遺産相続

遺言書保管制度の概要

2021.02.08

 2020年7月から全国の法務局で自筆証書遺言の保管制度が開始されました。従来は自筆証書遺言を書いた場合、自分で保管するしか方法がありませんでした。

そのため、ご自身でご自宅で保管したり、銀行の貸金庫で保管したりなど、自分で保管方法を考えて保管するしかなかったのです。

そうなると紛失は避けられないもので、一定程度の確率で遺言書を紛失していたり、相続人が破棄してしまったり、様々なトラブルが起こっていたものです。

1 遺言書保管の問題点

実際にご相談に来られる方々を見ていても、作成した後に「どこに保管すれば良いのか分からない」という声をよく聞きいていましたので、当事務所にて代わりに保管をしておくケースが多数ありました。

もちろん、弁護士事務所にて保管する場合、セキュリティにも細心の注意を払って保管しますが、必ずしも相続人から問い合わせがあって、相続人が遺言書を見つけられる保証がある訳でもありません。

だとすれば、やはり公的な遺言書保管制度の必要性はそれなりにありますよね。

遺言書とは、すでにお亡くなりになった人が人生の最後の意思表示として残すものであって、決してないがしろにされてはならないものだと思います。これが容易に紛失してしまったり、破棄されてしまったりするような状況では、安心して相続を語ることができません。
そのため、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言の方が紛失・破棄を防止できて良いとされてきました。

しかし、公正証書遺言を作成するにはある程度の手数料が必要であり、公証役場に出向かないといけませんので、コスト面でのハードルもあれば、手間という点でハードルもありました。

このような問題点が相まって、なかなか日本での遺言書作成率が上がらなかったのが現状です。

2 遺言書保管制度の創設

上記のような問題点がある中で、自筆証書遺言を公証役場のように公的機関が保管してあげれば問題ないであろうと議論が進み、全国に統一的に存在し、相続登記を促す意味も込めて、法務局で保管制度を実施することが親和性が高いと判断され、法務局での遺言書保管制度が創設されることになりました。

この遺言書保管制度は、後述する通り、自筆証書遺言の従来のデメリットを埋めるものとして画期的な役割を果たすでしょう。

今までは公正証書にしなくてはと言われていた遺言書が、保管制度を合わせて活用することで、自筆証書遺言でも公正証書と同じような安全性を持って作成できるようになりますので、これからは自筆証書遺言の活用が促進されるものと思われます。

3 遺言者の手続き

この遺言書保管制度では、遺言書を書いた本人が法務局へ遺言書を持参し、保管の申し出を行うことで、法務局が遺言書の原本やデータを保管することになります。

管轄の法務局は、本人の住所地・本籍地・遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局になっていますので、その中で本人にとって都合の良い場所を選ぶことになります。

保管申請は予約制になっていますので、事前に法務局に問い合わせて予約を取り、決められた日時に遺言書や戸籍、保管の申請書などを持参して、本人が保管申請を行うことになっています。その際、手数料として3900円の印紙が必要になります。

遺言書の内容を確認し、必要事項が書かれているか、保管のための要件を満たしているかなどを確認した上で、問題なければ保管を実施し、保管の証明書を発行します。ただ、あくまで保管するための要件を確認するだけですので、保管してもらえたからといって法的に有効性が認められたとの評価ではありませんので、そこはご留意ください。

4 相続人の手続き

相続人は、あくまで遺言者が亡くなった後なら、遺言書が保管されていることを証明する証明書として、遺言書保管事実証明書というものを発行してもらえます。この証明書の発行を1人の相続人が申し出た場合、その発行を行った旨を他の相続人に対して法務局が通知します。

これによって、すべての相続人が遺言書が存在している事実を認識し、相続手続きがスムーズに進むよう制度設計されております。

このときの手数料は1通あたり800円となっていますので、これを印紙で納めることになります。

5 まとめ

法務局での遺言書保管制度は、従来の自筆証書遺言の保管に関するデメリットをカバーするもので、この制度のスタートによって自筆証書遺言の活用が促進されるでしょう。加えて、この遺言書保管制度を利用することで検認手続きを行わなくて良くなるよう法改正されましたので、検認手続きが不要になる点でも公正証書遺言に近づきました。

これなら専門家と相談しながら自筆証書遺言の案を作成し、それを自筆証書遺言として自分で書いた上で法務局に保管する形が最も低コストで万全の遺言書を作成する方法になったと思います。

当事務所でもこの形をお勧めしており、遺言書を作成された方で法務局での保管を希望される方には、こちらで保管制度の予約申し込みや申請書作成などもサポートしておりますので、お気軽にお問い合わせください。