遺産相続

弁護士が教える自筆証書遺言の作り方

2017.11.01
遺産相続|弁護士ニュース

弁護士が教える自筆証書遺言の作り方

<相談内容>
私が死んだ後で妻や子どもたちが私の財産を巡って争わないよう,確実に私の意思がわかる形での遺言を残そうと考えています。それには,私が言い残したいことをDVDに撮っておくのが一番良いと思っているのですが,DVDによる遺言も有効でしょうか。

 遺言の作成にあたっては,遺言者の真意を確保し,遺言書の偽造・変造を防止するために厳格な要件が定められており,この要件を欠く場合には無効となります。今回は,最も手軽な方法である,自筆証書遺言の作成方法について福岡の弁護士がご説明していきます。

1 自筆証書遺言とは

 自筆証書遺言とは,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押すことにより作成するものです。簡単に作成でき,証人が不要なため遺言の内容・存在を秘密にすることができるというメリットがあります。その反面,紛失,隠匿,偽造・変造の恐れがあり,また書き方や内容に不備があるとその効力が問題になるというデメリットもあります。

2 要件

⑴ 自書

 自筆証書遺言は,全て自書しなければなりません。自書でないものは,遺言者本人が作成したか否かの判断が困難なので,パソコンで打ったものや,誰かに代筆してもらったものは無効となります。
 冒頭の相談事例では,DVD撮影により遺言を残そうとしています。しかし,映像が残っていても,遺言の内容が口頭で述べられただけでは書面になっていないので,自筆証書遺言としてはもちろん,他の形式によっても効力を有する遺言としては認められません。これは,ICレコーダー等で録音した場合も同じです。
 ただし,遺言の効力が無くても,亡くなった人の言い残した内容を,相続人全員が被相続人の最終意思として尊重し,その意思通りに遺産分割をすることは何ら問題ありません。

⑵ 日付

 自筆証書遺言には,遺言を作成した日付を記載しなければなりません。もし遺言書を複数作成していた場合には,後の遺言が最終意思となります。したがって,複数の遺言の内容に異なる部分があれば,前の遺言は後の遺言によってその部分が撤回されることになります。
 また,遺言がなされた日付で遺言者の意思能力の判断がなされることがあります。例えば,被相続人の死後,相続人が「この遺言作成当時,被相続人は認知症で遺言の内容は分からなかったはずだ。この遺言は無効である。」という主張をすることがよくあります。
 日付は「平成29年7月1日」のように特定の年月日を記載しても,「還暦の日に」「満70歳の誕生日に」等と記載しても,具体的に日付が確定できる場合には有効です。ただし,「平成29年7月吉日」のように,特定の日付を示さない場合には遺言が無効となってしまうため,注意が必要です。

⑶ 押印

 遺言には,押印することも必要です。使用する印鑑は,実印,認印,拇印でも有効とされていますが,後日の紛争を避けるため実印を使用することをお勧めします。
 通常,署名をした名下に押印をします。署名は,遺言者が誰であるかを明確にするために行うので,必ずしも戸籍上の本名である必要はありません。従来から使用している通称,雅号,芸名などでも有効とされます。
 また,遺言書が複数枚にわたるときには,一通の遺言書であることをはっきりさせる意味で,契印をすることが望ましいでしょう。

3 遺言の修正

 遺言書に修正したい箇所がある場合には,偽造・変造を防止するために厳格な要件が定められており,「遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押さなければ,その効力を生じない。」と規定されています。不備があって無効になってしまわないよう,できるだけ修正は避け,全文を書き直すことをお勧めします。
 完成した遺言は,封筒に入れて封印をしておきましょう。

4 まとめ

 今回は,自筆証書遺言の作成方法についてご説明しました。せっかく遺言書を作成しても,万が一不備があれば無効となってしまうかもしれません。自筆証書遺言を作成する場合には,弁護士に相談することを強くお勧めします。
また,自筆証書遺言は遺言者だけで作成するため,厳重に保管しすぎると,死後発見されないという恐れもあります。また,発見者にとって不利な内容の遺言であった場合,遺言を破棄・隠匿されることもあり得ます。自宅内の金庫や銀行の貸金庫に保管されることも多いようですが,重要な文書なので,安全かつ,死後すぐに発見されやすい状況で保管すべきでしょう。できれば,遺言者の死亡をすぐ知り得る信頼できる第三者に預けることをお勧めします。遺言書の保管を第三者に依頼した場合には,死後ただちに家庭裁判所に提出して検認手続を受けることや,封印をした場合には,家庭裁判所で相続人の立会いのもとに開封することまで頼むとスムーズです。また,弁護士事務所が保管をしてくれる場合もありますので,遺言を作成する際に相談しても良いでしょう。

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