遺産相続

預貯金って、被相続人が亡くなった後は下ろせるの?

2019.12.14

 人が亡くなったあと、その人名義の預貯金が下ろせなくなるということを聞いたことはないでしょうか?

 もしも人が亡くなってしまった場合でも、葬儀代や遺された家族等の日常の生活費は必要になってきますが、預金口座が凍結(預金が下ろせない事態)してしまっては、出金ができなくなってしまいます。

 人が亡くなると多くのお金が必要となりますから、人が亡くなったあとに亡くなった人の預金口座が凍結されてしまうのは不都合なことなのです。

1.口座名義人が死亡したら預金口座は凍結される

 銀行口座の凍結とは、銀行や信用金庫などの金融機関が預金口座の取引を停止することです。

 口座名義人が死亡したら、金融機関がその死亡を知った時から預金口座は凍結されてしまいます。

 そうなると、家計を管理していた預金口座が故人の預金口座であった場合、家計を管理していた預金口座が使用できなくなってしまいますので、これはとても不便です。

 金融機関がどのようにして口座名義人の死亡を知るのかというと、通常は親族の金融機関への連絡によって知ることになります。

 預金口座が凍結してしまった後では当然、現金を引き出すことができませんから、口座が凍結されてしまった後もある程度のお金を調達できるようにしておくことが重要になってきます。

2.特別に出金できる場合がある

 このように、人が亡くなった後、故人の口座は凍結されてしまいますが、実は、特定の場合に限って、凍結された預金口座から引出しを行うことが可能です。

 具体的には、「預貯金の仮払い制度」を使った場合です。

 相続法の改正により、以前まで必要であった相続人全員の同意がなくても、遺産分割の決定がなされる前に預貯金の仮払いを受けることができるようになりました。

 では、具体的に民法にはそのように定められているのでしょうか、見てみましょう。

民法909条の2
各共同相続人は、遺産に属する預金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算出した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額(標準的当面の生活必用生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して、預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

 この条文の内容をかみ砕いて計算式にすると、各共同相続人は
故人の口座に入っている預貯金額×1/3×相続人の法定相続分=単独での仮払い可能額の仮払いを受けることが出来るということになります。

 また現在、「法務省令で定める金額」は150万円ですので、仮払い制度の上限額は150万円となります。

3.仮払い制度での預貯金引出方法

 仮払い制度による預貯金の引き出しには、手続に以下のような書類が必要となります。

 金融機関ごとに必要書類が異なる場合もありますので、金融機関に一度問い合わせてから必要な書類を準備するのが適当です。

・故人の除籍謄本、戸籍謄本(または全部事項証明書)
・相続人全員の戸籍謄本(または全部事項証明書)
・預金の仮払いを希望される方の印鑑証明書

4.預金口座凍結の解除方法

 次に、口座凍結の解除の手続の方法についてですが、相続人を全員特定するため、亡くなった人が生まれてから亡くなるまで(出生から死亡まで)の戸籍の謄本類と、相続人全員の戸籍の謄本類はどの金融機関でも必ず必要になります。

 もし、亡くなった人と相続人全員の戸籍の謄本類の内、1通でも不足していれば、口座凍結の解除の手続を進めることができなくなります。

 そのため口座凍結を解除するためには、まず戸籍の謄本類を集めなければいけません。

 そして、口座凍結を解除するためには、遺産分割協議書、または、金融機関が指定する書面に、相続人全員の署名と実印の押印が必要になるため、戸籍の謄本類から導き出された相続人全員と、遺産分割の話合いをする作業も必要になります。

 さらに、相続人の本人確認と意思確認のために、各自の印鑑登録証明書も必要になります。

 そのため、誰が、何を、どれくらい相続するのかということが、相続人全員で、決定されている状態でなければならないわけです。

 そして最後に、金融機関が指定する書面に必要な事項を記入して、戸籍の謄本類、亡くなった人の通帳、遺産分割協議書又は遺言書の原本等と一緒に、金融機関に提出します。

 その後、金融機関で書類審査が行われ、不備・不足が無ければ、亡くなった人の銀行口座が解約され、その時点で、口座凍結も解除されることになるのです。

5.まとめ

 人が亡くなったときに預金が凍結されてしまうことは意外にも知らない方も多いのではないかと思います。

 今回ご紹介したように、人が亡くなった後は金融機関の預金口座が凍結されてしまいますが、一定の手続をとることで仮払金という形で口座から仮払いを受けることができますし、このような制度があることを知っておくだけでも一つの準備、有意義な情報となるでしょう。