相続手続き

法定相続分と承認、放棄について

2021.06.06
法定相続分について

相続人が複数いる場合、各相続人が遺産を相続する割合を相続分といいます。

被相続人は、遺言により、各相続人の相続分を指定することや、相続分を定めることを第三者に委託することができ、このようにして定められた相続分を指定相続分といいます。

このような遺言がない場合は、民法に定める相続分に従い相続されることとなり、これを法定相続分といいます。法定相続分として、相続人となるのは配偶者と血族です。
血族がいない場合は、配偶者が全遺産を相続することになり、配偶者がいない場合は、血族が全遺産を相続します。

しかし、同順位の血族が複数いる場合はどうなるのでしょうか。以下、具体的に例を挙げてみます。

同順位の血族が複数いる場合

(1)子と配偶者が相続人である場合

「子と配偶者」が相続人である場合は、子の相続分及び配偶者の相続分は各2分の1となります。また、子が複数人いる場合は各自の相続分は平等になります。
例)子3人と配偶者が相続人の場合の相続分
→子が各6分の1、配偶者が2分の1
なお、これまで、民法では、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とされていましたが、平成25年9月に、嫡出子と非嫡出子の相続分に差を設けている民法の規定は憲法に反するとした最高裁判所の判決が出され、この判決を踏まえ、平成25年12月に、民法の規定が改正され、嫡出子と非嫡出子の相続分は同じであることになりました。

(2)配偶者と直系尊属が相続人である場合

「配偶者と直系尊属」が相続人である場合は、配偶者の相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1となり、子の場合と同様、直系尊属が複数いる場合も相続分は平等になります。
他人の養子となった子は、実親との関係でも養親との関係でも相続人となります。逆に、その子が先に死亡した場合、養親と、特別養子縁組をした場合を除く実親がともに相続人となります。養親と実親が相続人となる場合でも、それぞれの相続分は等しいものとされています。
例)養子が死亡して、配偶者と養親2人、実親2人が相続人の場合の相続分
→配偶者が3分の2、養親、実親が各12分の1

(3)配偶者及び兄弟姉妹が相続人である場合

「配偶者と兄弟姉妹」が相続人の場合、配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1となり、兄弟姉妹が複数いる場合は各自の相続分は平等になります。
もっとも、父母の一方のみが同じ兄弟姉妹(半血兄弟)の相続分は、父母の双方が同じ兄弟姉妹(全血兄弟)の相続分の2分の1となります。
例)相続人として配偶者と全血兄弟姉妹が1人、父のみを同じくする半血兄弟姉妹が1人の場合→配偶者が4分の3、全血兄弟姉妹が6分の1、半血兄弟姉妹が12分の1

(4)代襲相続人

「代襲相続人」の相続分は、被代襲者の相続分と同じです。代襲相続人が複数いる場合は、被代襲者の相続分を複数の代襲相続人が等しい割合で相続することになります。
例)配偶者と子2人が相続人となるところ、子の1人が死亡しており、その子(被代襲者)に子(代襲相続人)が2人いた場合→配偶者が2分の1、子が4分の1、代襲相続人2人が各8分の1

(5)配偶者がいない場合

「配偶者がいない」時は、前述(1)~(4)の順位の相続人が全遺産を相続します。
子がいる場合は子が、子がいない場合は直系尊属が、子も直系尊属もいない場合は兄弟姉妹が相続人となり、子と直系尊属が同時に相続人になることはありません。同順位の相続人が複数いる場合は、等しい割合で相続します。

相続の承認と放棄

下記のような事例を挙げてみます。
先日、事業家の父が多額の負債を抱えたまま亡くなりました。父の相続人は、母、長男である私と二男の3人ですが、負債を返済するだけの資力はとてもありません。私たち3人にはどのような方法があるでしょうか。

このような時ですが、次の2点の対処方法があります。

①限定承認
相続人全員で限定承認を行い、お父さんの残した財産の範囲で借金を返済するという方法
②相続放棄
お父さんの残した財産は借金を含めて一切相続しないという方法

詳しく解説すると…
被相続人の死亡によって相続が開始すると、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することになります。

しかし、この“一切の権利義務”には、借金などの債務も含まれます。その為、仮に相続によって被相続人の財産と債務が当然に承継されるとすると、被相続人が債務超過の状態で死亡した場合には、相続人の不利益となります。また、相続人によっては、被相続人のプラスの財産であってもその承継を望まない場合もあるでしょう。

そこで民法は、相続の承認と放棄という選択を認めています。

相続の承認
1)単純承認被相続人の財産に属した権利義務を無限に承継
2)限定承認相続によって得た財産の限度でのみ被相続人の債務と遺贈を弁済するという条件で被相続人の権利義務を承継
相続の放棄→相続人の権利義務の承継をすべて拒否

相続の承認または放棄は、原則として相続人が被相続人の死亡の事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3カ月の熟慮期間内に行う必要があります。
なお、相続財産が債務超過であるのに、3カ月の熟慮期間内に相続放棄も限定承認も行うことができなかった場合には、相続財産の破産や相続人の破産の申立てを検討してみる必要があるでしょう。