相続手続き

遺産分割協議の方法 ~ ①相続人の確定 ~

2021.02.20

亡くなった親族が遺言を残していなければ、多くの場合、避けては通れないのが遺産分割です。法定相続人が1人だけという場合を除けば、相続人同士で遺産分割の話合い(遺産分割協議)を行い、誰がどの遺産をどのように取得するかを決めることが多いでしょう。

しかし、「相続人同士で話し合う」といっても、誰が遺産分割協議に参加する資格があるのか、誰を参加させるべきであるのか、はっきりしないことも少なくありません。だからといって、一部の親族だけで遺産の分け方を決めてしまうと、それから何年も経って他の相続人が現れたときは、遺産分割協議を1からやり直さなければならなくなってしまいます。

そこで、本稿では、遺産分割協議の当事者となることのできる相続人はどのような人か、どのようにそれを確定させることができるかについて述べていきます。

なお、以下では、被相続人が有効な遺言を残していないことを前提とします。

 

<ケース>
今般、私Xの夫Aが亡くなりました。Aと妻である私との間に子はおらず、Aの両親、Aの弟B、Bの妻D、及びBとDの間の子Fは既に他界していますが、A及びBの妹であるC、それからBとDのもう1人の子Gは健在であり、C、Gとは普段から連絡を取り合う仲です。

他方、亡Fには妻子がいますが、遠方に居住しており、ここ数年は全く連絡を取っておらず、連絡先も分からなくなってしまいました。

また、Aには、B、Cの他にもう1人兄がいたという話を生前Aから聞いたことがありますが、若い頃にAの両親から勘当され、Aのその他の兄弟とも絶縁状態となっているようで、私は会ったことは一度もなく、C、Gも生死さえ知らないようです。

Aは遺言を残していませんでしたので、私とC、Gの3人で話し合ってAの遺産を分けてしまおうと考えていますが、何か問題があるでしょうか。

 

1 法定相続人とその優先順位(民法887~890条)

(0)配偶者

被相続人の配偶者は、離婚又は死別していなければ、常に相続人となります。
配偶者以外に法定相続人がいなければ、配偶者が全ての遺産を相続することとなりますし、被相続人の子や親がいれば、その者と同時に相続人となります。

(1)子

被相続人の子は、相続人となります。
被相続人よりも子の方が先に死亡していた場合は、その子(すなわち、被相続人の孫)が代わって相続人となります。これを「代襲相続」といい、代襲者(=孫)も死亡していたときは、更にその子(=曾孫)が代襲相続することになります。

(2)父母・祖父母(直系尊属)

被相続人に子がいなければ、被相続人の父母が、父母もいなければ祖父母が相続人となります。

(3)兄弟姉妹

被相続人に子、孫…も、また父母、祖父母…もいないときは、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
兄弟姉妹のうち既に死亡している者がいれば、その者の子(被相続人の甥・姪)が代わって相続人となります(代襲相続)。もっとも、この場合は、上記1の場合とは異なり、被相続人の甥・姪が既に死亡していたときは、更にその子に代襲相続が起こるということはありません。

2 相続人とならない者

反対に、形式上は法定相続人に該当しても、以下のように法定相続人とならない者もいます。これらの者は、遺産分割協議に関与させる必要はありません。

(1)相続放棄

被相続人が多額の債務を抱えていた疑いがあるなど、遺産を相続すると、プラスの財産よりも多くの債務を承継することとなる場合もあり得ます。そのような場合は、被相続人の死を知った時から3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述を行えば、相続放棄をすることが可能です。こうして、相続放棄をした者は、初めから相続人とはならなかったこととなります。

(2)相続欠格

被相続人等を故意に死亡させるなどして刑に処せられた者、詐欺又は強迫により被相続人に遺言の作成や遺言内容の変更をさせるなどした者、被相続人の遺言書の破棄、隠匿、偽造等をした者等、一定の行為をした者は、相続人となる資格を奪われます(民法891条)。

(3)廃除

被相続人が生前、子など相続人となるべき者が自身への虐待や重大な侮辱を加え、又は著しい非行があったことを理由に、家庭裁判所に申し立てて、予め相続人から除外しておく制度です(民法892条)。なお、遺言によっても廃除は可能です(同法893条)。

3 不在者・失踪者

法定相続人となる者の中に、行方が分からない者や連絡が付かない者がいても、その者を遺産分割協議から除外することはできません。

そのため、裁判所に不在者の財産の管理人を選任するよう請求し、選任された財産管理人を加えて遺産分割協議を行うこととなります(民法25条、28条)。

他方、不在者が、特段の事情もないのに不在者の生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、又は、戦地の臨んだり沈没した船舶中にいたりするなど死亡の原因となるような危難に遭遇した場合において、1年間生死不明であるとき(危難失踪)は、家庭裁判所に申立てを行い、「失踪宣告」をしてもらうことにより、その者は、前記各期間の満了時に死亡したものとみなされます(民法30~31条)。

この場合、死亡したとみなされる時点が被相続人の死亡時よりも前であれば、失踪宣告を受けた者は相続人とはならないため、遺産分割協議に加えなくとも良いこととなります。

4 相続人の調査、確定の手順

以上のルールに従い、全ての法定相続人を確定するには、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)、除籍謄本(除籍全部事項証明書)、改製原戸籍等の調査が必要です(戸籍法10条1項、120条1項)。

具体的には、被相続人の出生の記載のある除籍又は改製原戸籍から、被相続人の死亡の記載のある戸籍又は除籍謄本を取得し、各相続人の現在の戸籍にたどり着くまで調査することとなります。

そうして、それまでに判明していなかった新たな相続人がいることが判明したときは、戸籍の附票や住民票をも取り寄せることにより、現住所地を確認し、接触を試みることとなります。

<ケース>の例では、被相続人Aの妻であるXは相続人となります。AとXとの間に子はなく、Aの両親も他界しているとのことですから、Xとともに、Aの兄弟姉妹であるCは相続人となることになります。また、Cと同じくAの兄弟姉妹であるBは、Aの死亡時点で既に他界していますが、Bの子GがBに代わって代襲相続人となります。

これと同様、亡Fが代襲相続人となり得ることから、その代わりにFの妻子が代襲相続人となるようにも思われますが、兄弟姉妹が相続人となる場合、代襲は1回のみに限られ(=被相続人の甥・姪)、甥・姪が被相続人よりも先に死亡していた場合に、更にその子へと代襲が起こることはなく、代襲者(甥・姪)の配偶者も代襲相続人とはならないため、Fの妻子は相続人とはなりません。

他方、Aには生死不明な兄がおり、この兄が生きていれば、Aの相続人となり得ます。また、その他にもAの相続人となる者がいないかどうか確認するため、まずは、Aの戸籍謄本等を調査すべきこととなるでしょう。

その過程で、Aの兄弟の存在、家族構成及び死亡届の有無等をある程度把握することができますので、Aの兄の死亡が戸籍上確認できなければ、不在者財産管理人選任や失踪宣告の申立てを検討すべきこととなるでしょう。

また、Aの兄の死亡が戸籍上確認できれば、Aの子への代襲相続が発生しないかを確認し、Aの子が相続人となるのであれば、当該子と連絡を取り、遺産分割協議へ加えることが必要となるでしょう。

5 ポイント

遺産分割協議を行うに当たっては、共同相続人(複数の相続人がいる場合の各相続人のこと。)が誰であるかということを予め確定しておくことが非常に重要です。

遺産分割協議は共同相続人全員で行わなければならず、協議成立後、協議に関与できなかった相続人が現れて遺産の再分割を求めた場合には、協議が何年経っていても、原則としてこれに応じなければならなくなるからです。