遺産相続

遺産分割を放置するデメリットと相続登記の義務化

2021.02.10

相続が発生した場合、通常はそれほど時間を置かずに遺産分割協議を行って、誰が何の財産を取得するのか決めることになります。これに伴って必要な手続きを行い、預貯金や不動産などの名義変更を行って、新しい所有者がきちんと表向きにも確定するのが筋です。

また、相続税申告がある家庭では、相続の開始を知ってから10ヶ月間が相続税申告の期限になりますし、遺産分割が完了しなくては誰がどれだけ相続税を支払わなくてはならないか決まらないため、通常は10ヶ月以内に遺産分割を終わらせて相続税申告を行うものです。

しかし、相続税申告が必要ないご家庭においては、正式に遺産分割協議を行って不動産の名義変更を行うことなどを放置しているご家庭も多いものです。

実際のところは、相続が発生しても相続人の代表者として誰かの手元に固定資産税の通知が届き、市町村としても固定資産税がきちんと支払われていれば特に問題ありませんので、事実上は遺産分割を行わず相続登記も放置したままのご家庭が多数あるのが現状です。

実際に実務を行っていても、明治時代の抵当権を抹消したいというご依頼や、祖父名義の不動産の名義変更をしたいというご依頼など、かなり昔から名義変更を怠っているケースは山のようにあるものです。

このようなご家庭でも、具体的に家を建て替えたり不動産を売却したりする瞬間に、次の手続きを採るため適切な登記名義人に名義を移してからでないと手続きができず、そのようなきっかけで遺産分割を行うご家庭も多数見受けられます。

今回はこのように遺産分割を放置するデメリットをご紹介し、タイムリーに遺産分割を行うことをお勧めした上で、つい先日法制審議会から答申された相続登記の義務化について少し触れてみたいと思います。

1 遺産分割を放置するデメリット

遺産分割を放置することで、以下のようなデメリットがありますので、それを把握した上で適切なタイミングでの遺産分割を心がけましょう。

⑴ 財産処分ができない

遺産分割を行わない場合、遺産は相続人全員の共有となります。遺産分割を行っていない以上、名義変更が済んでいない状況ですから、その財産を処分しようと思っても買主からすれば適切に名義変更を行ってからでないと購入ができません。

そのため、遺産分割を放置したままでいると、遺産に含まれる財産を処分しようと思っても、タイムリーに処分ができず、まずは名義変更手続きを行ってからでないと処分ができない事態が生じてしまいます。

⑵ 遺産分割に関する状況が変わってしまう

遺産分割を放置していれば、当初は少しだった相続人達がまたお亡くなりになり、その相続人等に共有持分は引き継がれていきます。一般的には一人の方がお亡くなりになると複数人の相続人がいらっしゃいますので、誰かがお亡くなりになるたびに相続人の人数が増えていき、実際に手続きをする際に関わらなくてはならない人数が増えていきます。

また、当初は近しい間柄の相続人ばかりだったのが、相続が繰り返されることによって日常的には付き合いのない親戚などが相続人に含まれてきて、コミュニケーションが難しくなっていきます。

相続開始直後に遺産分割を行っていれば何も困らなかったにも関わらず、放置して相続人が増えたことで関係者が増え、印鑑をもらう手間がかなり増大するだけでなく、知らない間柄のため印鑑をもらうこと自体が困難なケースも見受けられますから、都度タイムリーに手続きを行っておくようにしましょう。

なお、相続登記については、どれだけ放置しても数回分の相続を一発の登記で行うことはできず、結局は過去の相続登記を順次行うしかありませんので、どのタイミングで行なっても同じだけの手間がかかりますし、同じだけのコストが発生します。だとすれば、必要になったタイミングできちんと行なっておくのがベストですね。  

⑶ 取り得る手段が減る

相続放棄や限定承認などは、相続開始を知った時から3ヶ月間しか行う事が出来ません。

遺産分割事態を放置していれば、このような相続放棄などを検討する機会を逃してしまいますので、きちんとタイムリーに遺産分割について考えましょう。

⑷ 相続税申告の期限を徒過してしまう

相続税申告の期限は相続開始があったことを知った日の翌日から10か月間です。

遺産分割が終わらないままこの期限を迎えてしまうと、未分割で申告するしかありませんので、まずは法定相続分通りで相続税申告を行うことになります。その後、遺産分割が完了してから改めて修正申告を行い、実態に沿った相続税申告を行うことになります。

せめて未分割で申告を行っていれば良いのですが、遺産分割を一切行なっていないケースでは、そもそも相続税申告を全く行っていないご家庭も多いものです。

そうなると無申告になりますので、使えるはずだった特例が使えなかったり、加算税や延滞税を課されてしまったりと、単純に相続人が損をしてしまうケースが多発します。

そのため、必要な遺産分割は必要なタイミングでタイムリーに行うのがベストです。

2 相続登記の義務化

遺産分割を放置することに上記のようなデメリットがある中で、法務大臣の諮問機関である法制審議会は、2021年2月10日、相続人が土地の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することを義務付けるよう法改正の答申を行いました。これを正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料を科すという方針です。

今までは放置されている相続登記など日常茶飯時でしたが、 では適切な登記名義人が誰なのか外から見て分からないため、このような法改正が行われる予定になっています。

この法改正が行われると、少なくともお亡くなりになってから3年以内に相続登記を行わなくてはならず、それまでに遺産分割を終了させる必要があります。

単に遺産分割を放置しておくことが上記の正当理由に当たるという解釈は成り立たないでしょうから、やはり遺産分割が行わざるを得ませんね。

3 まとめ

以上の通り、遺産分割を放置することには各種のデメリットがありますし、近日中に相続登記義務化される予定ですので、 実際に相続が発生した場合には、なるべく早く遺産分割を行い、適切な所有者の名義に変更されることをお勧め致します。