遺産相続

死因贈与ってなに?

2017.10.06
遺産相続|弁護士ニュース

死因贈与ってなに?

<相談内容>
老齢の私は,二世帯は十分住むことができる土地付きの建物を所有し,老妻と暮らしています。私たち夫婦には子どもがいないため,同居して私たちの世話をする約束で,甥とこの土地付き建物の死因贈与契約を結びました。しかし,その後甥は再三要求しても同居してくれず,私たちの世話をする気がないようです。甥がそんな態度なら,死因贈与契約を取り消したいのですが,可能でしょうか。

 死因贈与契約は,贈与者の死亡によって効力が発生する契約です。人の死によって効力が発生する点で遺贈と似ていますが,これらは別物です。今回は,死因贈与契約について福岡の弁護士がご説明していきます。

1 死因贈与契約とは

 死因贈与契約も遺贈も,死亡によって自己の財産が相手に移転します。しかし,遺贈は遺言による単独行為であり,受遺者の承諾などがいらないのに対し,死因贈与契約は「契約」として,贈与者と受贈者が合意しなければ成立しないところが大きく異なります。
 また,遺贈は遺言によって行うため,遺言の要式を充たすことが不可欠です。しかし死因贈与は,たとえ口約束であっても契約が成立します。ただし,後々トラブルにならないよう契約書を作成するのが通常です。その場合でも,自筆証書遺言のように手書きである必要はなく,契約の全文を印刷したものに署名又は記名押印すれば十分です。

2 死因贈与契約の実用性

 死因贈与契約は,冒頭の相談のように,贈与者が生前の受贈者の一定の義務と関連付けて締結されることが多くみられます。この事例では,相談者夫婦と同居して世話をすることが受贈者である甥の義務となっています。この義務のことを「負担」といい,このような契約のことを「負担付死因贈与契約」といいます。遺贈では生前の受贈者の負担はないのに対し,負担付死因贈与は生前の負担を受贈者に負わせられるところに実用性があるといえるでしょう。

3 負担付死因贈与契約の負担不履行

 では,冒頭の相談事例のように,老夫婦の世話をするという負担が不履行の場合,この負担付死因贈与契約を取り消すことができるでしょうか。

⑴ 負担のない死因贈与契約の場合

 まず,単純な死因贈与の場合は,贈与者は,いつでも自由にそれを取り消す(撤回する)ことができます。
 取消しの方法としては,後日証拠となるように,内容証明郵便を用いるのがお勧めです。また,遺言書に「2017年8月1日に甥Aと契約した死因贈与契約を取り消す」旨記載しても撤回することができます。他にも,相談者が贈与の目的物である土地付き建物を第三者に売却するなど,死因贈与契約の目的に抵触した行為を行った場合にも,死因贈与契約は撤回したものとみなされます。

⑵ 負担付死因贈与契約の場合

 負担付死因贈与でも,負担が履行されなかったときには,負担付遺贈の取消しの規定(民法1027条)を準用して撤回することが可能です。負担のない単純な死因贈与と同様の扱いになります。
 今回の事例の場合,甥は夫婦と同居し世話をするという負担を履行していないため,相談者は負担付死因贈与を撤回することができます。
 ただし,もし負担が全部または一部履行されたときは,遺贈の規定は準用されず,贈与者は原則として撤回することはできません。撤回することがやむを得ないと認められる特段の事情があれば,遺贈の規定が準用され撤回することができる場合があります。

4 死因贈与と仮登記

遺言によって父の遺産のほとんどを相続した兄が,その後兄の所有しているほかの土地を私に贈与してくれるらしいのですが,贈与税が莫大なので実行できません。兄は,「死因贈与という方法があって,それなら相続税でいいらしいよ。土地は自由に使っていていいから。」と言っています。しかし,兄は事業をしていて,いつ気が変わってその土地を売却してしまうか不安です。そこで,仮登記をしておきたいと思います。仮登記をすれば,死因贈与契約は取り消されないでしょうか?
 前提知識として,相続税は,贈与税よりも税率が低く,取得者にとっては相続税で処理される方が有利です。そして,死因贈与による財産の取得は,贈与税ではなく相続税が課税されるため,税務的には,生前贈与よりも死因贈与にした方が有利です。しかし死因贈与の場合,贈与者は自由に撤回することができてしまうため,受贈者としては,撤回を防ぐ措置を講じたいところです。そこで,仮登記をすることで死因贈与の撤回を防ぐことができるでしょうか。

 不動産について,遺贈では仮登記が認められていませんが,死因贈与は不確定期限付きの権利という理由で仮登記が認められています。しかし,仮登記をした場合でも,その仮登記は死因贈与の撤回を防ぐ法的効力は持っていません。
 ただし,仮登記はまったく無意味というわけではありません。仮登記には順位保全の効力があり,例えば贈与者(兄)が死因贈与の目的の土地の売却や抵当権を設定して金融を得ようとしても,金融機関が融資を断るなどの事態が考えられます。贈与者は,仮登記があることで事実上抵触行為をしにくくなるのです。

5 まとめ

 今回は,死因贈与についてご説明しました。死因贈与は遺贈と異なり契約なので,両者の合意が必要です。契約書を作成する際には,弁護士に依頼すると良いでしょう。また,負担付死因贈与契約を結んだ後に,受贈者が負担を履行してくれないという場合や,負担を履行したのに贈与者が契約を撤回しようとしているという場合など,死因贈与に関してトラブルが発生した際にも,弁護士に相談することをお勧めします。
 また,相続税の支払いや仮登記などは,それぞれ税理士,司法書士に頼むこともできますが,弁護士事務所の中には,それらを全て行ってくれるところがあります。手続がスムーズに運ぶので,事務所を探す際の参考にしてみてください。

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