遺産相続

相続人の中に認知症の人がいる場合ってどうしたらいいの?

2019.12.18

今や日本で認知症を患っている人の数は、2012年時点で約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症と言われ、2025年には高齢者の4人に1人が認知症になると考えられています。

年々増え続けている認知症患者ですが、被相続人が亡くなり、相続をすることになったとき、相続人の中に認知症の人がいたらどうしたら良いのでしょうか?

1.相続人の中に認知症の人がいる場合

 相続人の中に「認知症」の人がいた場合、あなたならどうしますか?
 

 被相続人が亡くなったという事実を認識することが不可能なほど症状が重い認知症であっても、その人が相続人であるということは変わりません。

 遺産分割協議から認知症の人を外すことはもちろんできませんし、認知症である相続人以外の人で行われた遺産分割協議書は無効となります。
 

 では、上記のように、相続人の中に認知症を患っている人がいた場合、どのように手続きなどを行えば良いのでしょうか?
 

 認知症を患っている方は、判断能力が不十分であるため、何らかの意思表示を行ったとしても、法的に無効となってしまいます。
 

 ですが、先ほどもお話したように、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、認知症の方は代理人を立てなければなりません。これを「成年後見制度」と言います。

 成年後見制度は、「法定後見制度」「任意後見制度」の2つに分けられ、その中でも法定後見制度は「成年後見」「保佐」「補助」の3つに分かれます。

「成年後見」:十分な判断能力を有していない方が、不利益を被らないよう、家庭裁判所に申立を行い、本人を援助する後見人をつける制度のこと。

「保佐」:精神障害や認知症によって、日常的なことを1人で行うことは可能だが、重要な法律行為を行うことは難しい、という場合に家庭裁判所によって保佐人が選任され、家庭裁判所が定めた特定の行為や重要な行為に関して代理権、同意権が認められる制度のこと。

「補助」:日常生活に特に問題はないが、本人が1人で行うことが難しいことが発生した場合にのみ補助を行う制度のこと。家庭裁判所が定める特定の行為に関して同意権が認められる。

 次の記事では、「成年後見制度」の手続きの流れについてお話していきます。

2.「成年後見制度」とは

 「成年後見制度」とは、認知症や、交通事故で植物状態になった場合など、知的障害や精神障害が原因で、十分な判断能力を持っていない方に代わり、成年後見人や保佐人、補助人などの代理人が身の回りの世話をしたり、財産に関する法律行為を代理、同意、取り消したりする制度のことです。

 まず、法定後見制度を利用するには、被後見人が成年後見、保佐、補助のどこに該当するのか、検討する必要があり、その判断は家庭裁判所が行います。

 判断の大まかな流れは以下の通りです。

①医師からの診断書の取得
裁判所は医師の意見を踏まえて決定を行いますので、判断能力の有無に関する医師の意見が記載された診断書の取得が必要です。

本人のかかりつけ医やケースワーカーの方などに相談し、診断書の取得を進めましょう。医師によっては、本人の社会的、家庭的状況などに関する情報を事前にまとめておいてほしいとおっしゃる方もおられるので、診察に行かれる前に事前確認が必要です。

②家庭裁判所にて手続きを行う

(1)申立
本人情報シート、医師が作成した診断書、その他各種書類、手続料などが必要になります。各家庭裁判所のホームページに詳細がまとめられているので、そちらもご参照ください。

(2)調査鑑定
本人の判断能力の鑑定を行ったり、裁判所から事情を尋ねられたりする場合があります。

(3)審判
後見開始の審判・成年後見人の選任が行われます。

(4)後見事務
後見人の選任後、家庭裁判所へ書類の提出などを行います。

3.後見人の業務

 家庭裁判所で成年後見人の選任が決定された後、選任された後見人が以下のような業務を行っていきます。

・身上監護
被後見人が、適切な生活を送ることができるように、被後見人の介護や普段の生活、医療などに関する「身の上」の手続きを行います。
例えば、介護保険に関する手続きや施設への入所、退所手続き、さらに住居の確保に関する手続きを行う必要があります。

・財産の管理
被相続人に代わって、毎年の確定申告を行ったり、必要な場合には不動産を売却したり、預貯金を管理するのみでなく、法律に関する様々な手続きや、税金に関する手続きも行います。

・家庭裁判所への報告
上記に記載した身上監護や財産管理など、業務について家庭裁判所に報告をしなければなりません。家庭裁判所から、定期的に報告を求める指示がありますので、届いた書式に沿って、報告書を作成します。

 もちろん、後見人は家族や友人がなることが可能ですが、様々な手続きを行う際に手間がかかってしまったり、法的な知識や税金に関する知識など、専門的な知識が必要な場面が多く出てきたりします。

 ですので、弁護士を後見人として選任し、財産の管理や生活に関することを的確に行ってもらうことをおすすめします。

4.まとめ

 今回の記事では、相続人の中に認知症の人がいた場合、「成年後見制度」についてと手続きの流れ、後見人の業務についてお話しました。

 認知症患者は増え続けていますので、自分が相続人の立場になったとき、他の相続人の中に認知症の人がいたり、もしくは自分自身が認知症になったりしている可能性もあります。

 この記事を読むことで、いざというときに備えて後見制度についての知識をつけておきましょう。