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生前の相続対策

公正証書遺言ってなに?

2017.10.07

<相談内容>
私の夫は脳梗塞を発症し、入院中です。移動は車椅子に頼っており、筆記もできませんし、言語障害が残っているため、言葉も出てきません。ただ、頷いたり首を振ったりなどして何とか意思の疎通はできます。

ここ数日、夫が遺言書を作りたいとの希望を表明していますが、このような状況で遺言書は作れるでしょうか。また、もし夫が健康を回復して遺言書を作り直したいと言ったときに、簡単に内容を変更できますか。

自筆証書遺言を作成したい場合、遺言者が自書することが必要です。そのため、自書できない人は自筆証書遺言を作成することができません。この場合でも、公正証書遺言という方法によれば、遺言をすることが可能です。

また、公正証書遺言には様々なメリットがあるため、一般的にも多く用いられています。今回は、公正証書遺言についてご説明していきます。

1 公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公証人に依頼し作成する遺言です。そのため、自筆証書遺言のように法定の形式を誤って無効になるという心配がありません。また、公証人は作成にあたって遺言者が本人に相違ないこと、遺言者に意思能力があること、遺言の内容が本人の真意によるものであること等について確認をするため、後日トラブルになることが少ないといえます。

そして、公正証書遺言の原本は公証人役場で保管されるため、偽造・変造、盗難、紛失の恐れがなく安心です。さらに、公正証書遺言は家庭裁判所での検認手続が不要です。

このように、メリットの多い公正証書遺言ですが、デメリットもあります。
作成には証人2名の立会いが必要とされており、遺言の内容が漏れてしまう恐れがないとは限りません。ただし、弁護士のように守秘義務を負う者を証人とすることで、遺言の内容が知られることを防ぐことができます。また、公正証書遺言を行うには財産の価格等に応じて手数料を支払う必要があります。

2 作成方法

公正証書遺言は、以下の方式によって行われます。
① 証人2人以上が立ち会う。
② 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する。
③ 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させる。
④ 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し印を押す。ただし、遺言者が署名できないときは、公証人がその事由を付記して署名に代えることができる。
⑤ 公証人が、その証書が以上の方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し印を押す。

冒頭の相談事例のように、遺言者が言語を発することができない場合でも、意思の疎通ができるのであれば、通訳人の通訳による申述という形で遺言の趣旨を公証人に伝え、公正証書遺言を作ることが可能です。また、遺言者の具合が悪く公証役場まで出向くことができなくても、公証人に出張してもらい、その場で作成してもらうこともできます。

また、公正証書遺言の作成には証人2人が必要となりますが、未成年者や推定相続人は証人となれないことに注意が必要です。冒頭の相談事例では、遺言者の妻は証人となることはできません。

3 公正証書遺言をめぐる問題

ご説明したように、公正証書遺言は公証人が関与して作成するため、その効力が問題となることは少なく、自筆証書遺言に比べて極めて証拠力が高いといえます。

しかし、公正証書遺言作成当時、遺言者に遺言能力がなかった(遺言者が認知症で、遺言の内容を理解し、判断することができなかった等)として公正証書遺言が無効とされた判例もあります。

公正証書遺言が極めて証拠力が高いものであるとはいえ、公正証書遺言が作成されていることと、遺言者の遺言当時における遺言能力とは別の問題であることには注意が必要です。

4 遺言の撤回

遺言を撤回したい場合、自筆証書遺言であれば、破り捨ててしまえば足ります。しかし公正証書遺言は、その原本が公証役場に保管されているため、遺言者の手元にある公正証書正本を破棄しても、撤回したことにはなりません。

公正証書遺言を撤回したい際には、遺言と抵触する法律行為を行う(子に不動産を相続させるという遺言を作成した後に、第三者にその不動産を売却するような場合)か、新たな遺言を作成することになります。

新たな遺言は、どのような方式でも構わないため、公正証書遺言を作成した後で、自筆証書遺言で撤回することも可能です。しかし、できれば撤回する経緯を示して、同じ公証人の公正証書によることが望ましいでしょう。

5 まとめ

今回は、公正証書遺言についてご説明しました。公正証書を作成するには費用がかかりますが、形式の誤りや紛失の恐れがなく、遺言者の意思を死後に実現するものとして優れているため、最もお勧めです。

公正証書遺言を作成するにあたっては、専門家に依頼せず、公証人に相談しながら作成することも手続上は可能です。しかし、公証人は、あくまで、遺言者から伝えられた遺言内容を法的に有効な公正証書遺言という形式に整えることが仕事ですので、そもそも遺産をどのように分配すべきか等の内容面について親身になって相談に乗ってくれることはありません。

そのため、例えば、遺産の分配方法について、相続税対策を考慮した分配内容にしたい、死後に遺留分の紛争等が発生しないように分配したい等、遺言について様々な想いがある場合には、まず弁護士に依頼し、どのような内容の遺言を作成するのか、きちんと決めておくことをお勧めします。その上で、その弁護士に遺言の証人、遺言執行者になってもらうと良いでしょう。

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