遺産相続

『贈与税』ってなに?贈与税のキホン

2020.01.12

「贈与税」は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。
相続や遺贈(死因贈与も含みます。)により財産を取得した場合には、その財産について相続税が課せられます。しかし、被相続人が生前に、配偶者や子どもなどに財産を贈与すれば、相続税はかかりません。

このような不公平を解消し、相続税で課税されない部分を補完するために、生前贈与に対する課税措置を講じ、これを防止するというのが贈与税のもともとの趣旨です。

しかし、贈与であっても贈与税が課されない場合があります。今回は、贈与税が課されない場合としてどういった場合があるのか、課される場合にはどういった手続きを行う必要があるのかについてみていきます。

1.贈与税がかからない財産

贈与を受けた財産でも、次のものについては贈与税が課されません。

1. 法人からの贈与により取得した財産
2. 夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
3. 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う一定の者が取得した財産で、その公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
4. 奨学金の支給を目的とする特定公益信託や財務大臣の指定した特定公益信託から交付される金品で一定の要件に当てはまるもの
5. 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
6. 公職選挙法の適用を受ける選挙における公職の候補者が選挙運動に関し取得した金品その他の財産上の利益で、公職選挙法の規定による報告がなされたもの
7. 特別障害者扶養信託契約に基づく信託受益権
8. 個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの
9. 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
10. 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
11. 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
12. 相続や遺贈により財産を取得した人が、相続があった年に被相続人(亡くなって財産を残す人)から贈与により取得した財産

この中で、特に気を付けるべき1、2、4、8、9及び12について、以下にて説明します。

 

法人からの贈与により取得した財産
贈与税は、相続税の補完税という性格から、その納税義務者である受贈人は、原則として個人に限るとともに贈与税も個人に限ることになります。
したがって、相続(自然人の死亡)という事実が起こり得ない法人については、相続税の補完という問題が生じないので、法人から贈与により取得した財産については、贈与税を非課税とし、所得税を課することとしています。

扶養義務者からの生活費・教育費
夫婦や親子はお互いに扶養する義務があります。
扶養とは、自活できない状態の人の経済的な面倒をみることです。
例えば、未成年者の多くは自力で生活できないでしょうから、親などが、生活費や教育費を出してあげて扶養する義務があります。

このような扶養義務者からの生活費や教育費としての贈与は、非課税となります。
なお、ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。
そして、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。

したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを貯蓄したり株式や不動産などの購入資金に充てている場合には、贈与税がかかることになります。
なお、上記10にあるように、教育資金の一括贈与を受けた場合でも一定の要件を満たせば、贈与税が課せられません。

また、上記11にある結婚・子育て資金についても、必要な費用の都度贈与であれば、元々贈与税がかかりませんが、一定の要件を満たせば、一括贈与の場合でも贈与税が課せられなくなります。

教育資金の一括贈与と結婚・子育て資金の一括贈与で取り扱いが異なる点もあります。
教育資金の一括贈与では、贈与者の死亡時に使い切れずに残っている金額に対して相続税はかかりませんが、結婚・子育て資金の一括贈与では、贈与者の死亡時までに使い切れずに残っている金額に対して相続税が課せられます。

奨学金
奨学金を受け取った場合ですが、貸与型の場合は借金と同じなので贈与税も所得税も発生しません。

一方、返済義務のない給付型により奨学金を受け取った場合ですが、法人から受け取った場合は前述のとおり所得税が課されます。しかし、所得税は学資に充てるため給付される金品は非課税としているため、所得税はかかりません。

次に法人以外から給付型の奨学金を受け取った場合ですが、上記4の一定の要件を満たす団体からの給付であれば贈与税が非課税となりますので、給付団体に確認しましょう。
なお、親が貸与型の奨学金の返済を肩代わりしたような場合は、原則として贈与税が課されてしまいます。

学費を必要な都度贈与しているような場合だと、上記2に該当し贈与税非課税となり、学費を一括贈与し、一定の要件を満たせば上記10で贈与税非課税となりますので、大学入学等を控えた子や孫のいるご家庭では、これらの制度も併せて検討すると良いでしょう。

香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物、見舞い
香典などについては、社会通念上相当と認められるものに限っては非課税です。
社会通念上とは、常識的にというような意味です。
常識的な額であれば非課税になりますが、常識的な額よりも高額なものについては贈与税の対象となります。

なお、相続税の計算をする時に、葬式費用はプラスの財産から控除されますが、香典が非課税となっているので、香典返しを葬式費用に加えることは当然できません。

住宅取得等資金
直系尊属から住宅の取得などのための資金として受けた贈与は、一定の条件を満たした場合は非課税になります。

相続があった年に被相続人から贈与により取得した財産
相続税は人が亡くなった時に課税されます。そうすると、相続税がかからないように、亡くなる直前に子供たちに財産をあげてしまおうという人が出てきてしまいます。そのため国は、相続税よりも税率を高くした贈与税という税金を設けています。

しかし、平均寿命が80歳を超える現代では、様々なタイミングで高い税率だと知りながらも贈与税を負担し、生前贈与を行なわなければならない時もあるでしょう。
そのような場合の救済措置として、要件を満たせば、亡くなる前3年以内の贈与については、贈与税ではなく相続税を課すこととしています(なお、3年内の贈与について贈与税が納付されている場合、この納付分については相続税額から控除されます。)。

したがって、亡くなった年に行なわれた贈与には贈与税を課さない(相続税が課される)ため、贈与税の非課税財産として列挙されています。

2.贈与税が課せられるとき

贈与税の課税方法には、原則的な課税方式である「暦年課税」と、一定の要件に当てはまる場合に選択することが出来る「相続時精算課税」の2つがあり、贈与者ごとに選択することができます。

暦年課税
贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産(みなし贈与財産を含みます。)の合計額から、基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。
したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。

相続時精算課税
「相続時精算課税」を選択した贈与者ごとにその年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から2,500万円の特別控除額を控除した残額に対して贈与税がかかります。

なお、この特別控除額は贈与税の期限内申告書を提出する場合のみ控除することができます。

また、前年以前にこの特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となります。

3.贈与税の申告と納税

贈与税がかかる場合及び相続時精算課税を適用する場合には、財産をもらった人が申告と納税をする必要があります。申告と納税は、財産をもらった年の翌年2月1日から3月15日の間に行ってください。

なお、相続時精算課税を適用する場合には、納税額がないときであっても財産をもらった年の翌年2月1日から3月15日の間に申告する必要があります。
税金は金銭で一度に納めるのが原則ですが、贈与税については、特別な納税方法として延納制度があります。
延納は何年かに分けて納めるものです。
この延納を希望する方は、申告書の提出期限までに税務署に申請書などを提出して許可を受ける必要があります。

相続税も贈与税も、税率が財産の価格に応じた累進税率となっているため、どちらが得になるかを一概に申し述べることはできません。両者の税率のバランスを考え、贈与税および相続税の合計が最小になるように生前対策を講じることが肝要となります。