遺産相続

遺言書ってどう保管すればいいの?

2020.03.23

遺言書はただ書けばいいというものではありません。決められた方法で保管しないと後日トラブルになる可能性がありますし、相続が発生した場合にきちんと見つけてもらえないと、遺言を書く意味も失われてしまいます。

今回は、遺言書の保管方法についてご説明いたします。

1 遺言の形式別にみる遺言書の保管方法

まず、遺言には①公正証書遺言、②秘密証書遺言、③自筆証書遺言の3種類があります。
①の公正証書遺言は、公証役場で公証人に対し遺言内容を口述し作成してもらう遺言、②の秘密証書遺言は、自分で作成した遺言書を封印し、その封に公証人と証人の署名押印を行う遺言、③の自筆証書遺言は文字通り、自筆で作成する遺言です。
 
このうち、①は公証人が公正証書として作成し、公証役場で保管を行うので、「どこで保管するか」を検討する必要はありません。しかし、②③については、自ら作成し、補完すべきものになりますので、どのように保管するのか、をよく考える必要があります。

2 誰が保管するか

では、秘密証書遺言と自筆証書遺言はどのように保管すればよいのでしょうか?
まず、誰が保管するのかを検討する必要がありますが、「誰が」ということについて特に法律上の定めはありません。
遺言者自身が保管しておいても良いですし、遺言者の親族、友人が保管しても構いません。
弁護士や司法書士などの法律家に依頼することも考えられます。また、自筆証書遺言については、令和2年7月10日より法務局に保管を任せられる制度もスタートしますので、これも選択肢の一つとなってきます。

そして、誰が保管するかを決めるにあたっては、以下のような事情を考慮する必要があります。

・相続人等、遺言の関係者の間で相続トラブルが起きそうかどうか。
・相続発生までの間、保管を行うことが現実的に可能かどうか。
・保管している間、遺言書を紛失するなどの恐れがないかどうか。
・(自分で保管しない場合)保管を行う者を信頼できるかどうか。
・保管にどれくらいのコストがかかるか。

たとえば、相続人間で相続トラブルが起きることが想定される場合に、特定の相続人に遺言書の保管を任せるのはトラブルの火種を大きくすることにつながりますし、そういったトラブルの恐れがなくても、保管を行う者が先に亡くなったり、保管場所のセキュリティ等に不安があるのであれば、特定の相続人に保管を任せるべきではありません。

また、自身で保管していたとしても、その保管場所を関係者が知らなければ、相続が発生した場合に遺言書が発見されないかもしれません。遺言書をだれが保管するのか、という点はこういった諸々の事情を総合的に考慮して決める必要があります。

この点について考えられる選択肢とそれぞれの利点・懸念事項はおおよそ以下の通りです。

ア 自身で保管

(利点)
・保管状況を確実に把握し、状況に応じて場所を変えることができる。
・コストがかからない
  
(懸念事項)
・相続が発生した時に備え、誰かに保管場所を知らせておく必要があるが、その保管場所情報をどう管理するか検討する必要がある。
・自身が認知症になった場合などに保管場所が分からなくなる恐れがある。
・紛失や盗難などの恐れがある。

イ 親族、知人に保管を依頼

(利点)
・自身より若年の者に任せれば、遺言はほぼ確実に発見される。
・コストがかからない。
  
(懸念事項)
・依頼相手との関係が悪化した場合の対処を考える必要がある。
・依頼相手が相続人の一人である場合、相続トラブルの原因となりうる。
・自身で保管する場合に比べ、保管場所や保管方法のコントロールが難しい。

ウ 法律家に保管を依頼

(利点)
・セキュリティの不安が小さい。
・その法律家が閉業しない限り確実な保管維持が期待できる。
  
(懸念事項)
・保管料のコストがかかる
・その法律家が閉業した場合の対処を考える必要がある。
・相続が発生した場合に、その法律家がその事実を知る手段を講じておく必要がある(親族の一人に連絡をお願いするなど)。

エ 法務局に依頼

(利点)
・セキュリティの心配が不要。
・半永久的に保管が可能。
・検認が不要。
  
(懸念事項)
・保管料のコストがかかる。
・相続が発生した場合に、法務局から遺言書を取得する者を準備しておく必要がある。

以上が各保管方法の特徴ですが、保管トラブルの防止という観点からするとウもしくはエの方法が適切でしょう。

特にエの場合、自筆証書の場合に本来必要とされる裁判所での検認(相続発生時、遺言書を裁判所に持参し、遺言書の存在と内容を確認してもらう作業)が不要となる大きなメリットがあります。

3 保管時の注意

次に、アイの方法で保管する場合(自身または知人が保管する場合)には次の事項に注意する必要があります。

すなわち、遺言書が封印されている場合(秘密証書遺言に限らず、自筆証書を封印している場合も含まれます。)、相続が発生して裁判所に検認を受けるまでの間に封を解いてしまうと、その遺言が遺言者によって作成されたものであるかの証明を失うことになり、遺言の効力が否定される原因になりうるとともに、5万円以下の過料が課せられることになります。

したがって、封印された遺言書は検認の時まで封印状態を維持する必要があります。
 
一方で、法務局に自筆証書遺言の保管を依頼する場合、法務局でその内容を確認し、データを保存することになることから、封印をした状態で持参してはなりませんので、注意する必要があります。

以上、今回は遺言書の保管方法について説明させて頂きました。