相続手続き

法務局による自筆証書遺言の保管について

2021.03.29
法務局による自筆証書遺言の保管について

2018年7月に相続法が大きく改正され、この改正の1つとして自筆証書遺言を法務局で保管する制度が創設されました。

従来、自筆証書遺言は遺言者が自宅で保管するのが一般的でしたが、本制度により自筆証書遺言を法務局で保管することが可能となり、自筆証書遺言の保管方法に関しての問題点が大きく改善されました。

今回は、この制度が創設された経緯と手続きの流れについてご説明いたします。

1.創設された経緯

遺言書は、相続をめぐって相続人の間で紛争が発生するのを防止するために有用な手段です。
そして、自筆証書遺言は、自筆できれば遺言者本人のみで作成することができ、公正証書遺言と違って費用もかからないため、最も手軽で簡単な方法です。

しかし、遺言者本人が自宅で保管することが一般的のため、作成後に紛失してしまったり、相続人によって改竄又は隠蔽されたりするおそれもあります。

また、遺産分割の終了後に自筆証書遺言が発見され、相続人の間で紛争が長引いてしまう原因になる可能性もあります。
遺言者が公正証書遺言を作成した場合、公正証書遺言は作成後公証役場において厳重に保管されます。
また、作成時に遺言書の法的有効性について公証人が確認を行うため、遺言者死後の家庭裁判所による検認手続きが不要なこともあり、安全性が非常に高いです。

平成元年以降に作成された公正証書遺言については、公証役場の遺言検索システムによって検索をすることもできます。
このように公正証書遺言は安全度が高い一方で、作成費用が高いこと、手続きに時間がかかること、作成にあたって証人を用意する必要があること等のデメリットがあります。

そこで、自筆証書遺言のメリットを損なうことなく、保管方法に関しての問題点を解消するための方策として、法務局における自筆証書遺言保管制度が創設され、令和2年7月10日から施行されました(平成30年法律第73号)。
本制度によって、自筆証書遺言を法務局で安全に保管し、検認手続きを不要にするとともに、相続人が被相続人の死亡後速やかに自筆証書遺言の存在を認識し、内容を確認することができるようになりました。

2.自筆証書遺言保管制度によるメリット

自筆証書遺言保管制度を利用するメリットは以下の通りです。

①法務局で安全に保管される
従来の自筆証書遺言の場合、遺言者が自宅で保管することが一般的であったため、遺言書を誤って捨ててしまったりどこに保管していたか忘れたりといったトラブルが発生するおそれがありました。
本制度を利用することで、遺言者が遺言書を撤回しない限り、遺言者が亡くなるまで法務局で安全に保管することができるようになりました。

②検認手続きが不要
従来、自筆証書遺言は遺言者の死亡後、家庭裁判所で検認手続きを行う必要がありました。
検認手続きを行わないと、不動産の名義変更や預貯金の解約手続き等を行うことができず、検認の申し立てには費用も時間もかかるため、相続人の負担となっていました。
しかし、本制度の利用により検認手続きが不要となり、遺言者の死亡後速やかに相続手続きを行うことが可能となりました。

③費用が安い
本制度の申請から保管までにかかる費用は3,900円です。
公正証書遺言を作成する場合は財産に応じて手数料が異なるため、費用が高額になるケースもあります。
また、信託銀行等民間の遺言書保管サービス等を利用する場合、保管期間に応じて保管料がかかることが一般的です。
本制度では、申請の際の手数料の支払いのみで保管期間に応じた保管料がかからないため、誰でも手軽に利用することができます。

3.申請手続きの流れ

本制度の利用にあたっての手続きは、以下の流れとなります。

①遺言書の作成
遺言者は、自筆証書遺言を様式に沿って自ら作成します。
法務局では、遺言書が民法968条に定める方式を満たしているかの外形的な審査(全文、日付及び氏名の自書、押印の有無等)を行いますが、これは遺言書が申請者本人によって作成されたものであることを確認するにとどまり、その法的有効性について判断するものではありません。
遺言書作成においては、財産を特定するために財産目録を添付する方法が確実です。
財産目録は全て自書する必要はなく、預貯金の場合は通帳の写しを添付する方法や、不動産の場合は登記事項証明書の写しを添付する方法も認められています。

②申請書の作成及び保管申請の予約
遺言書を作成したら、保管申請をする管轄の法務局を確認します。
保管申請ができるのは、①遺言者の住所地、②遺言者の本籍地、③遺言者が所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局です。

本制度では、遺言書の保管申請に関する全ての手続きについて予約が必要とされているため、①法務局手続案内予約サービスの専用HPによる予約、②法務局への電話による予約、③法務局窓口における予約のいずれかの方法で予約を行います。
予約が完了したら、申請日までに以下の必要書類の準備を行います。

【必要書類】
・申請書(法務局窓口に備え付けられています。法務局のホームページからダウンロードすることもできます。)
・自筆証書遺言書(封筒は不要)
・遺言者の住民票の写し(3カ月以内)
・遺言者の本人確認書類(マイナンバー又は運転免許証等の身分証明書)
・手数料3,900円(収入印紙)

③保管の申請をする
保管申請の予約日になったら、法務局で保管申請手続きを行います。
保管申請手続きは遺言者本人のみで行う必要があり、家族や友人等の付添人は立ち会うことができません。
法務局の職員が遺言書及び必要書類を確認し、書類に不備がなければ審査に入ります。
審査が完了したら、遺言者の氏名・生年月日・法務局の名称及び保管番号が記載された保管証が交付され、手続きは終了となります。
保管証は、遺言書の閲覧や、保管申請の撤回、変更の届出をするときや、相続人が遺言書情報証明書の交付請求をする際に必要となります。

4.まとめ

今回は、法務局における自筆証書遺言保管制度についてご説明しました。
相続をめぐって相続人の間で紛争が発生することなく、相続人に確実に財産を託す方法として、遺言書は非常に有用な手段です。
法務局における自筆証書遺言保管制度についてご検討される際は、ぜひお近くの弁護士や専門家にご相談ください。