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相続のトラブル・紛争

遺産分割調停はどう進めればいいの?

2017.09.11

遺産分割調停はどう進めればいいの?

<相談内容>
父が亡くなり,相続人は母(福岡在住),兄(札幌在住),私(福岡在住)です。遺産をどのように分けるか話し合いましたが,兄と私が互いに譲らず遺産分割協議がまとまりません。そこで調停をしたいのですが,母に心配をかけないために,私と兄だけで行うことはできるでしょうか。また,兄は遠方に住んでいるのですが,調停はどこで行うのでしょうか。

 遺産分割協議がまとまらない場合,家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることが一般的です。今回は,遺産分割調停の手続についてご説明していきます。

1 遺産分割調停とは

 遺産分割について共同相続人との間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所に遺産分割を請求することができます。(遺産分割の協議が有効に成立した場合には,後になってその内容が不服であっても遺産分割を申し立てることはできないので注意が必要です。)
 遺産分割の請求は,調停又は審判の申立てということになっています。しかし,家庭裁判所は審判が申し立てられた場合でも職権により調停に付すので,実際はまず調停を行うことになります。
 調停をしても,不成立となった場合は審判に移行します。これは当然に移行するため,改めて審判申立て等を行う必要はありません。
 調停手続では,裁判官である家事審判官1人と,調停委員2人以上で構成される調停員会が,当事者双方から事情や意見を聞いて,当事者に助言や提案を行い,合意を目指した話し合いが進められます。調停が成立すると「調停調書」が作成されますが,これは確定判決と同じ効力があるので,強制執行をすることができ,より確実に遺産を分割できます。

2 調停手続

 遺産分割調停は,他の共同相続人全員を相手方として申し立てなければなりません(もし一人でも抜けた状態で調停が成立しても,無効になってしまいます。)。上記の相談事例では,相談者が申立人となり母と兄を相手方とするか,相談者と母が申立人となって兄を相手方とすることになります。
 そして,管轄(どこの家庭裁判所に申立てをするかという問題)は,相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所となります。相談事例では,相談者が福岡で調停をしたいのであれば,母と兄を相手方とし,母の住所地である福岡家庭裁判所に申し立てることになるでしょう。
 調停の申立てがなされ,受理されると,実際の調停が始まることになります。家庭裁判所に呼び出され,出頭した当事者が非公開で調停を行います。内容としては,担当の調停委員が当事者双方や代理人等から紛争の実情や分割案の希望等を聞きます(この事情聴取は申立人と相手方と別々に行われるのが一般的です。)。そして事情を把握したうえで,様々な助言をしながら当事者の話合いによる合意を目指します。互いの譲歩を前提として,調停委員会が調停案の提案をすることもあります。
 なお,調停期日の回数や期間に特に制限があるわけではなく,調停の成立する見込みなどを考慮し,ケースバイケースに決まります。裁判所の運用としては,遺産分割調停を1年ないし6回から10回くらいの期日によって解決を目指しているようです。

3 調停前の仮の措置

Aさんの父が死亡し,相続人はAさんと弟です。Aさんは弟との間で遺産分割調停を行っている最中です。しかし,弟が父の遺産である土地建物を独占し,勝手に処分しようとしていることが発覚しました。Aさんが弟の行為を防止するためには,どのような手段があるでしょうか。
 調停手続中の場合,調停委員会は,調停手続が終了するまでの間,調停のため必要と認める処分を命じることができるとされています。これを「調停前の仮の措置」といいます。この事例では,Aさんは弟が父の遺産を勝手に処分することを禁止するよう調停委員会に申し出,この措置の発動を促すことになるでしょう。
 もっとも,この措置は強制力を伴いません(違反した場合には,科料の制裁が与えられるに過ぎません。)。また,調停手続が終了した場合や,調停が不成立になり審判手続に移行した場合には,仮の措置も同時に効力を失ってしまいます。そのため,調停前の仮の措置はあまり行われていないというのが現状です。そこで,調停ではなく審判を申立て,審判前の保全処分を申し立てることが現実的でしょう。

4 まとめ

 今回は,遺産分割調停手続についてご説明してきました。調停や審判はご自身でも進めることができますが,より納得のいく結果を得るため,また早期解決のためには弁護士に依頼し,代理人として手続を進めてもらうことをお勧めします。(ただし,弁護士を代理人として依頼している場合であっても,依頼者本人の出頭が求められることはあります。)
 また,調停や審判を行うには時間と手間がかかるため,本来であれば協議で解決するのが最善でしょう。協議が決裂し,いざ調停となってから弁護士に相談に来られる方も見られますが,協議を始める前に弁護士から助言をもらう,又は代理人として協議に参加してもらうことで,協議での解決の近道となるでしょう。

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