遺産相続

特別受益ってなに?

2019.04.24

相続が発生して遺産分割協議を行う際に、「特別受益」が協議の争点になることがあります。特別受益とはどのようなものなのでしょうか?
この記事では、特別受益という言葉の意味や、特別受益が認められる具体的なケースや計算方法についてご説明します。

1. 特別受益とは?

相続人の中に、被相続人から生前に贈与を受けて特別な利益を得た人がいる場合、これを法定相続分の計算に考慮しなければ、利益を得た相続人は他の相続人に比べて多額の遺産を取得することになり、不公平な状態になってしまいます。

このように、相続人が被相続人から生前に得た利益のことを「特別受益」といい、被相続人から特別受益を受けた相続人のことを「特別受益者」といいます。

民法では各相続人間の公平を図るため、「特別受益」を考慮した上で具体的相続分を算定する「特別受益の持戻し」という制度が定められており、具体的には次の通りになります。

『相続人の中に特別受益者がいる場合、被相続人の相続開始時の遺産に、特別受益の金額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分から特別受益額を控除した残額をもってその者の相続分とする』(民法903条1項より引用)

つまり、被相続人の遺産総額に特別受益を上乗せした上で、その総額を相続財産とみなして法定相続分を計算し、その法定相続分から特別受益額を控除した金額が特別受益者の相続分となるという制度です。

2. 特別受益と評価される場合

それでは、どのような場合に特別受益と評価されるのでしょうか。

民法において、特別受益として考慮されるのは「遺贈」、「婚姻若しくは養子縁組のための贈与」、「生計の資本としてなされた贈与」の3種類あると定められており、これには現金や預貯金のみではなく、株券や投資信託、車や不動産等あらゆる種類の財産が含まれます。

種類ごとに、どのような遺贈や贈与が特別受益と評価されるかご説明します。

① 遺贈

遺贈とは、被相続人が遺言によって無償で財産の全部又は一部を譲渡することです。遺贈は全て特別受益の対象となります。

② 婚姻もしくは養子縁組のための贈与

相続人が、被相続人から婚姻する際の持参金や支度金又は養子縁組を行う際の資金を贈与されていた場合、一般的には特別受益の対象になるとされています。ただし、贈与額が少額で、被相続人の生前の資産や生活状況に照らして通常の扶養義務の範囲内の支出であると認められる場合は特別受益に該当しないと考えられています。

③ 生計の資本としてなされた贈与

相続人が、被相続人から大学教育の学費や不動産・自動車の贈与、又は事業資金を贈与されていた場合、特別受益の対象になるとされています。

学費においては、一般的に普通教育以上の高等教育を受けるための学費は特別受益の対象と考えられますが、②と同様に被相続人の扶養範囲内の支出であると認められる場合は特別受益に該当しないと考えられる傾向にあります。(過去の審判例などを見る限り、大学への進学率の高まりに伴い、大学の学費までは扶養の範囲と考えられ、大学院やその他の学費などでないと特別受益とは評価されない傾向にあります。)

また、居住のための不動産の贈与やその取得のための資金の贈与においては、相続人が独立して生計を営むようになって以降になされた贈与であったり、遺産の前渡しと認められる程度の高額な贈与であったりする場合、「生計の資本としての贈与」とみなされ特別受益に該当すると考えられます。

3. 特別受益の持戻し計算~具体例~

それでは、実際に相続人の中に特別受益者がいると認められた場合、「特別受益の持戻し」の計算がどのように行われるか、具体例を見てみましょう。

~具体例~

被相続人の遺産総額:5,000万円
相続人:配偶者と長男、次男の計3人
特別受益者:長男が被相続人の生前、1,000万円の贈与を受けていた場合

本来であれば5,000万円の遺産を法定相続分通りに分割し、各相続人の相続分は
配偶者が2,500万円、長男と次男は1,250万円ずつとなります。

しかし、今回の例では長男が生前贈与を受けているため、1,000万円を特別受益分とみなし、以下の持戻し計算を行います。

まず、遺産分割の対象となる遺産の総額は、5,000万円に長男の特別受益分1,000万円を加えた6,000万円となります。

これを法定相続分通りに分割すると、各相続人の相続分は配偶者が3,000万円、長男と次男は1,500万円ずつとなります。

そして、特別受益者である長男の相続分は、法定相続分1,500万円から特別受益分1,000万円を控除された500万円となります。

よって、上記の例における各相続人の相続分は、配偶者が3,000万円、長男が500万円、次男が1,500万円となります。

4. まとめ

遺産分割協議において、特別受益が争点になるケースは非常に多いですが、特別受益の対象となる遺贈・贈与の判断や持戻し計算の方法は非常に複雑であり、被相続人や特別受益者の生活状況や資産状況等、様々な面を考慮して検討する必要があります。

また、特別受益の主張を行う場合は、特別受益の金額及びその事実を立証できるだけの資料が必要ですが、過去の現金や預貯金の贈与を立証するための記録の取得が困難な場合も多いです。

遺産分割協議において、特別受益についての主張を検討されている方や特別受益が争点となり協議が難航しているといったお悩みをお持ちの方は、相続の専門家や弁護士等に相談した方が良いでしょう。