遺産相続

相続人でなくても,財産をもらえる場合があるって本当?

2017.10.24
遺産相続|弁護士ニュース

相続人でなくても,財産をもらえる場合があるって本当?

<相談内容>
先日,長年夫婦同然に暮らしていた男性が亡くなりました。私たちには子どもはおらず,その男性には相続人は一人もいません。私は法律上の妻でないため,相続人に当たらないことは分かっています。しかし,長年一緒に生活してきた男性の遺産なので,私も少しは受け取ることができるのではないかと思っています。何か方法はないでしょうか。

 被相続人が亡くなった後,相続人が誰もおらず,遺言もない場合,相続財産はすべて国庫に帰属することになります。しかし,被相続人の意思を推測すると,国庫に帰属させるより,相続人ではなくても内縁の妻や最後まで献身的に被相続人の世話をした者に相続財産を取得させることを望むであろうと考えられる場合があります。この場合に設けられている制度が特別縁故者に対する相続財産分与です。今回は,特別縁故者の制度についてご説明していきます。

1 特別縁故者への財産分与

 相続人の不存在が確定した場合,内縁の配偶者のように,相続人と特別の縁故があった者の申立てにより,家庭裁判所が相当と認めるときは相続財産の全部又は一部が与えられます。これを,特別縁故者に対する相続財産の分与といいます。
 これが認められるのは,法律上の相続人がいないまま被相続人が死亡した場合に限られます。したがって,相続人がいる場合には,内縁の配偶者であっても特別縁故者として申立てをすることはできません。

2 特別縁故者とは

 特別縁故者に当たるのは,以下の場合です。

⑴ 被相続人と生計を同じくしていた者

 被相続人と一緒に暮らしていた内縁の配偶者,事実上の養子,事実上の養親,継親子,子の妻などは特別縁故者として認められます。冒頭の相談事例も,内縁の妻なのでこれに当たります。

⑵ 被相続人の療養看護に努めた者

Aさんの隣の家に住むおじいさんが亡くなりました。おじいさんには相続人がいません。Aさんは,おじいさんと長年良好な関係を築いており,おじいさんが寝たきりになった10年前からは,毎日おじいさんの介護をしたり,食事を作って持って行ったりしていました。Aさんはおじいさんと同居しておらず,親戚でもありませんが,特別縁故者に当たるでしょうか。
被相続人と生計を一緒にしていなくても,被相続人の療養看護に特に力を尽くした親族,隣人,知人等は特別縁故者に当たります。また,家政婦や看護師など,報酬を受けて療養看護に努めた者であっても,その報酬以上の献身的な看護を尽くしたという事情が認められれば,特別縁故者に当たる場合もあります。
Aさんは10年もの間,おじいさんの介護に尽くしているため,特別縁故者に当たるでしょう。

⑶ その他被相続人と特別の縁故があった者

 被相続人が遺言をしたとすれば遺贈の配慮をしたであろうと思われる程度に(上記⑴⑵に準ずる程度に),被相続人との間に具体的・現実的な精神的・物質的交渉があった者も,特別縁故者に当たります。
 なお,特別縁故者は法人でも構いません。例えば公益法人,社会福祉法人,養老院,地方自治体,学校法人,宗教法人などです。家庭裁判所が認めた例として,被相続人が経営者として自己の私財を投じてその財政的基盤の確立に努め,指導理念や行事などにも関与してその発展に情熱を燃やしていた学校法人などがあります。

3 財産分与の具体的手続

 特別縁故者に対する相続財産分与は,「相続人不存在」の場合の手続の中で行われます。特別縁故者は,家庭裁判所における相続人捜索の公告の期限が満了しても相続人が現れない(相続人の不存在が確定)場合に,公告期間満了後3ヶ月以内に,被相続人との間の特別の縁故を具体的に明らかにした申立書を家庭裁判所に提出して,相続財産分与の請求をします。
 そして,家庭裁判所は相続財産管理人の意見を聞き,申立人と被相続人との具体的関係,その期間,具体的状況,申立人の年齢・職業,相続財産の内容や状況等を判断した上で分与をするか否か,分与の額を決定することになります。特別縁故者への分与の対象となる相続財産に限定はないので,不動産,現金,預貯金,動産など様々な財産が対象になり得ます。

4 まとめ

 今回は,特別縁故者の財産分与についてご説明しました。
 特別縁故者として相続財産の処分の申立てを行う場合,特別縁故関係となる事情を具体的に記載した申立書,関係人の戸籍謄本等の添付資料,特別縁故関係を証明する資料などを合わせて提出しなければなりません。資料の収集・作成に不備がないよう,ご自身が特別縁故者に当たると思われる場合は,まず弁護士に相談することをお勧めします。
 また,特別縁故者として財産分与を受けた際には,相続税法上,遺贈を受けた場合に準じて税金を支払うことになります。相続税申告まで担当している(税理士事務所を併設している,税理士と連携している)法律事務所を選ぶと,その後の手続がスムーズでしょう。

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