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生前の相続対策

不動産を次の世代に引き継いでいくために

2019.05.07

日本におけるマイホーム率は80%を超えており、ほとんどの家庭が自宅を所有しています。つまり、日本人が亡くなって相続が発生した場合、そのほとんどの相続では遺産に不動産が含まれていることになります。しかし、不動産を所有している場合、相続を見据えるといろいろと考えなくてはならない事柄が多数あります。

不動産を所有している人が相続を見据えたとき、気を付けておかなくてはならない点をまとめてみましたので、ご自身の相続で考えておかなくてはならないことのヒントにされてみてください。

 

1 共有不動産の弊害

不動産を所有していて、これが遺産に含まれる相続が発生した場合、この不動産を法定相続分で共有にするケースをよく見かけます。例えば、長男と次男が相続人で、互いに公平な相続をしたいということで、不動産だけでなく預貯金や株式なども全て2分の1ずつにする家庭は多いでしょう。
日本人の気質的に、お金や財産の話を正面切って行うことに消極的ですので、財産の分け方に関して生産的な話し合いが行われているケースは稀かと思われます。

不動産を所有していれば、不動産の修繕・リノベーション・賃貸・売却など、何らかの行為が必要になる場面に出会うでしょう。このとき、不動産が一人での単独所有であれば、その一人が意思決定すれば何でも対応できますが、これが共有であれば、共有者での意見の擦り合わせが必要になります。
この意見が食い違うこともあり得るでしょうが、所有関係が共有の場合、意見が食い違ってしまうと何もできない状況に陥ってしまいます。

だとすれば、不動産は単独所有にしておくべきですので、相続に伴って不動産が共有になることは避けなくてはなりません。

2 不動産がある場合、遺言書を作るべき?

前述の通り、不動産がある場合は共有関係を作らず、相続人の内の一人が不動産を引き継いでいくべきでしょう。そのためには遺言書を作成すべきなのでしょうか?答えは・・・「作るべき」です。

相続が発生した場合、遺言書があれば遺言書の通りに相続が行われますが、遺言書がない場合には相続人全員で遺産分割協議を行い、被相続人が残した遺産を具体的にどのように分けるのか話し合いを行います。
このとき、必ずしも遺産分割協議がスムーズにまとまるかどうかは分かりません。

やはり、どれだけ仲の良い家族であっても、財産の話となると別問題ですし、様々な感情が入り混じります。また、自宅不動産となると、自分が大切にしていた両親が住んでいた自宅で、自分も幼い頃を過ごした場所ですので、何とか自分の手元に残したいと考えるのが普通でしょう。

このように、遺産分割協議が成立しないとなると、もはや法定相続分で分けるしか選択肢がなく、二人兄弟なら不動産だけでなく預貯金や株式など他の遺産についても2分の1ずつ相続することになります。
これでは、ご自身の死後、不動産が共有になるかならないかは、残された子供たちがスムーズに話し合いを行えるかどうかに委ねられることになってしまいます。

そこで、ご自身が元気なうちに誰に不動産を相続させて、単独所有で不動産を守って行ってもらうかは決めておき、その内容を全て遺言書に書き記しておきます。
そうすれば、遺言書の通り、単独所有で相続を実現することが可能です。(よく「うちの子供たちは仲が良いから、相続での揉め事なんて気にする必要がない。」と仰る方はいらっしゃいます。

しかし、相続の紛争は、仲の良し悪しではありません。やはり子供たちも生活がありますし、長年の感情論もありますので、仲が良くても相続でボタンの掛け違いが生じるケースは後を絶ちません。)

3 遺言執行者は必要?

遺言書を作成するときのポイントは、弁護士などの専門家を「遺言執行者」に選任しておくことでしょう。遺言執行者を選任していた場合、遺言書を実現するのが遺言執行者の職務になります。

残された遺言書の内容に子供たちが本心から納得するかどうか分かりませんので、その遺言書の内容実現を本人たちの手に委ねると、手続きが滞るおそれがありますし、子供たちに手続きを行う労力を掛けることになってしまいます。

必ず遺言執行者を選任した遺言書を作成するように心掛けましょう。遺言書の案も専門家に作ってもらった方が安心です。

遺言書を書くということは、残された家族に対してしてあげられる最後の手伝いかもしれませんが、遺言執行者を就けておくことで、残された家族が行わなくてはならない煩雑な相続手続きを格段に減らすことができます。

残された家族が、家族を失った悲しみから立ち直っていない状況で、各種の事務手続きを行わなくてはならない状況を作らないためにも、遺言執行者の選任を前向きに考えてみましょう。

4 不動産を次の世代で売却されないための民事信託

今から相続対策として遺言書作成などを考えてらっしゃる方のご相談を伺っていると、「私の家は古い家系で、先祖代々引き継いできた土地がたくさんある。子供たちの代になって、多少土地を売却してしまうことは仕方ないことなのかもしれないが、可能な限り土地を売却しないようにしたい。」と、ご自身の死後、不動産の処分がどうなるかを気にされる方を多数見かけます。

では、このようなご自身が亡くなった後、子供たちが不動産をどうするかについて、遺言書を作ると縛ることができるのでしょうか?

答えは・・・「できません。」
遺言書はあくまで、残された遺産を誰に相続として承継させるかを記載するだけのものであり、これを子供が承継した以上は、子供の財産となります。その子供が自分の財産を保有し続けるか売却するかは、現所有者である子供自身の問題ですので、遺言書で口を挟める事柄ではありません。

では、他に方法はないのでしょうか?これが民事信託(家族信託)の受益者連続信託を使えば可能となります。この「受益者連続信託」とは、被相続人が自身の不動産を信託し、これを受け継ぐ人を何代も先まで指定できる制度です。(分かりやすくするために、すごく大雑把な説明の仕方をしていますので、厳密には正確ではありませんが。)

この受益者連続信託は、あくまで信託契約の目的の範囲内でしか不動産の売却を行うことができませんので、目的の設定の仕方次第では、子供たちの不動産処分を縛ることができるようになります。

上記のようなニーズをお持ちの家庭では、信託も検討してみたら、実現できるニーズが増えるかもしれませんね。信託については、詳しい専門家が少ないのが現状です。必ず民事信託に詳しい専門家に相談するようにしてください。

5 まとめ

今回は、不動産を所有されている方が将来の相続を見据えた場合に、気を付けておかなくてはならない点をまとめてみました。ただ実際は、不動産をどの程度所有しているか、どんな不動産か、いくら分持っているか、他の資産状況はどうか、相続人は誰が何人いるか、相続税の課税見通しはどうか、など極めて様々な事柄を考えなくてはなりません。

おそらく、相続の専門家でないご自身がどれだけ考えを巡らせても、本当にベストな相続対策へ辿り着くことはおよそ不可能でしょう。
そのため、必ず紛争回避の観点・資産運用の観点・相続税節税の観点など、多種多様な観点から相続を観察するため、相続の専門家に相談をされてください。

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