相続手続き

民法改正で相続はどう変わったの?押さえておくべきポイント ◆預貯金の仮払い制度◆

2021.03.18
民法改正で相続はどう変わったの?押さえておくべきポイント ◆預貯金の仮払い制度◆

40年ぶりの民法改正によって、相続に関する法律・制度が大きく変わっています。
前回は、特別受益の持ち戻し免除の推定についてご説明しました。
前回の記事はこちら
今回は、その続きとして、預貯金の仮払い制度について、具体的に説明をしていきます。
※この改正民法は、基本的に法律の施行日より後に発生した相続、つまり施行日より後に被相続人がお亡くなりになったケースでのみ適用されます。施行日より前に被相続人がお亡くなりになられたケースでは、あくまで改正前の民法が適用されることになりますので、ご注意ください。

1.前回のおさらい

【改正民法のポイント】
①配偶者居住権、配偶者短期居住権の新設
②特別受益の持戻し免除の意思表示の推定
③預貯金の仮払い制度の創設
④自筆証書遺言の方式の緩和、自筆証書保管制度の創設
⑤遺留分の算定方法の見直し、遺留分減殺請求の効力の見直し
⑥権利取得の対抗要件の見直し
⑦特別寄与料の新設

今回は、「預貯金の仮払い制度」について具体的に説明していきます。

2.亡くなった人の口座からお金を自由に下ろすことはできなかった

どなたかが亡くなられた場合、残されたご家族は悲しみに浸る間もなく様々な手続きを行わなければいけません。
通夜、葬儀の手配、役所への届出などに加えて、病院に入院されていた場合は病院への費用、施設に入居されていた場合はその費用など、様々なものの支払いも発生してきます。

急にお亡くなりになられた場合、ご家族の方で費用の用立てが難しい場合もあるでしょうから、「諸々の支払いにあてるためのお金を亡くなった人の口座から下ろしたい」と思われるでしょうが、預貯金口座は、名義人が亡くなったということが分かると、すぐに口座が凍結されてしまいますので、一度凍結してしまった後は、たとえご家族であっても自由に引き出しを行うことはできませんでした。

凍結後に払出を行うには、相続人全員の同意が必要でしたので、相続人全員で遺産分割協議を行ったうえで、その口座に入っている預貯金を相続人のうち誰が貰うのかを決めてから、銀行で手続きを行う必要がありました。

特別揉めることなくスムーズに遺産分割協議ができるご家族であれば、凍結してしまってもすぐに払い出しができていましたが、兄弟の仲が悪く話し合いができないなど、協議ができないご家族の場合、遺産分割が完了するまでに長い時間がかかり、その間預貯金の引き出しができずに、被相続人に関する支払いや日々の生活費に困られるケースもありました。

ただでさえ、ご家族の死で心が痛んでいるのに、それに加えて金銭面でも負担がかかってしまうとなると、残された家族は疲弊してしまいますよね。
そこを問題視して、創設されたのが、預貯金の仮払制度です。

3.預貯金の仮払制度ってなんでしょうか?

今回の民法改正で創設された預貯金の仮払制度とは、相続人間での遺産分割協議がまとまる前でも、一定額の範囲であれば家庭裁判所の関与なしに相続人単独で預貯金の引き出しができるという制度です。
一定額というのは、計算式で定められており、各相続人が引き出せる金額は以下の計算で算出されます。

相続開始時の預貯金金額×3分の1×その共同相続人の法定相続分

例えば、相続人が被相続人の配偶者と子2人で、預貯金が5400万円だった場合、5400万円×3分の1=1800万円で、この数字に配偶者と子供の法定相続分をそれぞれかけることになりますので、配偶者が引き出せる金額は1800万×2分の1=900万円、子どもたちが引き出せる金額は、1800万円×4分の1=450万円という計算になり、合計でこの金額までであれば、遺産分割前でも払出ができるようになりました。

ですが、ここで注意しておきたいのが、「金融機関ごとに引き出せる額は150万円が上限」ということです。
先ほどのケースですと、配偶者は900万円、子どもたちはそれぞれ450万円ずつ単独で引き出しが可能にはなるのですが、1つの金融機関からは150万円しか引き出しができないため、仮に被相続人が1つの金融機関の口座しかもっていなかった場合は、配偶者、子どもたちそれぞれ150万円までしか引き出しができないことになりますので、気を付けておきましょう。

4.仮払制度を使う上で注意すべきポイント

預貯金の仮払制度を使った場合に気を付けておかなければいけないのが、引き出した預貯金の使い道によっては、その後相続放棄ができなくなってしまう可能性があるということです。

預貯金の仮払で引き出したお金を、全額被相続人の葬儀代などの支払いにあてた場合はいいのですが、ご家族の生活費など被相続人以外のために使用した場合は、相続財産を処分したり使ったりしたということで単純承認(自己の財産として使ったからという理由で、相続の意思を表示したとされるもの。単純承認が認められると、相続放棄ができなくなる。)が成立してしまいます。

実際にお金を使っていなくても、ご自身の口座に預貯金を移動させたという事実で単純承認が成立してしまうこともあるので、被相続人に大きな借金がありそうなど、将来的に相続放棄をする可能性がある場合は、仮払制度を使われるかどうかは慎重に検討をされてください。

まとめ

遺産分割協議に時間がかかりそうな場合でも、一定額の預貯金を払出できるというのは家族にとっても便利な制度ではありますが、場合によっては、相続放棄ができなくなるなど相続方法の幅が狭まってしまうこともあるため、仮払い制度を使用した方が良いかどうかについて悩まれる場合には、一度専門家に相談してみることをお勧めします。