inheritance basis

相続の基礎知識

夫婦と相続

2021.03.28

夫婦の形が多様化している今日では、いわゆる事実婚など、夫婦としての実態はあるけれども婚姻届の提出がなされていない、「内縁関係」にある夫婦は少なくありません。

また、一度婚姻した後に離婚し、更に再婚する人も年々増えてきています。
今回は、内縁関係にある夫婦や再婚した夫婦はどのように相続が行われるのか、どのような問題が起こるのか、どう対策をしておけばいいのか、お話しさせていただきたいと思います。

1.内縁の夫婦と相続

法律で婚姻関係にある配偶者は、常に相続人になることが決められています。

では「内縁の」夫婦間での相続はどうなるのでしょうか。
ご存じの方も多いかもしれませんが、内縁の夫、内縁の妻には法律上「配偶者」として扱われないのです。

つまり、例えば、夫が亡くなった場合でも「内縁の」妻には相続権がありません。
そのため、例えば「内縁の」妻が、夫の死後、「内縁の」夫の財産を引き継ぎたいと思うのであれば、婚姻届を提出すること、「内縁の」夫から生前に財産を譲り受けておくこと、又は、自身が死亡した場合には財産を「内縁の」妻に譲るというような内容の遺言書を「内縁の」夫に書いてもらうといった方法による必要があります。

「相続権はないけど、妻として一緒に生活してきたのだから、夫の財産は夫婦の財産なのでは?」「だったら、財産分与として、半分は私がもらえるのではないの?」と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。

残念ながら、財産分与は法律上の婚姻関係にある夫婦が、離婚により婚姻関係を解消した場合に生ずる権利であるため、「内縁の」妻は、内縁関係を解消した場合は勿論,「内縁の」夫と死別した場合であっても、財産分与請求権を有しません。

また、「内縁の」夫につき相続が開始した場合は、相続の規定が優先されるため、「内縁の」夫の遺産はその相続人が承継することが原則となり、「内縁の」妻は、遺言がある場合等でない限り、「内縁の」夫の財産を承継することはできません。
しかし、夫に法定相続人が1人もいない場合であれば、特別縁故者として、夫の相続財産の全部または一部を受け取れるかもしれません。

この場合は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立て、その手続きを待つ必要があります。
一方、遺族年金受給者としての「配偶者」は内縁関係も含まれます。
なので、内縁関係であっても年金を受け取ることができます。
また、勤務先からの死亡退職金についても、勤め先の就業規則の定め方によっては、退職金を受け取ることができる場合もあります。

2.再婚の夫婦

「私は、前妻と離婚して、今の妻と再婚しました。
前妻との間に子供が2人います。
相続について気を付けておくことはありますか。」というような質問が多くあります。

今回の場合、離婚した前妻は相続人にはなりません。
しかし、前妻の妻との間の子は相続人になるので、相続人は、再婚した妻、前妻との子2人になり、再婚した妻が1/2、子供たちが1/2(一人1/4)相続することになります。

このような場合、紛争に発展することが多いので注意していただきたいです。
前妻の子供たちからすると、父親が自分たちの母親と離婚して別の女性と再婚することはあまり気持ちのよいものではないですし、父親側に離婚の原因があった、再婚した女性が離婚の原因だとすれば、なおさらです。
父親に多額の財産がある場合は、その財産を目的として再婚したのではないかと、後妻が疑われるケースもあります。
また、後妻に子供がいて、その子供を養子にしていた場合、養子も相続権を持つので、その分前妻との子供の相続分が減ることになります。

そうなると、前妻の子供たちから反感を買うことになるかもしれません。
父親が亡くなったとたん、不満が爆発することも、しばしば見られることです。
ご自身の前妻の子供と後妻、後妻の連れ子が相続人になる場合は、相続争いを避けるための対策として、遺言書を作成しておくことをお勧めします。
また、再婚した父親が、後妻の将来を考え、不動産や預貯金を生前贈与することはよくあります。

前妻との子供たちに配慮して、遺留分を上回る財産を後妻に相続させるという内容の遺言書を書いている場合もあるのです。
しかし、前妻の子供は、父親とあまり連絡を取っていなかったり、関係が悪かったりすると、「後妻はたくさん財産をもらっているのではないか」「財産を隠しているのではないか」との疑念を抱き、争いに発展する可能性があります。

そして、生前贈与が特別受益に当たれば、相続財産に持ち戻され、遺留分の基礎に算入されるので、たとえ遺言書があったとしても、生前贈与の価値をめぐって争いが起こってしまうのです。
そうなってしまうと必要以上に紛争が長期化し、せっかく後妻や子供たちのためを思った行動が水の泡になってしまいます。
このような状況にならないためにも、後妻や子供たちに生前贈与をした事実を隠さず、正直に資料を開示して説明しておくとよいでしょう。
また、遺言書に生前贈与の一覧を記載し、遺留分を確保していることを具体的に書いておくなど、工夫しておくといいかもしれません。

3.おわりに

『内縁の夫から「そのうち、籍をいれるから」「ちゃんとするから」と言われて内縁関係のことや相続について考えることを後回しにしていました。
急に夫がなくなり、相続権もないので困っています。』というような相談もあるように、ご自身が先に死亡する場合、パートナーが先に死亡する場合のいずれを想定しても、内縁関係はとても不安定な関係です。
いろいろ事情があっての内縁関係だとは思いますが、籍を入れていないのであれば、遺言書を用意することがご自身又はパートナーを守ることに繋がります。

また、前妻との子、後妻、後妻の子が相続人となる場合は、日ごろから前妻との子供たちと連絡をとり、よい関係を築いておくことができれば、それもまた好ましいということができます。

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