遺産相続

祭祀の承継とは?どうやって決まる?

2019.11.16

ご家族の死後、誰が葬儀を取り仕切るのか、お墓の購入費用は誰が負担するのか等疑問に思ったことはないでしょうか。
お墓や仏壇は比較的高価なものですが、これらが相続財産に含まれるかどうかご存知でない方も多いと思います。
今回は、お墓等が法的にどのように扱われるかについてご説明します。

1 祭祀財産とは

(1) 祭祀財産

系譜、祭具、墳墓のことを祭祀財産といいます。少々分かりにくいですが、「系譜」はいわゆる家系図、「祭具」は位牌や仏壇など、「墳墓」は墓地や墓石のことをいいます。
これら祭祀財産は、預貯金や不動産のように相続の対象となる財産にしてしまうと、相続人間で分散され、祖先を祀るという目的が達成されなくなるおそれがあるため、相続財産にはならないとされています。

(2) 遺骸・遺骨

遺骸・遺骨は祭祀財産に含まれませんが、仏壇や墓地と同じように、祭祀承継者が管理すべきものと考えられています。
判例でも、祭祀承継者が他の者に対し、遺骸・遺骨の引渡しを請求できると判示したものがあります(最三小判平成元年7月18日)。
もっとも、遺骨を一部分骨して他の相続人に分けることなどはよく行われており、他の相続人が遺骨をほしいと思う気持ちを尊重することが必要な場面もあるでしょう。

(3) 香典

香典は、喪主あるいは遺族への贈与として交付されるものと考えられていますので、これも相続財産にはあたりません。喪主が葬儀費用に充てることが一般的ですが、もし葬儀費用を差し引いても残額があった場合には、将来行う法事の費用に充てるなどが考えられます。
余っているのなら相続人間で分配してほしいと思われるかもしれませんが、相続財産ではないため、当然に分配を求めることはできません。

2 承継者の決め方

祭祀財産が相続の対象にならないのであれば、誰が承継することになるのでしょうか。
民法897条1項には、

「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。」

同条2項には

「前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。」

と規定されています。

すなわち、
①被相続人が生前に指定した人
②慣習
③家庭裁判所が決める
という順序になります。

①について、生前の指定は、相続財産のように正式な形式に則った遺言によることは求められておらず、口頭で指定しておくだけでも問題ありません。もちろん、遺言書によって指定しておくことがトラブルを防ぐことは間違いありません。

②については、一族の慣習や地域の慣習によるものです。相続人で話し合いを行う、合意の上で誰が祭祀を承継するか決めることも可能です。

③は、慣習や相続人間での話し合いでも決まらない場合には、家庭裁判所に祭祀承継者決定のための調停を申し立てることになります。

3 相続との関係

前述のように祭祀財産の承継は相続と無関係のため、祭祀を承継した相続人が高価な墓地を承継したから、あるいは法事にお金がかかるからなどと言って、相続分が増減することはありません。

祭祀承継者が相続財産を多くもらうよう要求するというケースが時折あるようですが、法的にはこの求めに応じる必要はありませんのでご安心ください。ただ、祭祀の承継者は、被相続人と同居していたり、家業を承継していた人がなることが多いです。

祭祀の承継者がこれらの理由により遺産の維持や増加に特別の寄与をしていた場合には、寄与分という制度により相続分が増加することも考えられます。

また、祭祀財産の承継が相続と無関係である以上、相続放棄をした場合であっても祭祀財産を承継することは可能です。
被相続人に多額の借金があり相続放棄した場合であっても、祭祀承継者になることはできます。

なお、祭祀財産は相続財産には含まれないため、高価な仏壇等であっても相続税がかかることはありません。そのため、相続税対策として、被相続人が生前にお墓や仏壇を購入することも行われています。

4 まとめ

今回は、祭祀財産、祭祀の承継についてご説明しました。死後に不要なトラブルを招かないよう、祭祀財産を誰が承継するのかについては、生前に決め、相続人全員に伝えておきましょう。

また、祭祀財産は相続財産とは無関係とはいえ、慣習によっては盛大に法事を開催し、祭祀承継者の費用負担が大きくなることや、反対に価値の高い仏壇や墓地を承継することも考えられます。

各相続人の財産状況も考慮し、祭祀財産とは別に相続財産についてどう分割するのか、遺言書を作っておくことも重要です。
財産が多い場合には相続税対策も必要となりますので、まずはお気軽に相続に強い弁護士等の専門家へご相談ください。