無効になってしまったりする原因にもなりかねません。

そこで、今回の新法では、自筆証書遺言における過剰な規制を廃除し、その作成の促進を図るべく、財産目録については上記のとおり自書を求めないこととなりました。

4.まとめ

今回は、自筆証書遺言の要件緩和の概要とその経緯についてご紹介致しました。相続による紛争を防止するため、円満な相続手続きを行うことができるようにするために、遺言書を作成することは非常に有効な手段です。今回の改正により、長文を自筆することが難しい高齢の方や病気の方にとっても自筆証書遺言は作成しやすくなったため、ぜひ作成を検討してみてください。