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相続手続き

祖父の相続放棄をする前に父が亡くなった!祖父の分だけ相続放棄しても大丈夫?

2017.10.17

祖父の相続放棄をする前に父が亡くなった!祖父の分だけ相続放棄しても大丈夫?

<相談内容>

祖父が亡くなり,祖父の相続人である父も後を追うように亡くなったという場合,相続の承認や放棄の手続はどうなるでしょうか。父が祖父の相続につき承認や放棄もしていなければ,父の相続人である子は,父の相続人としての権利と,父が持っていた祖父の相続人としての権利の両方を持つことになり,これを「再転相続」といいます。今回は,再転相続について福岡の弁護士がご説明していきます。

1 事例

「平成29年4月,Aさんの祖父が亡くなりました。祖父には1000万円の財産がありました。祖父の相続人であるAさんの父は,祖父の相続について何の手続もしないまま,同年5月に亡くなってしまいました。また,その際,父に3000万円の借金があることが分かりました。Aさんは,父の相続は放棄し,祖父の遺産だけ相続しようと考えていますが,可能でしょうか。」
 この事例のような再転相続の場合,Aさんは父の相続を放棄するかどうか決める権利を持つとともに,父が有していた祖父の相続を放棄するかどうか決める権利も持っています。しかし,祖父の相続については,あくまでも父が有していた権利を行使するに過ぎません。したがって,先に父についての相続を放棄すると,祖父の相続について父が有していた権利も承継しないことになります。

 この事例で,Aさんは父の相続を放棄してしまうと,祖父の遺産を相続することはできません(祖父について手続をしなくても,放棄したのと同じ結果になります。)。
 なお,先に祖父の相続を承認した場合であれば,父の相続を承認することも放棄することも可能ですが,父の相続財産に祖父の財産が含まれる以上,父の相続放棄をすると結局祖父の財産も取得できないことになります。

「平成29年4月,Bさんの祖父が亡くなりました。祖父には多額の借金があり,祖父の相続人であるBさんの父は相続放棄をしようとしていましたが,手続を終えぬまま,同年5月に亡くなってしまいました。父には財産があるので,Bさんは祖父の分は相続放棄して,父の分は相続しようと考えていますが,可能でしょうか。」

 この事例の場合,Bさんが父の相続を先に承認すると,父が有していた祖父の相続について決める権利も承継するので,祖父の相続は放棄することも可能です。また,先に祖父の相続を放棄した後に,Bさんの有する父の相続について決める権利を行使し,父の相続を承認することも可能です。

2 再転相続人の熟慮期間

 通常は,相続放棄をするかどうか決める期間(熟慮期間)は,自己のために相続が開始したことを知った時から三カ月間とされています。相続が開始したことを知った時とは,被相続人の死亡を知った時,そして自分が相続人であることを知った時のことです。
 再転相続の場合,祖父の相続について,父が相続の開始を知った時を基準とすると,父の死亡後に再転相続人となった子にとって,熟慮期間があまりにも短くなってしまいます。

 そこで,再転相続の場合には,再転相続人(子)が自己のために相続が開始したことを知った時から三カ月間の熟慮期間となると規定されています。
 つまり,祖父が平成29年4月1日に死亡,父が平成29年6月1日に死亡したというケースで,子は父の死亡を死亡当日に知ったのであれば,祖父の相続についても父の相続についても,熟慮期間は平成29年9月1日までとなります。

3 代襲相続とのちがい

 再転相続と混同しやすいものに,代襲相続があります。代襲相続とは,相続人となるはずの者が相続の開始以前に死亡した場合等に,その子が代襲して相続するという制度です。
平成29年4月,Cさんの祖父が亡くなりました。祖父の子であるCさんの父は,平成20年3月に亡くなっています。父には多額の借金があったため,Cさんは平成20年4月に相続放棄の申述をし,受理されています。Cさんは今回,祖父の遺産を相続することができるでしょうか。
 再転相続の場合,父の相続放棄をした後で祖父の相続をすることはできないとご説明しました。しかし,この事例のような代襲相続では,Cさんが祖父の相続人となるため,Cさん自身の権利として,祖父の相続を放棄するかどうか決めることができます。

 したがって,Cさんは以前に父の相続を放棄していても,祖父の相続をすることができます。
 また,再転相続と代襲相続で違いが出るケースとして,配偶者が相続人となる場合があります。代襲相続は相続人となるはずだった者の直系卑属(子や孫)のみが相続人となるのに対し,再転相続は相続人となっていた者の配偶者も相続人となるため注意が必要です。

4 まとめ

 今回は,再転相続についてご説明しました。再転相続は二人分の相続なので,手続も二倍となります。期間制限の間に全ての手続を進めるのが困難な場合は,専門家に任せると良いでしょう。また,誰がどの順番で亡くなったかということは相続に大きく影響するため,戸籍を取得し裏付けを取ることが不可欠です。家族の本籍が分からない場合や遠方に本籍がある場合など,戸籍の取得に手間がかかることは多いですが,これも専門家に依頼すると全ての戸籍を取得してもらえます。

 万が一取り返しのつかないことになってしまうと大変なため,遺産の処分(これは相続の承認とみなされます。)や相続放棄をしようと考えている場合は,ご自身で手続きを進める前に一度相続関係に詳しい弁護士に相談し,相続の承認や放棄をして何か問題はないか,助言をもらうことをお勧めします。

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