労働問題

労働者と通勤災害

2019.09.15

労働者の方は全員、公共交通機関、徒歩、自転車、バイク、又は車に乗って仕事場まで通勤しているかと思います。通勤災害とは、労働者が通勤中に被った負傷、疾病、障害又は死亡のことを言います。
では、どのような場合を通勤途中と指すのか、通勤の定義や通勤災害となるパターンについて見ていきましょう。

1.通勤の定義(労働者災害補償保険法第七条)

労働者災害補償保険法第7条において、「通勤」とは、労働者が就業に関し、次に掲げる移動を合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとすると定められています。

そして、「次に掲げる移動」として、以下の3つが定められています。
① 住居と就業の場所との間の往復
② 厚生労働省令で定める(※)就業の場所から他の就業の場所への移動
③ 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

※厚生労働省令で定める就業の場所とは、労災保険適用事業場に係る就業の場所、特別加入者(個人タクシー業者等を除く。)に係る就業の場所等のことです。

次からは、この「通勤」の要件を詳しく説明していくことにします。

2.通勤の要件

(1)「就業に関し」とは

通勤とされるには、移動行為が業務に就くため、又は業務を終了したことにより行われるものであることが必要です。
したがって、被災当日に就業することとなっていたこと、又は現実に就業していたことが必要となります。

(2)「住居」とは

「住居」とは、労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業のための拠点となるところをいいます。
したがって、就業の必要上、労働者が家族の住む場所とは別に就業の場所の近くにアパートを借り、そこから通勤している場合には、そこが住居となります。

さらに、通常は家族のいる所から出勤するが、別にアパートを借りていて、早出や長時間の残業の場合には当該アパートに泊り、そこから通勤するような場合には、家族の住居に加え、アパートの双方が住居と認められます。

(3)「就業の場所」とは

「就業の場所」とは、業務を開始し、又は終了する場所を指します。一般的には、会社や工場等の本来の業務を行う場所をいいますが、外勤業務に従事する労働者で、特定区域を担当し、区域内にある数か所の勤務先を受け持って自宅との間を往復している場合には、自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所となり、最後の用務先が業務終了の場所となります。

(4)「住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動」とは

転任に伴い、当該転任の直前の住居と就業の場所との間を日々往復することが、その往復距離(片道60km以上等)を考慮して困難となったため住居を移転して労働者であって、一定のやむを得ない事情により、当該転任の直前の住居に居住している配偶者と別居することになった者の住居間の移動のことをいいます。

(5)「合理的な経路」とは

「合理的な経路」とは、住居と就業の場所との間を往復する場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び方法をいいます。最短経路のことではありませんので注意してください。
合理的な経路については、通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしてもそれらの経路はいずれも合理的な経路となります。
また、当日の交通事情により迂回してとる経路、マイカー通勤者が月極の駐車場などを経由して通る経路など、通勤のためにやむを得ずとる経路も合理的な経路となります。
しかし、特段の合理的な理由もなく、著しく遠回りとなる経路をとる場合などは、合理的な経路とはなりません。
また、合理的な方法には、鉄道・バス等の公共交通機関を利用する場合、自動車・自転車等を本来の用法に従って使用する場合、 徒歩の場合などが当てはまります。

(6)「移動の経路を逸脱し、又は中断した場合」とは

逸脱とは、通勤の途中で就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれることをいい、中断とは、通勤の経路上で通勤とは関係ない行為を行うことを言います。ただし、逸脱や中断が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、当該又は中断の間を除き通勤途中としてみなされます。 (タバコやジュースの購入、公園での小休息、お手洗いなどがその例です)

通勤途中として認められた点が下記の通りとなります。

<日常生活上必要な行為(厚生労働省令で定められた行為)の例>
日用品を購入する
帰途に惣菜等を購入する
独身者が食事のため食堂に立ち寄る
クリーニング店に立ち寄る
選挙で投票する
医療機関などへ通院する
要介護状態にある家族を介護する(ただし、介護を継続的に又は反復している場合に限る)

3.通勤災害の際の対応方法

万が一、通勤災害が発生した場合は、会社は速やかに下記の手続きを行いましょう。

・公共交通機関の場合
社員が診療を受けた病院に、通勤災害用の書類(「療養給付たる療養の給付請求書」)を提出します。
裏面に、通勤経路や時間等を細かく記載する欄があるので、自宅から最寄り駅までの交通手段や所要時間、乗り換え方法など、会社に到達するまでのすべてを記載します。

・マイカー通勤時の事故の場合
マイカー通勤をしている社員が通勤時に事故にあった場合、前提として、労災保険で処理するか自動車損害賠償責任保険(以下、自賠責)で処理するかを判断し、選択する必要があります。
どちらを選ぶかは会社の担当者が自由に決定できます。あとは担当者が社員に代わって保険会社に連絡を取り、保険会社から求められる書類を作成することになります。

なお、マイカー通勤による交通事故で第三者と接触事故を起こした場合、従業員の治療費などは、相手(加害者)の自賠責を使って損害賠償をしてもらうことが一般的です。

4.まとめ

通勤災害が発生した場合、それが本当に通勤災害となるのか、会社の担当者の確認作業が大事です。特に今日では、通勤災害の範囲は拡大傾向にあります。

実際に事故が生じた場合、担当者が「基準を知らなかった」、「判断を間違えた」という事態にならないよう、最新の情報に気を配っておきましょう。