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生前の相続対策

ペットのための相続

2021.02.25

コロナ禍で、ペット需要が増加しているようです。
確かにペットを飼うと毎日の生活が楽しくなります。
しかし、ペットと過ごす日々には手間と費用がかかります。例えば、犬を飼うと毎日のお散歩や、餌代、ワクチン代がかかりますし、もしものときには、高額な医療費もかかります。
自分にとっては、家族同然のペットですが、自分に万が一のことがあったら、手間とお金のかかるペットはどうなってしまうのか、心配に思うことはないでしょうか?

現代においては、独り身でペットを飼っている高齢者の方も多く、遺言書を作成しただけではペットに関する心配が拭えないものです。
そこで、今回は、ペットの「ため」に財産を残す方法(以下、「ペットのための相続」といいます。)をご紹介したいと思います。

1 ペットのために財産を残す方法

残念ながら、法律上ペットはあくまで「物」(民法第85条)として扱われてしまいますから、相続人となる資格はなく、ペットに相続させることはできません。
仮にペットに相続させられたとしても、ペットは財産を使えませんから、ペットの「ため」に財産を残す際には、ペットのお世話をしてくれる人まで考える必要がありますね。
そこで、ペットのための相続の方法として①負担付遺贈ないし負担付贈与、②信託契約を活用する方法があります。

2 負担付遺贈または負担付贈与

負担付遺贈または負担付贈与は民法に定められた、財産を相手に渡す方法です。
簡単に説明すると、一定の条件を守ってくれるなら財産をあげます、という方法です。
ペットのための相続の場合、自分の財産を使ってペットのお世話をすることを条件に財産を相続させるといった遺言書を作成します。また、遺言執行者を選任して、遺言通りにペットのお世話をしているか、を監督することができます。

もっとも、遺贈は、遺言者の一方的な意思でできるので、相手が断ることができるという点が大きなネックになります。
そのため、遺言書を作成する前に負担付遺贈を受けてくれるようにしっかりと話をしておくことが必要です。合意をとっておくという意味では、生きている間にペットのお世話をしてくれることを条件に贈与(負担付贈与)契約を締結することも考えられます。
このように、生前の負担付贈与であろうが遺言書での負担付遺贈であろうが、ペットの世話をすることを条件として財産を与えるという形は作ることができますが、特に負担付遺贈の場合、このペットの飼育費用について相続争いに巻き込まれる可能性が生じる余地を残してしまいます。

すなわち、ペットに残したい財産は、本来は法定相続人全員がもらう権利のある財産に含まれますので、遺言書の内容に納得いかない、しかもほとんど財産がもらえない相続人が、「遺産をペットに残すなんてあり得ない!相続人に渡せ!」と異議を唱えて来る可能性があるのです。これは、遺言書で定めたとしても、あまり財産をもらえてない法定相続人には、最低限保証されている財産を渡すように請求する権利である遺留分減殺請求権というものがあり、これを主張されるかもしれないということです。つまり、この遺留分減殺請求権を主張されてしまうと、遺言書でペットに残したはずの財産が相続人に取られてしまうこともあり得るのです。

参考
民法第1002条第1項(負担付遺贈)
 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
同第553条(負担付贈与)
 負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。

3 信託契約

次に、信託法を活用したペットのための相続とは、あらかじめペットのために残したい財産をペットのお世話をしてくれるであろう信頼できる人や団体に管理・運用してもらう信託契約を締結して行います。
この団体は、自分を代表とする一般社団法人や一般財団法人を設立する方法もありますが、一般的には動物愛護団体などを活用しながら行うことが一般的です。

信託契約は、①財産の所有者でそれを預ける人(委託者)、②財産の管理・運用・処分を行う人(受託者)、③財産の処分や運用によって利益を得る権利を有する人(受益者)の3名がそろって成立する契約です。
ペットのための相続の場合、具体的には、飼主である自分を委託者(飼主が生きている間は、受益者も兼ねます。)、ペットのための財産を管理運用してくれる人や団体を受託者とします。

受託者がペットのお世話をしてくれる場合には、受益者にもなります。
信託契約の場合も、信託財産がペットのためにしっかりと使われているか、監督人を就けて監督することができます。
また、信託契約を活用する一番のメリットは、ペットに残したい財産が相続財産ではなくなるので、ペットが相続争いに巻き込まれる心配がなくなることです。(この点は、いまだペット信託を遺留分減殺請求の対象にできるかどうか最高裁判例が確立されていないため、未確定情報にはなりますが、最高裁の信託と遺留分に関する考え方に沿えば、遺留分減殺請求の対象にはならないと考えるのが自然かと思われます。)

 

参考
信託法131条
 信託行為においては、受益者が現に存する場合に信託監督人となるべき者を指定する定めを設けることができる。

信託法132条
 信託監督人は、受益者のために自己の名をもって第92条各号(第17号、第18号、第21号及び第23号を除く。)に掲げる権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

 

4 まとめ

今回ご紹介したように、ペットのための相続は可能です。
ペットを飼われている方だけでなく、高齢だからとペットを飼うことを諦めている方も、ペットのための相続を考えることで、安心してペットを飼うことが可能です。
ただ、ペットのための相続を適切に行うためには、上記の通り複雑な法律知識が必要になるため、専門的な知識が必要です。
当事務所には民法だけでなく信託法にも強い弁護士が揃っていますので、貴方のご要望に沿って、ペットのための相続をご提案できます。

また、当事務所は、税理士法人や司法書士法人も併設していますので、相続の際の税金対策や登記もまとめてご相談ができます。
ペットを飼われている方やペットを飼いたいという方は、是非、当事務所でペットのための相続についてご相談ください。
また、本コラム中の負担付遺贈の方法や家族信託については他のコラムで詳しくご説明しています。ご興味のある方は、是非ご一読ください。

 

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