遺産相続

未成年後見制度とは

2020.02.13

相続を行うとき、相続人が全員成人しているとは限りません。
災害や病気、不慮の事故等により、子が未成年のうちに親権者を亡くしてしまうといった場合、その親権者の代わりに子の監護や財産管理の担う人を選任する必要があります。

1 未成年後見制度とは

親権者を死亡等の理由により失い、その未成年者に対して親権を行う者がいない場合限り、家庭裁判所は申し立てを受けて未成年後見人を選任することとなります。

未成年後見人とは、未成年者(未成年後見人が選任された後は、この未成年者のことを「未成年“被”後見人」といいます)の法定代理人であると同時に、未成年者の監護養育や財産管理、未成年者が契約を締結する必要がある場合等の法律行為等を行うこととなります。

2 未成年後見人選任の流れ

未成年後見人を選任するためには、申立てをする権利を持つ者が、裁判所の指定する書類等を揃えて提出することが必要となります。

(1) 申立権者

未成年後見人選任の申立ては、誰でも申立てをできるものではありません。
申立てをすることができるのは、以下に該当する者のみと法律で定められています。

①未成年者
②未成年者の父母、その他親族
③その他利害関係人
④児童相談所長

なお、未成年後見人選任の申立てについては、上記の申立権者が自ら行う場合の他に、以下のような場合には、申立てをすることが義務付けられることもるので注意が必要です。

・父若しくは母が親権若しくは管理権を辞し、又は父若しくは母について親権喪失、親権停止若しくは管理権喪失の審判があったことによって未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母は、遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。(民法841条)
・後見人がその任務を辞したことによって新たに後見人を選任する必要が生じたときは、その後見人は、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。(民法845条)

・児童相談所長は、親権を行う者のない児童等について、その福祉のため必要があるときは、家庭裁判所に対し未成年後見人の選任を請求しなければならない。

・児童相談所長は、前項の規定による未成年後見人の選任の請求に係る児童等(小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託中若しくは児童福祉施設に入所中の児童等又は一時保護中の児童を除く。)に対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。ただし、民法第七百九十七条の規定による縁組の承諾をするには、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の許可を得なければならない。(児童福祉法33条の8)

 

(2) 後見人となる者

未成年後見人となるためには特に資格は求められていませんが、法律上、以下の要件に該当する場合は後見人となることが出来ません。

①未成年者
②家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人
③破産者で復権していないもの
④未成年者に対して訴訟をし又はした者、その配偶者、その直系血族(祖父母や父母等)
⑤行方の知れない者
(3) 申立先

未成年後見人選任の申立ては、当該未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

(4) 申立に必要となるもの

管轄の家庭裁判所のホームページには、申立て時に必要となるものについて記載されています。
ここでは、福岡家庭裁判所への申し立てを前提として、必要となるものを説明していきます。

①費用
申立てに必要となる費用は、未成年者が1人の場合は合計3,250円となります。

・収入印紙 800円(※未成年者1名につき)
・郵便切手 2,450円(※審理中の通信費用。内訳は500円×3枚、84円×10枚、10円×5枚、5円×10枚、2円×5枚)

なお、詳細は後述しますが、申立ての際に添付する資料には公的機関で発行が必要なものもあり、これらの取得に別途費用がかかります。

②必要書類
(a)申し立て書類
・未成年後見人選任申立書
・未成年者に関する質問票
・候補者質問票
・親族関係図
・同意書
・未成年者の財産目録

(b)添付書類
・戸籍謄本(未成年者、及び未成年後見人の候補者)
 ※外国籍の場合は、国籍の記載されている住民票
・住民票、もしくは戸籍の附票(未成年者、及び未成年後見人の候補者)
・親権を行う者がないことを証する資料
 ※親権者の死亡が記載された戸籍謄本、または行方不明の事実を証する書類等。
・未成年者の財産に関する資料(預貯金通帳、保険証書、不動産の登記事項証明書、給与明細、支出内容(学校の授業料や医療費、保険料、家賃等)を証明する資料)

なお、(a)申し立て書類については、家庭裁判所のホームページへ書式が掲載されているので、こちらをダウンロードして使用することができます。

また、資料のうち住民票・戸籍等の公的書類については原本を提出する必要がありますが、その他のもの(通帳や保険証書等)はコピーを提出します。

これらの書類を全て揃えた上で、家庭裁判所へ提出することで申立て手続きが完了します。
家庭裁判所では、これらを確認した上で本人らから聴取を行い、さまざまな事情を考慮した上で後見人候補者が適切であると認められたときに、未成年後見人の選任審判を行います。

3 未成年後見人の業務

未成年後見人は、親権者と同じ権利義務を有することとなります。主な業務は、未成年者の身上監護、及び財産管理の2点です。

(1) 財産状況の調査、家庭裁判所への定期報告

未成年後見人に選任されてまず最初の業務は、未成年者の財産状況を調査して管轄の家庭裁判所へ報告することです。これは、選任から1か月以内に行う必要があるため注意が必要です。

また、その後も、未成年者のために毎年支出すべき金額の予定を立て、年に1回、未成年者自身の生活状況及び財産状況を報告します。

(2) 日常業務

未成年後見人は、親権者と同じ権利を有するため、例えば未成年被後見人が相続をすることになったときや奨学金を借りるときといった法律行為を代理人として行うこととなります。

ただし、特に未成年後見人として、見成年被後見人の近しい親族が選任されていた時に相続が発生した場合には、未成年者と未成年後見人がいずれも相続人に該当するため、未成年後見人が代理人としての役割を果たすことが出来ない(利益相反)ケースが発生することが想定されます。

こういった場合には、未成年者に別途特別代理人を立てて対応することとなります。

(3) 報酬

未成年後見人から家庭裁判所に対して「報酬付与申立て」という形で請求があった場合のみ、家庭裁判所の判断により、未成年者の財産から報酬が支払われることとなります。
金額は、未成年後見人の業務状況等を鑑みて家庭裁判所が判断します。

4 未成年後見の終了

未成年後見業務は、この名前の通り未成年者のためのものなので、本人が成人した時点で未成年後見人の業務は終了となります。

しかしながら、未成年後見業務は、本人が成人すること以外にも、例えば未成年後見人自身が年齢や体調の関係で業務を続けることが難しくなり、家庭裁判所がそれを相当と認めたときや、未成年者の財産を横領する等の行為が未成年後見人によって行われていた等の未成年後見人による不正な行為が発覚した等の任務に適しない事情がある場合には、本人が成人する前であっても未成年後見人は解任されることとなります。

こういった場合には、速やかに次の未成年後見人が選任されます。

なお、未成年後見が終了した際には、終了した日から2カ月以内に本人の財産状況をまとめて家庭裁判所へ報告した上で、財産を本人へ引き継ぎます。