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生前の相続対策

生前贈与と相続、どちらで財産をもらった方が節税になる?

2020.04.10

相続税対策として、生前贈与を活用すべきという話をお聞きしたことがある方も多いと思います。
しかし、生前贈与の場合、贈与を受ける財産の価格によっては贈与税がかかります。
それでは、生前贈与ではなく相続で財産をもらい受けた方が節税になるのでしょうか?

そこで今回は、節税対策として生前贈与を活用すべきか、相続でもらい受けるべきかをテーマにご説明いたします。

1 贈与税と相続税の比較

⑴ 基礎控除の価格

贈与税も相続税も、もらい受ける財産が一定額以下であれば税金はかかりません。
この一定額の金額を基礎控除といいます。

それぞれの基礎控除額は以下の通りです。

・贈与税:年間合計110万円
・相続税:3,000万円+600万円×相続人の人数

例えば、相続人が一人のみの場合、相続税の基礎控除額は3,600万円となります。
その場合、3,600万円以下の財産であれば、相続で引き継げば無税ですが、一回の生前贈与で3,600万円を贈与するとなると、基礎控除額(110万円)を超えた3,490万円については贈与税がかかります。

よって、一括で多額の財産の承継をしようとするのであれば、単純に相続の場合の方が基礎控除額が大きいため、基礎控除の範囲内であれば相続がお得になります。

⑵ 税率

贈与税も相続税も、もらい受ける財産の価格が上がるにつれて税率が上がります。
このような仕組みを累進課税制度と言いますが、贈与税と相続税では、税率の設定が違います。
税率の比較は以下の通りです。

相続税:法定相続分に応ずる取得金額

贈与税:基礎控除後の課税価格

相続税 贈与税
一般贈与財産 特例贈与財産
税率 控除額 税率 控除額 税率 控除額
200万円以下 10% 10% 10%
200万円超
300万円以下
15% 10万円 15% 10万円
300万円超
400万円以下
20% 25万円 15% 10万円
400万円超
600万円以下
30% 65万円 20% 30万円
600万円超
1,000万円以下
40% 125万円 30% 90万円
1,000万円超
1,500万円以下
15% 50万円 45% 175万円 40% 190万円
1,500万円超
3,000万円以下
50% 250万円 45% 265万円
3,000万円超
4,500万円以下
20% 200万円 55% 400万円 50% 415万円
4,500万円超
5,000万円以下
55% 640万円
5,000万円超
1億円以下
30% 700万円
1億円超
2億円以下
40% 1,700万円
2億円超
3億円以下
45% 2,700万円
3億円超
6億円以下
50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

なお、贈与税の税率は一般税率と特例税率の2種類あり、特例税率は、直系尊属(祖父母や父母など)から、20歳以上の者(子・孫など)への贈与に適用される税率で、それ以外の場合は一般税率が適用されます。

以上の通り、税率の比較のみで考えると、相続税の方が贈与税よりも税率は低くなっています。

2 税率では決められない?

以上を前提にすると、贈与税の基礎控除額を超える場合の財産の贈与は贈与税が発生するうえ、税率も相続税よりも高いため、生前贈与をすると高い税金を持っていかれて損するようにも思えます。
しかし、実は相続と贈与のどちらが有利かは、これだけでは決められません。
場合によっては、贈与税を生前に支払ってでも贈与を活用した方が、結果的にトータルで支払う税金が低く抑えられ、得をするケースもあります。例えば、以下のような場合です。

【ケース①】:全部を相続で引き継ぐ場合

現在、1億円の預金を保有しているAさんがいます。Aさんの相続人は息子のBさんのみです。この場合、Bさんの相続税は1,220万円発生します。
※速算表を利用した計算式
Bさんの相続税:(1億円―3,600円)×30%-700万円=1,220万円…①

【ケース②】:一部を相続で引き継ぐ場合

では、Aさんがもし相続財産の一部である200万円をBさんに生前贈与していた場合、Bさんにかかる税金額はどうなるでしょうか?
まず、Bさんがもらう贈与財産の価格は、基礎控除を超えているためBさんに贈与税が発生します。この場合のBさんの贈与税は、
Bさんの贈与税:(200万円-110万円)×10%=9万円…②
となります。

他方で、Bさんが上記200万円の生前贈与をAさんから受けた後に、Aさんが亡くなった場合、Bさんの相続税は以下の通りとなります。

※速算表を利用した計算式
Bさんの相続税:(9,800万円―3,600万円)×30%-700万円=1,160万円…③

以上を前提にすると、Bさんが200万円の生前贈与を受けた際に負担すべき税額は、合計1,169万円(②+③)となり、全部を相続で引き継ぐ場合の1,220万円(①)よりも、トータルの税額は51万円得をしていることになります。

3 贈与税を支払った方が節税になる?

先述の通り、相続税と贈与税の税率のみを比較すると、贈与税の方が高いはずなのに、なぜ上記2のケースでは、トータルの税額が下がったのでしょうか。
これは、先ほど述べたとおり、贈与税も相続税も、財産の価格が高ければ高いほど税率が高くなる累進課税制度が用いられていることが原因です。
つまり、相続時の財産が多額の場合、高い税率が適用されます。

上記2のケースだと、税率は30%です。
他方で、生前贈与の金額が200万円と少額のため、贈与税の税率は10%で計算が可能となり、これらを組み合わせると、トータルの税負担額が、全部を相続税で計算する場合よりも抑えられることになります。
 

4 まとめ

以上の通り、多額の相続税が発生するような場合には、生前に贈与税を支払ってでも贈与をしておいた方がトータルで負担する税額を低く抑えられるケースもあります。
そのため、財産を生前贈与で引き継ぐのと、相続で引き継ぐのと、どちらの方が得なのかについては一律に判断することはできません。

また、引き継ぐ財産の種類によっても、相続で引き継いだ場合には税額軽減の特例が適用できるものもあったりしますので、ご自身のケースにおいてどのような財産の承継方法が最も節税となるかについては、相続対策に詳しい専門家にご相談のうえ検討された方が良いでしょう。

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