遺産相続

相続分の譲渡ってどうやるの?

2020.03.11

自分が相続人となる相続が発生したが、様々な理由により相続に関わりたくないといったお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。

相続しないことを選択する場合は「相続放棄」の手段を用いる方が多いですが、相続分を他の相続人や相続人以外の第三者に譲渡するという手段もあります。
今回は、相続分の譲渡についての基礎知識とその手続き方法をご説明します。

1.相続分の譲渡とは?

相続分の譲渡とは、相続権を有する人が持つ遺産全体に対する包括的持分または法律上の地位(以下、「相続分」といいます。)を、他の相続人又は第三者に譲渡することです。
相続する権利を放棄する「相続放棄」とは異なり、譲渡を受けた者が他の相続人と相続財産を共有し、遺産分割協議に参加することができます。相続分を譲渡する人のことを「譲渡人」、譲渡される人のことを「譲受人」といいます。
それでは、相続分の譲渡を行うことでどの様に相続分が変わるのでしょうか?
具体例を用いて説明します。

上記のケースは、法定相続人が被相続人の配偶者と長男、次男の3人の場合です。
各相続人の法定相続分は、配偶者が2分の1、長男と長女が各4分の1となります。しかし、次男が自分の相続分を長男に相続分を譲渡した場合、長男の相続分は「4分の1+4分の1=2分の1」となります。

譲渡人は、相続分の譲渡をした後は相続財産に対する持分を有しないことになります。通常、遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、譲渡人は持ち分を有していないため遺産分割協議に参加する必要がありません。

相続分の譲渡をすると相続人の地位が譲渡されるため、譲受人はプラスの財産のみならずマイナスの財産(相続債務)も承継することになります。
しかし、債権者との関係においてはその債権者の承諾を得なければ譲受人に相続債務は承継されず、譲渡人は債権者に対して相続分の譲渡を主張することはできません。

2.どんな場合に利用されるの?

相続分の譲渡が利用されるのは、以下のようなケースが多いです。

・相続手続きの簡略化
一部の相続人が相続争いをしており、相続争いに関わりたくないという相続人がいる場合や、相続を特に希望しない遠隔地の相続人がいる場合、相続分譲渡契約を締結することで相続人を減らし相続手続きを簡略化することができます。

また、相続分の譲渡は有償でも無償でも行うことができるため、相続財産に不動産が多数含まれているが不動産には興味がなく早くお金がほしいという相続人がいる場合は、自分の相続分を他の相続人に有償で譲渡することで、代償分割と同様の効果を得ることができます。

・第三者に譲渡することができる
相続分の譲渡は、相続人に対してだけでなく第三者に対しても行うことが可能です。
相続分の譲渡が第三者に対してなされた場合、その譲受人は相続人としての地位を手に入れることになり、遺産分割協議に参加し意見や発言することができるようになります。

また、譲受された相続権をさらに第三者に譲渡することや、相続分に従って相続財産を受け取ること、また不動産の移転登記をすることができます。

しかし、他の相続人にとっては遺産分割の話し合いが複雑になってしまうため、民法では相続分の取戻し(民法905条)という制度が認められています。相続分の取戻しとは、相続分の譲渡で第三者に相続分が譲渡された場合に、他の相続人が譲渡された相続分を取り戻せる制度です。

相続分を取り戻すことができるのは、①譲渡が相続人以外の第三者に譲渡されていること、②取戻しをする他の相続人が譲受人に相続分の価額及び費用を支払うこと、③譲渡されてから1カ月以内であることの3つを満たす場合になります。

3.相続分譲渡の手続き方法

相続分の譲渡は、遺産分割手続きの前に行う必要があります。契約の様式や要件などは定められていませんが、後々のトラブルを防止するために譲渡する事を証明する「相続分譲渡証書」を作成するのが一般的です。相続分譲渡証書を作成する際には、以下の項目を記載しておくよう気を付けましょう。

・被相続人の表示
被相続人の氏名、生年月日、死亡年月日、死亡時の住所、本籍を記載しましょう。

・譲受人の表示
譲受人の氏名、生年月日、住所、本籍を記載しましょう。

・譲渡人の表示、押印
譲渡人の氏名、住所を記載し、実印にて押印をします。

相続分譲渡証書を作成する際には、他の相続人の承認は必要ありません。作成後は両当事者が印鑑証明書と併せて保管をしておきましょう。

なお、相続財産に不動産が含まれる場合は、所有権移転の登記手続きが必要となるため、相続分譲渡証書の他に必要書類等の準備が必要です。
また、譲受人が相続人以外の第三者である場合、預貯金の解約払い戻し手続きに際し、金融機関によっては譲渡人の署名押印が求められる可能性があるため事前の確認が必要です。

相続分譲渡証書が完成したら、譲渡人は他の相続人に相続分を譲渡したことを通知しましょう。
必ずしも通知しなければならないわけではありませんが、相続分の取戻しの手続きを行うことになった場合のために、通知した日付と内容がわかるよう内容証明郵便で通知をしておくと安心です。

4.まとめ

相続分の譲渡をすることで、他の相続人や第三者に自分の相続分を譲渡することができます。
しかし、相続人以外の第三者に譲渡した場合は、相続分の取戻し手続きが発生する可能性があること、また譲受人として第三者が遺産分割協議に入ってくることで、遺産分割協議が複雑になってしまう可能性もあります。
相続分譲渡について検討をしている方は、弁護士に一度相談してみましょう。