遺産相続

相続放棄をするか決めるまでの間の遺産管理方法

2017.10.30
遺産相続|弁護士ニュース

相続放棄をするか決めるまでの間の遺産管理方法

遺産に不動産などがある場合,遺産を相続することが決定する前であっても,固定資産税の支払いや,建物の修繕等が必要となってきます。相続を承認するか放棄するか決める期間(「熟慮期間」といいます。)は,遺産について誰がどのような管理を行う必要があるでしょうか。今回は,遺産の管理方法について福岡の弁護士がご説明していきます。

1 相続人が管理する場合

Aさんの父が急に亡くなりました。相続人はAさんと母です。Aさんたちは父の全ての遺産を把握できておらず,相続を承認するか放棄するかはまだ決めていません。最近,父が所有していた家が老朽化して,あちこちから雨漏りしていることが分かりました。Aさんはこれ以上家が傷まないよう修理をしたいと考えていますが,母はお金がもったいないと修理を嫌がっています。相続するか決めていないAさんは家の修理をできるでしょうか。また,母が反対していても修理を進めて問題ないでしょうか。
 熟慮期間中は,相続人が相続財産を管理します。どの程度の管理レベルが要求されているかというと,民法では,「その固有財産におけるのと同一の注意をもって,相続財産を管理しなければならない。」と規定されています。つまり,家の場合であれば,通常の人が自宅を管理するのと同程度で足り,不動産管理業者等の管理レベルまでは求められていないということです。
 管理に当たるのは,以下のような保存,利用・改良行為です。

⑴保存行為(財産の現状を維持する行為)

修繕・補修
腐敗しやすい物や保存に著しい費用を要する物の廃棄や換価
仮装登記の抹消請求
相続土地の保存登記
不法占有者に対する引渡請求

⑵利用・改良行為

  動産や不動産の利用
  建物の賃貸借(ただし,賃貸借の期間は3年以内に限ります。)
  利息付きの金銭の貸与
  抵当権の抹消
 もしこれらの管理行為を超えて,処分行為に該当する行為をした場合は,相続を承認したものとみなされ,相続放棄をすることが出来なくなってしまうため,注意が必要です。
 今回の事例でAさんが行いたい雨漏りの修繕は,保存行為に当たります。したがって,熟慮期間中であっても修繕を行うことに問題はありません。
では,同じ相続人である母の賛同を得ずに,Aさん単独で修繕し得るでしょうか。
 共同相続人が複数いる場合,全員で共同して管理するのが原則です。しかし,保存行為については各相続人が単独で行うことができます。ですから,今回の事例では,Aさんは雨漏りの修繕を単独で行うことができます。ちなみに利用・改良行為は,共同相続人の過半数(相続持分の過半数)で決します。例えばAさんが家を修理した後,他人に貸したいと考えた場合,これは利用・改良行為に当たるので,母の賛同が必要となります。
 なお,遺産の管理費用は,相続財産の中から支払われますので,Aさんは雨漏りの修繕費を,父の遺産の中から支出することができます。

2 相続財産管理人の選任

Bさんの父が亡くなりました。相続人はBさんの他に,Bさんの兄弟,甥姪など併せて12人もいます。また,それぞれ遠方に住んでおり,相続財産について意見の対立も生じている状況です。何か良い遺産管理方法はないでしょうか。
 相続人が遠方に居住している場合や,共同相続人間の対立が激しい場合など,相続財産の適正な管理が難しいときには,相続人らは家庭裁判所に対し,相続財産の保存に必要な処分として相続財産管理人の選任を申し立てることができます。基本的には弁護士が相続財産管理人として家庭裁判所から選任されています。
 通常,相続財産管理人と言うと,相続人がいるか分からない時(相続人全員が相続放棄した場合も含みます。)に相続人の調査,相続財産の管理,被相続人の債権者に精算等を行う人のことを指します。
 しかし今回ご説明するのは,あくまで相続財産の保全に必要な処分として申し立てるので,この相続財産管理人は相続財産の管理のみを行う者ですから,混同しないよう注意が必要です。
 選任された相続財産管理人は,善良なる管理者の注意をもって相続財産を管理する義務があります。つまり,相続人本人よりも高いレベルの管理が要求されています。また,相続財産管理人は,保存行為の他,利用・改良行為についても単独で行うことが可能です。
相続財産管理人が相続財産を管理するのは,共同相続人が相続を承認するか放棄するか選択し,相続人が確定するまでの間に限ります。相続人が確定すると,確定した相続人自身が相続財産を管理することになります。

3 まとめ

 今回は,相続財産の管理についてご説明してきました。管理の範囲を超える行為をしてしまうと,処分行為に当たり,単純承認とみなされる場合があるので,気を付けましょう。何か行動を起こす前に,弁護士に相談し,問題がないかどうか確認することをお勧めします。
 また,相続人が地元を離れて遠方に居住していたり,複数の相続人がいて争いとなっている場合には,管理を行うのが難しいでしょう。このような時には相続財産管理人の選任を申し立てるのが得策です。

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