遺産相続

寄与分はどうやって算定するの?

2017.09.14
遺産相続|弁護士ニュース

寄与分はどうやって算定するの?

<相談内容>
 私の父は小売業を営んでいました。私も高校卒業後,父の仕事を手伝うようになり,20年間家業に従事しました。その間,父から度々お小遣いをもらっていましたが,給料はもらっていません。ただ,父の所有する実家に住んで,生活費は父が出してくれていました。先日父が亡くなり,相続人は私と弟です。相続について調べていると,寄与分という制度があることを知りました。私が家業に従事していたことも寄与と認められると思いますが,具体的にどのくらいの金額がもらえるでしょうか。また,寄与分を主張するには何か特別な手続が必要ですか?

 今回は,寄与分の算定方法と,寄与分を定める手続についてご説明していきます。

1 寄与分の算定

⑴ 寄与分の算定方法

 上記の事例のように,被相続人の事業に関して労務の提供を行う等,被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をした相続人は,法定相続分を超える遺産を取得できる場合があり,これを寄与分といいます。この事例では,無報酬で30年間にわたり家業に従事しているので,寄与分が認められるでしょう。
 では,具体的にどのくらいの金額が寄与分とされるでしょうか。
 家業に従事した場合の計算式は,以下の式で算定するのが一般的です。
 (寄与者が受けるべき年間給与額)×(1-生活費控除割合)×寄与年数
 「寄与者が受けるべき年間給与額」は,賃金センサス(賃金について統計をまとめたものです。)等により,家業と同種同規模の事業に従事する寄与者と同年齢層の年間給与額を基準とします。また,生活費控除というのは,寄与者が住居生活費等を負担していなかった場合,その生活費は家業の収入から出ているとして,その分を控除するものです。この事例でも,実家に住み生活費を父に出してもらっていたので,一定の割合で控除されます。
 なお,遺産のうちどの程度が寄与分と認められるか,上限の定めはありませんが,寄与分は共同相続人間の相続分の調整のための制度なので,実務では,遺産全体の2分の1が一応の限度とされており,一般的には5パーセントから3分の1程度までの間で認められることが多いようです。

⑵ 具体的相続分の算定方法

Aさんの父が,不動産(評価額3000万円)と,500万円の借金を残して亡くなりました。相続人はAさん,母,弟です。相続人間の協議の結果,Aさんには600万円の寄与分が認められることになりました。Aさん,母,弟はそれぞれいくら相続するでしょうか。
 寄与分があるときは,①被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から寄与分を控除したものを相続財産とみなし(これを「みなし相続財産」といいます。),②各相続人の法定相続分を掛け合わせて「一応の相続分」を算出し,③寄与をした相続人については,一応の相続分から寄与分を加えた額が最終的な相続分になります。

今回の事例を計算してみましょう。
①みなし相続財産
3000万円-600万円(Aさんの寄与分)=2400万円
(Aさんの父には500万円の借金がありましたが,借金のようなマイナスの財産はここでは計算しません。)
②一応の相続分
母    2400万円×2分の1=1200万円
Aさん  2400万円×4分の1= 600万円
弟    2400万円×4分の1= 600万円
③具体的相続分
母                1200万円
Aさん  600万円+600万円=1200万円
弟                 600万円

したがって,Aさんは1200万円を相続します。なお,500万円の借金については,法定相続分に従い,母が250万円,Aさんと弟が125万円ずつ相続することになります。

2 寄与分を定める手続

 では,実際に寄与分を主張するとき,どのような手続を行うことになるでしょう。

⑴ 協議

まずは,共同相続人間の協議で定めることが原則となっています。協議の方法としては,全員の同意があれば良いので,全員が揃った場で承認を得る方法でも,持ち回りで承認を得る方法でも構いません。

⑵ 調停

共同相続人間で合意できないときは,家庭裁判所に寄与分を定める調停の申立てを行うこともできます。遺産分割調停とは別に,寄与分を定める調停を申し立てすることも可能ですが,実際は遺産分割調停の中で事実上寄与分の主張が行われることが多いようです。

⑶ 審判

調停ではなく,家庭裁判所に寄与分を定める審判の申立てをすることもできます。ただし,寄与分は遺産分割の前提となるものなので,遺産分割の審判を申し立てている必要があります(もし遺産分割審判の申立てをしていないと,寄与分の審判申立ては却下されてしまいます。)。この点は調停の場合と異なるので注意が必要です。

3 まとめ

 今回は,寄与分の算定方法と手続についてご説明してきました。寄与分の算定は個別事情によるので,実際どの程度の寄与分が認められるかという判断をご自身で行うのは非常に困難です。相手方との交渉を図る前に,相続案件について経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。
 また,寄与分を主張するということは,相対的に相手方の相続分を減らすことになりますから,話し合いで相手方の合意を得るのは難しく,協議や調停で解決するケースはあまりありません。ご自身で協議を進められる場合,審判の際に不利になるやり取りを行ってしまうことがよくありますので,相手方との協議段階から弁護士を就け,いざ審判となったときにスムーズに寄与分が認められるようにすることが重要です。

 

困ったときに頼りたい弁護士ニュース