遺産相続

相続税に時効はあるの?

2020.01.10

日本では、時効という法律の制度があります。
これは、実際の法律関係とは異なる事実関係が一定期間継続した場合に、当該事実関係に基づく法律関係の変更を認める制度です。

具体的には、他人の物を自分の物として一定期間保有し続けた場合に、保有者にその所有権の帰属を認める取得時効と、履行しなければならない債務を履行しないまま一定期間が経過した場合に、その債務の消滅を認める消滅時効の二つがあります。

1.相続税の時効とは一体どのようなものか

では、この消滅時効は相続税についても発生するのでしょうか。もし相続税についても消滅時効が認められるとすれば、相続人は一定の要件と一定の期間を経れば相続税債務の消滅を主張でき納税する必要がなくなります。
相続財産によっては相続税も高額になりますので決して軽微な問題ではありません。以下では、相続税の消滅時効について解説していきたいと思います。

2.そもそも相続税の時効は認められるのか

そもそも、税金のような国や地方自治体が債権者となる場合にも、消滅時効は認められるのでしょうか。結論から申し上げると、相続税のような税金も消滅時効の制度は存在します(正確には、除斥といいますが、ここでは消滅時効という表現で説明致します。)。しかも普通の債権より短期間で消滅時効が完成するのです。

具体的には、時効の期間は、相続税の申告期限の翌日から5年または7年と決められています。

つまり、被相続人が亡くなると相続が発生し、亡くなった日の翌日から10ヶ月後に相続税申告期限が来ますが、その申告期限の翌日から5年間が経過すると、相続税を申告も納付もしなくて良いということになります。
ただし、ここで注意して欲しいのは、時効が関係してくるのはあくまでも善意の相続人のみとなります。

どういった場合に相続税の消滅時効が発生するのか。相続人が、相続税が発生するのか、またはしないのかを知っていたか、または知らなかったかによって消滅時効に必要な期間がかわります。

<相続税の発生を知らなかった相続人>
相続税の発生を知らなかった相続人とは、そもそも相続財産の存在に気づいていなかった相続人や、相続財産の存在は知っていたが、相続税が発生するほど相続財産があると思わなかった相続人を言います。

ただし、相続財産を調べればすぐに発見できるような場合や、相続財産の価格を調査すれば容易に相続財産の価値がわかり相続税の発生がわかるような場合は「知らなかった相続人」には含まれません。以下の「知っていた」場合と同様に扱われます。

そしてこの場合、相続税債務は相続税申告期限の翌日から5年間で消滅することになります。つまり相続開始から5年10か月経過すれば相続税の納税義務はなくなります。

<相続税の発生を知っていた相続人>
相続税の発生を知っていたが申告、納税をしなかった相続人の場合は相続税申告期限の翌日から7年で相続税債権の消滅時効が完成します。つまり相続開始から7年10か月経過すれば、相続税を支払う必要はなくなります。

3.相続税の消滅時効を待つべきか

「7年間税務署にばれなければ、相続税を支払わなくてもよくなる」そういった理由で相続税の申告、納税をしないのはとても危険です。
相続税が課税される相続の場合は、ほとんどと言っていいほど税務署はその事実を把握しています。
相続人以上に相続財産について知っていると言っても過言ではありません。相続税債権の消滅時効を待つのはお勧めしません。税務署は不動産の動きや、資産の動きを逐一調査しています。

なお、相続税の発生を知っていながら、申告や納税をしない場合は重加算税及び延滞税が課され、重加算税の場合は40%にも及ぶ加算税が課されますので、相続税の申告が必要な場合は必ず、隠したりせず税務署に申告及び納税をしてください。

相続税の申告期限は相続開始を知った時の翌日から10カ月以内となっており、相続財産の正確な価値の調査や、実際に相続財産がどれくらいあるのかの調査は時間がかかりますし難しい場合もあります。

また相続財産調査、相続税の申告、納税以外にも相続においては3カ月以内に相続をするか放棄をするかを決めなくてはいけませんし、遺産分割など相続人同士で話し合いをする必要があり、時間が足りないような事態になります。

こういった場合は専門家に依頼してしまった方が余計な事に悩むことがなく相続問題がスムーズに解決していきますので、悩まず思い切って依頼してしまった方が良いかもしれません。

4.税金の還付を受ける請求にも時効(期限)がある

時効による消滅は、相続税債務に限られません。逆に、納税した額が実際に納税しなければいけない額より多かった場合には、払いすぎた分の還付請求権が消滅時効により消滅することもあります。

そして、還付請求権は申告期限から5年経過することで時効消滅しますので、還付請求が出来ることが分かったら、すぐにでも請求した方が良いでしょう。

5.時効の期間が中断することも

一定の要件を満たすと消滅時効の期間の進行が中断する場合があります。つまり時効の進行がとまり、時効消滅の効果が発生しなくなることになります。
主なものとして、債権者が訴訟を提起した場合や、支払い督促の申立てをした場合等裁判所による手続きをした場合です。
他にも債務者が一部支払いをした場合にように債務の存在を認めた場合など、これらの行為があった場合は時効期間の進行は一旦中断し、消滅時効が完成しなくなります。

6.まとめ

以上、相続税にも消滅時効があることを説明させて頂きました。
なお、繰り返しになりますが、消滅時効の制度はあるものの、時効完成前からその積極的な利用を試みるのは、リスクが大きくお勧めすることはできません。
また、そもそも税務署が何年も相続に気づかず、請求を怠ることはほとんど考えられませんので、現実的に消滅時効が完成する場合は皆無に近いです。

納税は気が進むものではありませんが、相続税には様々な控除や特例の制度もありますので、まずは、隠したりせず専門家に相談されることをおすすめします。