遺産相続

未成年の子どもが相続人となる場合の手続

2017.11.28
遺産相続|弁護士ニュース

未成年の子どもが相続人となる場合の手続

<相談内容>
 先日夫が死亡しました。相続人は妻の私と高校生と中学生になる子どもの3人です。このように相続人に未成年者がいる場合,遺産分割の協議はどのようにするのでしょうか。子どもたちは「全部お母さんに任せるよ。」と言ってくれていますが,私が勝手に進めて良いのでしょうか。

 共同相続人の中に未成年者がいる場合,未成年者は財産管理について適切な判断ができるだけの年齢ではないとして,自らが遺産分割協議を行い,遺産分割協議書に署名押印することができません。今回は,未成年者が相続人となる場合にどのような手続が必要か,ご説明していきます。

1 共同相続人中に未成年者がいる場合の遺産分割

 未成年者は,法定代理人(親権者。離婚していなければ,父母のことです。)の同意がなければ,有効に法律行為を行うことができません。遺産分割も法律行為に当たるため,未成年者が相続人となるケースでは,法定代理人が代理人として,または同意権者として関与しながら行わなければなりません。
 しかし,上記の相談事例のように,遺産分割においては,父や母が未成年者と共に共同相続人になっているケースが多く見られます。このときには,親権を行う父母と,子の利益が相反することになります。(利益が相反するかどうかは行為の客観的側面から決まるため,親権者の意図がどうであれ,親権者と子供の双方が共同相続人となる以上,利益は相反すると判断されます。)そこで,親権者は,自身で子供の法定代理人として署名押印することができないことになりますから,子どものために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。
 また,今回の事例のように,共同相続人となる未成年の子が複数いる場合,別々の者が代理人になる必要があるため,それぞれについて特別代理人を選任することになります。この手続は,最終的に署名押印予定の遺産分割協議書案等を添付して申立を行うため,実質的には遺産分割協議が整うだけの事前準備を行ってから申立を行うことになります。したがって,相当に専門知識が必要な段取りとなりますので,必ず専門家の弁護士に申立を依頼するようにしましょう。

Aさんの亡妻の父が亡くなりました。相続人は,亡妻とAさんの間の子ども2人で(亡妻の代襲相続です。),2人とも未成年です。Aさんは,遺産分割にあたりどのような手続をすれば良いでしょうか。
 この場合は,Aさんは相続人でないため,子どもたちと利益相反関係にはありません。したがって,Aさんは法定代理人として,子どもの遺産分割協議に参加することができます。しかし,子ども同士は共同相続人として利益相反関係にあるため,Aさんが2人共を代理することはできません。どちらか1人の代理人になり,もう1人の子のために特別代理人の選任を請求することになります。

2 特別代理人の選任をしないでなされた遺産分割の効力

 もし,特別代理人を選任しないで遺産分割協議,調停,審判を行ってしまった場合,それは無効となります。仮に未成年者が予め代理行為を許諾・承認していた場合にも同様です。
冒頭の相談事例でも,子どもたちが「お母さんに任せる」と言っているからと,母が勝手に遺産分割をした場合には無効になります。
ただし,子どもたちが成人に達し,有効に法律行為を行えるようになってから母が単独で行った遺産分割を認めれば,有効となります。

3 相続放棄

Bさんの夫が亡くなり,相続人はBさんと未成年の子1人です。夫には多額の借金があったため,Bさんは相続放棄をしようと考えています。Bさんが子どもを代理し,子どもの相続放棄手続を行うことは可能でしょうか。
 未成年者は相続放棄も自ら行うことができないため,通常は法定代理人である父母が代理して行います。親と未成年の子が共同相続人となっていて,子のみを相続放棄しようとする場合,利益が相反し(子が相続放棄すると,その分親の相続分が増えるという客観的状況にあるため,いくら借金の方が多くても利益が相反するとみなされます。),親が代理人となって子の相続放棄をすることはできません。遺産分割と同様,子のために特別代理人を選任する必要があります。
 しかし,この事例のように親も子も相続放棄するという場合は,利益が相反せず,親が子の代理人として相続放棄をすることが可能です。したがって,Bさんは,自らが相続放棄をした後,又は自らと同時に,子どもの法定代理人として相続放棄をすることができます。

4 まとめ

 今回は,共同相続人間に未成年者がいるときの遺産分割についてご説明しました。未成年者とその親が共同相続人であるときは,必ず特別代理人を選任しなければなりません。これは,どんなに子どもが幼くても同様です。「この子はまだ小さくて分からないから。」と,親権者が遺産分割を進めることはできないので,気を付けてください。
 特別代理人になるために特に資格等は必要ありません。親戚の方が選任されるケースも多いですが,手続をスムーズに進めるには弁護士など専門家に依頼することをお勧めします。
最も注意が必要なのは,「全部お母さんに任せるよ。」と子供が言っていたとしても,全てを母親が相続することはできないという点です。あくまで,特別代理人を就けて遺産分割を行う以上,子供にも法定相続分相当の遺産を分与しなくては,家庭裁判所が特別代理人選任の審判を行ってくれませんので,その点に注意しましょう。
共同相続人の中に未成年者がいるときは,早めに弁護士に相談しましょう。

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