相続手続き

遺産分割前には遺言書を確認しましょう

2021.02.06

相続が発生すると遺産分割を行わなくてはなりません。では、遺産分割を行う前に確認しておくべきことってないのでしょうか?

遺産分割とは、分け方が決まっていない財産をどのように分けるか相続人間で話し合うことを言います。つまり、分け方が決まっていれば遺産分割協議は必要ありませんので、遺言書が存在していれば遺産分割が必要ありませんね。

だとすれば、遺言書があるかないか確認してからでないと遺産分割には進めません。
では、遺言書に関してどのような点を確認しておけば良いのでしょうか?

1 遺言書の有無

まずは遺言書があるかないかを確認しなくてはなりません。
前提として、遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

自筆証書遺言の場合、現在は法務局にて自筆証書遺言の保管制度が始まっているため、法務局に保管されているケースもありますが、2020年7月に始まる制度ですので、まだ遺言書をご自宅で保管しているケースが大多数でしょう。

だとすれば自筆証書遺言が保管されている場所は、ご自宅や銀行の貸金庫など、ご本人の管理下になります。

次に公正証書遺言の場合は、公証役場で作成していますので、公証役場に公正証書遺言が保管されています。これは全国の公証役場に行けば遺言書検索システムで公正証書遺言の有無が確認できますので、公証役場で確認を行います。

つまり、ご自宅等になく、公証役場になく、法務局にもなければおそらく遺言書は存在しないでしょうから、そこまでは確認されてみることをお勧めします。

2 遺言書の有効性

遺言書は、法的に有効要件を満たしていなくては有効になりませんので、遺言書が見つかったとしても要件を満たしているかどうかの確認が必要です。

万が一要件を満たしていない場合は、法律上遺言と認められませんので、遺言書がない場合として遺産分割協議が必要となります。この点については、思いのほか有効要件を満たしていない遺言書が多く、意外と落とし穴となっておりますので自筆証書遺言の場合は気をつけて確認をされてみてください。

遺言書が有効であるためには、その全文・氏名・日付が自書されており、押印がなくてはなりません。遺言書を自筆で書かなければならない事は広く知られていますので、全文をパソコンで作成した遺言書などはあまり見受けられないものです。

また、氏名を書いてないと誰の遺言書か分かりませんので、やはり氏名はきちんと書かれているケースが多いです。ただ、日付が明確に書かれていないケースは結構ありますので、確認されてみてください。加えて、押印のない遺言書がかなり多いです。この押印は必ずしも実印でなくとも、認印でも構いませんので、そこはご注意ください。

以上の要件を満たしていなければ、そもそも遺言書として扱えませんので、以上の要件を満たしているかどうか遺言書を発見した人は確実に確認を取りましょう。

ただ、自筆証書遺言の場合は封がしてあるケースもありますので、その場合は家庭裁判所で検認手続きを受けて開封するルールとなっており、勝手に封を開けると過料の制裁がありますので、そこはお気をつけください。

3 遺言書の内容

遺言書が法的に有効要件を満たしていたとしても、その記載内容に不備があれば実際の手続きでは使えないケースも多々あります。では、具体的にどのような点を確認すれば良いでしょうか?

第一に、財産の記載方法です。財産が明確に特定できないとその後の預貯金の解約手続きや不動産登記等が行えないため、特定の口座が確認できるか、書かれている不動産が全国の不動産の中でピンポイントに1つの不動産と特定できるか、その辺が重要になります。よくあるのは、銀行名が書かれていても支店名が書かれておらず特定できないケースや、口座の種別が書かれていないために普通預金か定期預金か区別ができないケースです。

また、登記簿通りの記載がないため不動産が特定できず、登記ができないケースも見受けられます。不動産を記載する場合には、郵便を送る場合に使う住所(住居表示)とは異なる地番を記載しておく必要があります。

不動産について相続手続きを行う場合には登記の名義変更が必要ですが、これを行うためには登記簿が特定できなくてはなりません。そして、登記簿を特定するためには、地番が特定できなくてはなりませんが、住居表示で記載してしまうと住居表示と地番の対応関係が曖昧な土地に関しては、特定ができなくなってしまいます。遺言書を記載する場合には、登記簿通りにすべての情報を記載しましょう。

 

第二に、すべての財産が網羅できているかどうかです。すべての財産が書かれていない場合、遺言書の対象になっていない財産が存在する以上、それは分け方が決まっていませんので、結局は遺産分割協議が必要となります。

つまり、遺言書に記載されている財産については遺言書で相続手続きを行い、記載が漏れている財産については遺産分割協議で分割を行うという流れになります。

せっかく遺産分割協議を必要としないために遺言書を作成していますので、遺言書できちんとすべての財産を網羅できるように記載しましょう。

なお、遺言書を記載してからお亡くなりになるまで長期間あるケースが多く、お亡くなりになる時点で財産が変動していることがあり得ます。
そのため、遺言書を記載する場合には、後日財産が変動するかもしれないことを考慮した上で、記載している財産以外の財産や後日発見された財産は誰が相続するのか、明確に記載して漏れを防ぐようにしましょう。

 

第三に、遺言執行者の有無です。遺言執行者が選任されている場合は、遺言執行者がすべての相続手続きを行います。

しかし、遺言執行者が選任されていなければ、遺言書を作成したとしても相続人がみんなで手続きを行う必要があります。
そのため、遺言執行者が選任されているかどうかで相続手続きの主体が変わりますので、必ず確認するようにしてください。

4 まとめ

以上の通り、遺言書が存在しているかどうかを確認し、遺言書の存在が確認できれば法的に有効要件を満たしているかどうかを確認します。

そして、有効要件を満たしていたとしても財産が特定されているか、財産に漏れがないかなどを確認し、遺言執行者が選任されていないかどうかも確認をした上で、遺産分割協議が必要かどうかを判断していきます。

なかなか様々なことを確認しなくてはなりませんので、この過程で不明点がある方は、まずは専門家に相談しながら相続手続きの進め方について考えていきましょう。