遺産相続

相続税の節税対策はある?

2020.01.13

相続対策は、財産を持っている被相続人が生きているうちでなければできません。
そのため、相続税の負担を減らしたいと考える方は、少しでも早く相続対策を考えて実行することが大事です。

1.相続税の節税基礎知識

相続対策を考えるうえでのポイントは、
 ①相続財産自体を減らす
 ②相続財産の評価額を下げる
 ③納税資金を確保する
の3点となります。

相続税の負担を少なくしたいと誰もが考えますが、相続対策を計画的に行わないと、相続税が支払えなくなったり、遺産分割の際にもめる原因になったりします。

また、相続対策として生前贈与を活用すれば相続財産を減らせますが、贈与税の税率は相続税の税率より高いため、トータルの税負担がかえって増えてしまうこともあります。
相続人と被相続人がコミュニケーションをとって、長期的な視点で相続対策を行うようにしましょう。

2.生前贈与による相続税対策

生前贈与を活用した主な相続税対策には次のものがあります。
 • 贈与税の基礎控除を毎年利用して相続税の課税対象となる財産を減らす
 • 分散して贈与することで税率を下げる
 • 収益物件を贈与して収益分が直接下の世代にいくようにする
 • 教育資金贈与の非課税制度で1500万円を非課税で一括贈与する
 • 贈与税の配偶者控除で2000万円を非課税で贈与する
 • 相続時精算課税を選択する
 • 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税枠を適用する
以下、それぞれについて説明します。

贈与税の基礎控除を毎年利用して相続税の課税対象となる財産を減らす
贈与税には毎年110万円を上限とした基礎控除があります。
毎年110万円までであれば、全額控除され、非課税で贈与を受けることができます。
なお、贈与税の納税義務があるのは受贈者(贈与を受ける人)であり、基礎控除も受贈者ごとに計算します。

ですので、例えば、子が2人いる場合は、それぞれに対して、毎年110万円ずつ非課税で贈与することができます。
反対に、父と母から一人の子に110万円ずつ合計220万円を非課税で贈与することはできません。
複数の人から贈与を受けた場合でも、110万円の基礎控除額に変わりはないのです。

分散して贈与することで税率を下げる
年間110万円を超える贈与には、贈与税が課されます。
そうすると、贈与税の課されない110万円だけを贈与する人が多いのですが、実は、財産の多い人は、110万円を超えてでも贈与した方が節税になることがあります。

相続税は、遺産総額が大きければ大きいほど税率が高くなる累進課税なので、財産の移転が相続時に集中しないように、少しの贈与税を払ってでも生前贈与を行って遺産総額を小さくし、相続税の適用税率を下げることが可能になるからです。

贈与税もまた累進課税なので、一年間に贈与が集中すると税率が高くなってしまうので、低い税率の範囲内で毎年分散して贈与しましょう。
もっとも、財産が相続税の基礎控除内に収まりそうな場合は、贈与税を課されてまで110万円を超える贈与をする意味はなく、この対策はあくまで数千万円単位の財産を持っている人向けの対策です。

なお、亡くなる前の3年間に行われた贈与については、相続税の課税対象となりますので早めに対策を始めましょう。(この間に支払った贈与税については、相続税から控除されますが、贈与税額の方が大きい場合でも差額の還付を受けることはできません。)

収益物件を贈与して収益分が直接下の世代にいくようにする
賃貸用のマンションなどの収益物件を持っていると、収益を生み出し、その分、相続税の課税対象となる財産が増加します。

収益物件は生前贈与してしまえば、贈与後の収益は、直接受贈者(贈与を受けた人)の財産になり、相続税や贈与税の課税対象とはなりません。
しかしこの場合、贈与税も相当発生することになるので、どのように贈与を行っていくのかは慎重に判断する必要があります。

教育資金贈与の非課税制度で1500万円を非課税で一括贈与する
教育資金贈与の非課税制度を利用すると、1500万円を非課税で一括贈与することができます。
もともと教育資金は都度贈与する場合には、特別な制度を利用しなくても、基礎控除とは別に贈与税は非課税となっています。
この制度の肝は、生前に一括で贈与しても非課税となることです。
教育資金が必要なタイミングで都度贈与しようと思っていても、もし亡くなってしまったら、その先は非課税で贈与することはできず、相続税の課税対象に組み込まれてしまいます。

この点、この制度を利用すると、生前にお孫様等の教育資金を非課税で一括贈与することができ、かつ、その贈与額相当分が相続税の課税対象とはなりません。
なお、この制度は現在、令和3年3月31日までの適用となっておりますのでご注意ください。

贈与税の配偶者控除で2000万円を非課税で贈与する
贈与税の配偶者控除とは、結婚20年以上の夫婦が、配偶者に自宅または自宅購入用資金を、2000万円を上限として、非課税で贈与することができる制度です。
通称、「おしどり贈与」とよばれています。
控除を受けるためには、次の3つの要件のすべてを満たしていなければなりません。
 • 婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
 • 自分が住むための国内の居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
 • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、受贈者がその住宅に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
配偶者は、相続の場合も大きな控除枠があり、相続税がかかることはあまりないので、おしどり贈与の特例は利用しない方が得なことが多いです。

利用すべきケースは、夫婦で賃借住宅に住んでいる場合に、妻が夫から不動産を取得するための資金(2000万円以内)の贈与を受けるようなケースです。
このケースでは、夫から妻へ生前に2,000万円までの贈与を非課税で行うことができます。また、通常相続開始前3年以内に贈与した財産は相続財産に加算されますが、贈与税の配偶者控除の適用を受けた財産は加算する必要がありません。

相続時精算課税を選択する
贈与を受けた財産について、相続時精算課税を選択すると、2500万円までは、基本的に贈与税の課税対象となりません。ただし、2500万円を超えるか否かにかかわらず、贈与した財産は、相続税の課税対象となります。(贈与税を支払った場合には、相続税から控除されます。また、納付した贈与税額が相続税額を上回る場合は還付されます。)

収益物件等を早く贈与したい、かつ、相続税の基礎控除額に余裕がある(=相続税がかからない)ため、贈与税ではなく相続税の対象にしたいという場合は、有効な制度です。

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
平成27年1月1日から令和3年(2021年)12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。

3.生命保険による相続税対策

死亡保険金は正確には相続財産ではありませんが、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。
しかし、全額が課税対象となるわけではなく、一定の非課税限度額が設定されます。
非課税限度額は、次の式で計算されます。

500万円×法定相続人の数

法定相続人が3人であれば、500万円×3人=1500万円が非課税となります。
受取人の数ではなく、法定相続人の数なので、ご注意ください。
なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には非課税の適用はありません。
生命保険には、一時払い終身保険というものがあります。
一時払い終身保険とは、保険料を一度に全額支払って一生涯保険が適用されるというもので、元本割れのリスクが非常に低い商品です。

例えば、法定相続人が3人いる場合は1500万円が非課税となりますが、これを有効に活用するために、保険料も受取金も1500万円の一時払い終身保険に加入します。
そうすると、被保険者が亡くなった時に、受取人は1500万円を非課税で受け取ることができます。

言い換えれば、加入から亡くなるまでの間、お金を保険会社に預けておくことで、限度額まで非課税で相続させることができる制度と言えます。

保険会社によって違いはあるものの、健康診断なしで90歳まで加入できるものもあります。
生命保険に未加入で、相続税の基礎控除額以上に財産を持っている人は、是非、利用すべきおすすめの制度です。

4.不動産による相続税対策

不動産を活用した相続税対策としては、次のものが挙げられます。
 • アパート・マンション経営
 • 小規模宅地等の特例の活用
 • 地積規模の大きな宅地の評価の活用
以下、それぞれについて説明します。

アパート・マンション経営
不動産の評価額は、実勢価格よりも低くなるため、現金を相続するよりも、不動産を相続した方が、節税になります。
よく知られた手法としては、アパートを建設して経営する方法や、ワンルームマンションを購入して賃貸する方法などがあります。賃借人(借りている方)の権利(借地権・借家権等)が考慮されるため、不動産の評価額が下がるのです。

ですが、これらの手法は、単なる相続税対策ではなく、不動産投資です。
投資として損しないかどうか、自分でも知識をつけつつ、複数の詳しい人に相談して、物件を決めるようにしましょう。

小規模宅地等の特例の活用
「小規模宅地等の特例」とは、亡くなった人の自宅の土地や、亡くなった人が事業に使っていた土地を相続する場合に、一定の条件を満たせば、相続税を計算する際の土地の評価額を最大8割引きにしてくれる制度です。
正式名称は、「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」なのですが、長いので、「小規模宅地等の特例」とよばれることもあれば、「等」を省いて「小規模宅地の特例」とよばれることもあります。

また、土地の評価額を減額する制度なので、「小規模宅地の評価減」とよばれることもあります。
「小規模」とあるように、この特例がサポートするのは、面積の小さな宅地のみです。
広い宅地にも適用することはできますが、評価額が減額されるのは、居住用宅地の場合は330平方メートル分のみです。
適用面積に上限があるため、地価の高い場所で適用を受けた方が、相続税対策として効果的です。
効果的に活用するために、地価の安い自宅を売却して、地価の高い場所に移転する人もいます。

地積規模の大きな宅地の評価の活用
大規模宅地の評価額を減額するものには、「地積規模の大きな宅地の評価」という制度があります。これは、都市計画法の制限等の関係で広大地であるにもかかわらず高層建物が建てられないような広大地の評価額を下げる制度です。
こちらは2018年から新しく始まった制度で、それ以前は、広大地の評価という制度がありました。
適用できるかの判断は極めて困難ですので、専門家や役所に確認を行う必要があります。

5.その他の相続税対策

その他、次のような相続税対策が挙げられます。
 • 養子縁組
 • 墓地などの生前購入
以下、それぞれについて説明します。

養子縁組
養子縁組をすると法定相続人の数が増える場合があります。
法定相続人の数が増えると、相続税の基礎控除額と死亡保険金の控除額の上限金額が上がり、非課税で相続させることができる金額が大きくなります。

墓地などの生前購入
墓地などは非課税財産なので、亡くなる前に購入しておくと相続税対策になります。
ただし、骨董品としての価値がある物や、純金などの素材として価値がある物の場合は、非課税にはならない場合があります。