遺産相続

相続人がもらった生前贈与でなければ,特別受益には当たらないの?

2017.10.16
遺産相続|弁護士ニュース

相続人がもらった生前贈与でなければ,特別受益には当たらないの?

<相談内容>
 私の父が亡くなり,相続人は私と弟です。生前,父は私の夫に「ここに夫婦二人で住みなさい。」と言って父が所有していた土地(3000万円)を贈与してくれ,私たち夫婦はその土地に家を建てて住んでいます。父の遺産を分ける話になって,弟が「姉さんのところは土地をもらっているから,その分今回もらう遺産が少なくなるはずだ。」と言っています。土地の名義は私ではなく夫なのですが,それでも私のもらう遺産は減ってしまうのでしょうか?また,父の遺産は1億円ありますが,今回私はいくら取得するのでしょうか?

 共同相続人の不平等を調整するため,相続分の前渡しと評価できる生前贈与については,「特別受益」として相続分を減額する制度があります。今回は,特別受益者の範囲と,特別受益が認められたときの算定方法について福岡の弁護士がご説明していきます。

1 特別受益者の範囲

 誰が受けた利益が特別受益とされるか,特別受益者の範囲についてご説明します。相続人が特別受益者であることは当然ですが,以下の場合はどうでしょうか。

⑴ 相続人の配偶者,子に対する贈与

上記の相談事例は,相続人の配偶者に対する贈与に当たります。
 相続人の配偶者や子が被相続人から贈与を受けている場合,原則として相続人の特別受益にはならないと考えられています。しかし,配偶者や子に対する贈与が,実質的に相続人本人に対する贈与と言えるような特別の事情がある場合は,その相続人の特別受益に当たります。実質的に相続人本人に対する贈与に当たるかどうかは,贈与の経緯,被相続人の贈与の動機・趣旨,贈与された物の価値,性質,これにより相続人が受けた利益などから判断します。
 上記の相談事例は,父の意図からすれば実際は相続人に対する贈与であるのに,名義のみ配偶者としているようなケースと考えられるので,相続人の特別受益に当たるでしょう。

⑵ 代襲相続

Aさんの祖父が亡くなりました。祖父には2人の息子がおり,Aさんの父とその弟(Aさんの叔父)です。しかしAさんの父は5年前に亡くなっているので,Aさんと叔父が相続人となりました。Aさんは祖父から,10年前に100万円,3年前に200万円のお金をもらっています。叔父は,Aさんがお金をもらったことが特別受益に当たると言っていますが,どうでしょうか。

 相続人となるはずの者が相続開始以前に死亡している等の理由で,その子が相続人となる場合があり,これを「代襲相続」といいます。Aさんのような代襲相続人が受けた利益が特別受益に当たるかどうかは,代襲原因(相続人となるはずの者の死亡)の発生時期の前後に分けて考えます。
 代襲原因発生前に代襲相続人が贈与を受けていた場合,その時点では相続人でないため,相続分の前渡しとは評価できません。そこで,この時期の贈与は特別受益には当たらないとされています。
 他方,代襲原因発生後に代襲相続人が贈与を受けた場合,相続人への贈与となり,特別受益に当たります。
 この事例では,Aさんが10年前に贈与された100万円は,特別受益には当たりません。3年前に贈与された200万円については,この時点ではAさんは祖父の相続人なので,特別受益に当たります。

⑶ 養子縁組

Bさんは養子です。養父が亡くなり,相続人はBさんと,養父の実子です。Bさんは養子縁組をする前に,養父から不動産の贈与を受けました。実子は,Bさんが受けた不動産の贈与が特別受益に当たると言っていますが,どうでしょうか。
 贈与を受けた後に養子縁組を行い,相続人となる身分を取得した場合,縁組前の贈与は特別受益となるでしょうか。これについて議論はありますが,共同相続人間の公平の観点から,推定相続人となる前(養子縁組前)に受けた贈与も,当初から推定相続人の地位を取得していた場合と同じように特別受益になると考えられています。
 この事例でも,Bさんは養子縁組前に贈与を受けていますが,特別受益に当たるでしょう。

2 特別受益の算定方法

 では,特別受益が認められた場合,相続分はどのように算定するのでしょうか。
Cさんの父が亡くなり,相続人は母,Cさん,弟,妹です。Cさんは父の生前に400万円の贈与,弟は200万円の遺贈(遺贈とは,遺言による贈与です。)を受けており,それぞれ特別受益に当たります。父の遺産は5000万円ありますが,母と子3人は,いくら取得するでしょうか。
 特別受益があるときは,①被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に,特別受益者が得た生前贈与の価額(不動産の場合,相続開始時の評価額)を加算したものを相続財産とみなし(これを「みなし相続財産」といいます。),②各相続人の法定相続分を掛け合わせて「一応の相続分」を算出し,③一応の相続分から特別受益者が受けた生前贈与・遺贈の価額を控除して最終的な相続分を算出します。

 今回の事例を計算してみましょう。

①みなし相続財産

5000万円+400万円(Cさんの特別受益)=5400万円
 なお,Cさんは遺贈も受けていますが,遺贈の額は既に相続財産に含まれているので,加算しません。

②一応の相続分

母    5400万円×2分の1=2700万円
Cさん  5400万円×6分の1= 900万円
弟    5400万円×6分の1= 900万円
妹    5400万円×6分の1= 900万円

③具体的相続分

母                2700万円
Cさん  900万円-400万円= 500万円
弟    900万円-200万円= 700万円
妹                 900万円

3 まとめ

 今回は,特別受益者となる範囲と,特別受益の算定方法についてご説明しました。
特別受益の主張が出てくる場合,協議や調停では終わらず,審判まで長引くことがほとんどです。その場合,協議での主張が審判でも証拠となるので,協議段階から法律論として一貫した主張をしなければなりません。ご自身で協議に臨んだ結果,不利な主張をしてしまっているというケースも多く見られます。そのため,ご自身で交渉を進めるのではなく,協議を始める段階から,相続について審判の経験が多い弁護士に依頼することを強くお勧めします。

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