相続手続き

遺産分割をできるだけ早期に解決したい…「相続分の譲渡」という選択肢

2021.02.12

「相続」という言葉は分かっていても、実際にどのようなことをするのかについてはあまりイメージが湧かないという方も多いのではないでしょうか。

「相続」で問題になることの1つとして、「亡くなった方の遺産をどうやって分けるのか」という問題があります。

遺言書がある場合には、基本的に遺言書通りに分けることになります。他方で、もし遺言書が無い場合には、相続人皆で話合いをしなければなりません。

この「遺産を分ける話合い」は、時に多くの相続人と行わなければなりません。しかし、そんなにしょっちゅう相続が発生するわけではありませんから、誰しもが普段から慣れていることではない上、たくさんの人と話し合うには時間もかかります。

お仕事をされている方は、ただでさえ忙しい日常生活の中で、普段は考えもしない遺産のことについて考え、その話合いを続けるのはとても大変です。

今回は、話し合う相手の人数を減らす方法として、「相続分の譲渡」という方法をご紹介します。上手く使えば、短時間で解決することもある方法です。

1 誰が相続人なのか

「父の死後、叔母を自宅に引き取り、最後までお世話をしましたが、叔母が亡くなってしまいました。遺産の整理をと考えているのですが、叔母には子どもはおらず、叔母の両親も既に他界しています。
兄弟が何人もいて、更に兄弟にはそれぞれ子が数人ずついるのですが、叔母の財産について誰と何を話し合ったらいいのでしょうか?」

このようなご相談に来られる方は多いです。

叔母様にはお子様はおらず、ご両親も既に他界されているということでした。
そうすると、相続人はご兄弟です。

ところが、ご兄弟(5人きょうだい)も既に全員亡くなっているため、更にその子(甥や姪)8人(相談者含む)が相続人になることがわかりました。

2 人数が多すぎて…

遺言書がない場合、相談者の方は、自分以外の7人全員と、叔母様の遺産をどのように分けるかについて、話合いをしなければなりません。

この話合いのことを「遺産分割協議」といいます。

例えば、叔母様が、自宅不動産を遺した場合、土地や建物の名義変更をするにも遺産分割協議を纏めなければなりません。また、預金を遺していた場合には、銀行預金はすぐに凍結され、預金口座を解約して中に残っている預金を払い戻すには、同じく遺産分割協議を纏めなければなりません。

そのため、Aさんとしては、叔母様の財産についての話合いを、7人全員と同時に行い、全員納得の上で一挙に話をつけなければならないことになります。
しかし1人や2人ならまだしも、これが7人全員での話合いともなると大変です。

例えば、「私は他の人よりも叔母に良くしてきたので、できるだけ多くの遺産が貰えるはずだ」と言い張った場合、なかなか話はつきません。また、何度も電話をしたり手紙を送ったりしているのに、全く連絡がつかない人もでてきました。こうなるともう大変です。

相談者の方は仕事をされていて使える時間も限られていましたので、結局解決に時間が掛かってしまいます。

3 「相続分の譲渡」という選択肢

こういう時に、「相続分の譲渡」という方法が有効な場合があります。

この方法は、各相続人と個別に交渉し、それぞれの相続人が持っている「相続分」を譲り受けることができる制度です。そうすることで、その相続人は話合いから「一抜け」できるため、相談者は、他の相続人とだけ話しを纏めればよいことになります。

つまり、7人全員と一挙に解決する必要はなく、各相続人と個別に話をし、相続分の譲渡に応じてくれた相続人を抜けさせることができるため、より話合いをコンパクトに進めることができるわけです。

4 相続分の譲渡の方法

相続分の譲渡をする場合、色々な方法があるのですが、

例えば、「相続分譲渡証書」という書類を作成し、署名と押印(実印)をしてもらい、印鑑証明書と一緒に返送してもらう方法があります(金融機関によっては「委任状」を必要とするところもありますので、委任状も併せて取得した方がいい場合もあります。)。

5 まとめ

先ほどの例では、相談者の方の代理人として交渉した結果、最終的に4人が話合いから抜けてくれることとなり、残りの3人と話合いをすればいいことになりました。

最初は8人全員で話合いをしなければならなかったところが、半分の4人で話合いをすればよくなったわけです。これにより先ほどの件では、最終的に4人で話合いをして、人数が少ない分話を進めやすくなり,無事早期に解決することができました。

実際にこの案件のように多くの方が相続分の譲渡に応じてくださることが多い訳ではありませんが、案件によっては全員が応じてくださることもあります。

少なくとも、1人でも話す相手が減るのであれば、それは大きなことではないでしょうか。

もし相続において、「話し合う相続人の人数が多くて大変かもしれない…」という場合には、「相続分の譲渡」について一度検討してみてもいいかもしれません。